日本臨床外科学会雑誌
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脾内へ伸展し脾嚢胞をも合併した膵貯留性嚢胞の1例
松本 英男平井 隆二植村 忠宏山野 寿久村上 正和太田 徹哉土井原 博義清水 信義
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1998 年 59 巻 9 号 p. 2376-2381

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抄録

膵貯留性嚢胞が脾に伸展し仮性嚢胞を形成,さらに脾嚢胞を合併し,嚢胞性膵腫瘍との鑑別を要した症例を経験したので報告する.
症例は47歳の男性で,慢性膵炎の経過中に嚢胞性膵腫瘍を疑われ当科紹介となった.腹部US, CT, MRIで膵尾部に13×12cmの壁は一部肥厚し,内部に隔壁様の充実性部分を認める嚢胞であった. ERPでは主膵管と嚢胞との交通は認めなかった.嚢胞性腫瘍を否定できず,膵体尾部・脾切除術を施行した.
組織学的には,膵と隣接した嚢胞壁に膵管上皮が残存しており貯留嚢胞と診断された.しかし,脾側の嚢胞壁は脾実質で構成され,被膜は認めなかった.膵貯留嚢胞が脾内へ仮性嚢胞を形成,さらに圧排による血行不全のため脾梗塞をおこし,この後に脾嚢胞が形成されたと考えられた.

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