日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
大腸癌を合併した全内臓逆位症の1例
和田 義人林田 啓介枝国 信三
著者情報
キーワード: 全内臓逆位症, 大腸癌
ジャーナル フリー

1998 年 59 巻 9 号 p. 2344-2347

詳細
抄録

大腸癌を合併した全内臓逆位症の稀な1例を経験した.症例は73歳,男性.全身衰弱,著明な貧血を主訴に入院された.腹部超音波検査,胸部X線撮影で全内臓逆位症を,また注腸,大腸内視鏡で下行結腸癌と診断し,腹部血管造影では,下腸間膜動脈末梢枝に腫瘍濃染像を認めた.その後,保存的療法にて全身状態が改善したため手術を施行した.術中所見では,内臓は鏡面像を呈し,下行結腸から横行結腸へ浸潤する腫瘤を認めたため右半結腸切除術を施行した.
内臓逆位症は比較的稀な先天性奇形で,それ自体に病的意義はないが,手術が必要な場合は手術操作に影響を及ぼすことも考えられる.しかし,術前に病変の局在部位,臓器の位置関係や血管の走向を十分確認すれば,手術は安全にかつ,速やかに施行できると考えられた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top