各種画像で明瞭に描出されたにもかかわらず,術中超音波検査,切除標本で肝腫瘤を認識できなかった症例を経験した.
症例は38歳男性.腹部超音波検査,CT検査で偶然肝S6に径1.5cmの肝腫瘤が発見された.周囲肝は脂肪肝で,腫瘤は超音波では高輝度,単純CTでは低吸収域, MRIT1像では高信号,T2像では等信号であった. Angio-CTで腫瘤内の門脈血流は周囲肝と同等で,動脈血流は低下していた.高分化型肝細胞癌の術前診断で,手術を施行した.術中超音波検査,切除標本割面像で腫瘤像は認識できなかった.病理組織学的には30~50%の脂肪滴を認める中等度脂肪肝で,腫瘤像を示唆する所見は得られなかった.