日本臨床外科学会雑誌
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肝細胞癌切除例における術中prostaglandin E1 (PGE1) 投与の肝保護効果
丸橋 繁左近 賢人梅下 浩司山田 晃正武田 裕谷口 一則檜垣 直純藤原 義之蓮池 康則金井 俊雄後藤 満一門田 守人
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1999 年 60 巻 2 号 p. 329-334

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抄録
prostaglandin E1 (PGE1) の肝細胞保護効果については種々の報告があるが,その臨床的効果については不明な点が多い.
今回, 1991年から4年間の原発性肝癌切除例 (77例)を, PGE1の術中投与を行った群 (30例)と,投与しなかった群 (47例)に分け, PGE1投与の効果をretrospectiveに検討した.両群間の背景因子,総ビリルビン, glutamyl pyruvic transaminase (GPT), hepaplastin test (HPT), cholinesterase (ChE) を術前および術後1, 3, 7, 14日目において比較した.肝機能の経時的変化を検討するため術前値に対する比も同時に比較した.両群間において出血量や手術時間等の手術因子に差を認めなかった.
総ビリルビン, GPTの上昇に対するPGE1投与の効果は認められなかったが, HPT, ChEの術前値比はPGE1投与によりその低下が有意に抑えられた.
術中PGE1投与の効果は,手術侵襲,虚血再灌流障害に対する肝細胞保護作用よりもむしろ,肝における蛋白合成能促進作用が主であった.
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