日本臨床外科学会雑誌
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60 巻, 2 号
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  • 右と左の大腸癌は異なった遺伝的範疇に属するか
    松原 長秀, 磯崎 博司, 田中 紀章
    1999 年60 巻2 号 p. 293-299
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左右大腸は発生学上異なった胚由来であるが,これより発生する大腸癌も,臨床病理学的生物学的に左側右側で異なっていると考えられる.近年の分子腫瘍学の発達により大腸癌発生の分子機構が明らかにされ, 2つの大腸発癌経路が明らかにされた.また,左右大腸で明らかに発生頻度の異なる2つの代表的な遺伝性大腸癌も,同様の2つの経路を経て発癌に至ることが解ってきた.ここでは,左右の異なった遺伝的,環境的背景を詳細に分析し,大腸発癌における意味を考察した.その結果,左右大腸癌が異なった発癌過程をとるのは,環境因子の暴露に対して,異なった遺伝的背景に基づく発癌経路を選択されている可能性が推察された.今後は,左右大腸癌における遺伝的,環境的背景と共に,機能的遺伝子変異に基づいた個々の腫瘍の理解を進め,これに基づいた診断治療方針を決定する必要が出てくる可能性がある.
  • 国崎 主税, 山岡 博之, 高橋 正純, 野村 直人, 穂坂 則臣, 藤井 義郎, 森脇 義弘, 嶋田 紘
    1999 年60 巻2 号 p. 300-305
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者(80歳以上)の胃癌術後の呼吸器合併症の危険因子を明らかにするため, D1またはD2の胃切除術を行った21例を対象とし,呼吸器合併症の有無(8:13)で2群に分類し,単因子解析およびステップワイズロジスティック解析で検討した.単因子解析による危険因子は%VC, VC/m2, FEV1.0/m2 (p<0.05) で,栄養指標であるNRIおよびperformance statusが傾向差を認めた.ステップワイズロジスティック解析ではY=1.184+0.186×curability-0.645×VC/m2+0.216×PSで表される判別式が得られ, cut off値を0.47とするとaccuracy 90.5%, sensitivity 90.5%, specificity 92.3%であった.術後呼吸器合併症予防のためには術前からのVCの改善を目的とした呼吸訓練とPS,進行度を勘案した合理的な術式の選択が必要である.
  • 綛野 進
    1999 年60 巻2 号 p. 306-315
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌切除再建例における残存食道への消化液逆流と逆流性食道炎との関係について食道内圧およびpH測定を用いて検討した.まず,胸部食道癌に対し食道切除・後縦隔胃管再建の施行された10例の術前および術1カ月後の食道機能を比較したところ,術後では頸部食道蠕動圧は術前に比べて有意に低下していた.次に,術後4カ月以上経過した23例を対象にpHおよび内圧の経時的測定を行った.この結果, 18例で胃酸分泌を認め,このうちの14例に頸部食道への酸逆流があり,逆流時間は夜間で長かった.さらに食道炎を認めた5例では有意に酸逆流時間は長く, 5分間以上の酸逆流回数も多く,かつ酸逆流最長時間も延長した.また挙上胃には嚥下に誘発される蠕動波は認められなかった.以上より再建胃にも酸分泌のある症例が多く,後縦隔経路に挙上すると体位などによって酸逆流が生じ,頸部食道クリアランスの低下もあいまって逆流愁訴や食道炎が生じると考えられた.
  • 臨床病理学的因子,予後に関して
    児山 新, 寺島 信也, 星野 豊, 菅野 智之, 佐藤 直, 井上 仁, 寺西 寧
    1999 年60 巻2 号 p. 316-319
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Pyrimidinenucle osidephosphorylase (PyNPase) は, Pyrimidine nucleoside生合成系の酵素で,ヒトでは主にthymidine phosphorylase (ThdPase) として存在する. ThdPaseは,血管新生作用を有する血小板由来血管内皮増殖因子と同一とされ,腫瘍の転移,予後と関連する点で注目されている.今回,われわれは原発胃癌85例を対象に,胃癌組織,正常粘膜組織においてPyNPase活性値を定量し,臨床病理学的因子と予後に関して検討した.
    PyNPase活性値は,胃癌組織において正常粘膜組織より有意に高値を示した.癌部のPyNPase活性値は,臨床病理学的因子において,肝転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲と関連し,また,予後不良因子であった.
    以上より, PyNPase活性の高い胃癌症例は術後慎重なフォローアップと,強力な補助化学療法が必要と思われた.
  • 須藤 隆一郎, 黒田 豊, 本郷 碩, 中安 清, 倉田 悟, 永島 浩, 縄田 純彦, 尾中 祥子, 田村 浩章, 原田 昌和, 北島 正 ...
    1999 年60 巻2 号 p. 320-323
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1969年から1997年6月までに当科にて手術を施行した肝損傷42症例のうち術後死亡した9症例を中心に損傷型,手術方法,死因などを検討した.死亡例の日本外傷学会肝損傷分類は, II型4例, IIIa型1例, IIIb型4例であった. IIIb型以外の症例では他臓器合併損傷が直接死因であったのに対し, IIIb型手術症例9例のうち死亡した4症例の死因は, 3例が肝臓の出血, 1例がMRSA敗血症によるものであった. IIIb型の死亡例は,いずれも肝切除術を施行していない症例で, IIIb型症例でも右葉切除術,後区域部分切除を施行したそれぞれ3例と1例は,いずれも良好な結果であった.
    われわれの経験では,重症肝損傷例における肝切除術は有効な術式であり,治療に際し検討すべき術式の一つであるといえる.
  • 広岡 保明, 鈴木 一則, 小西 伊智郎, 佐藤 尚喜, 貝原 信明
    1999 年60 巻2 号 p. 324-328
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    硬変肝切除中における門脈内prostaglandin E1 (PGE1) 投与の効果を,術後肝機能および血中endotoxin (Et) 濃度の推移で検討した.肝硬変合併肝細胞癌30例を対象とし, A; PGE1術中門脈内投与群 (0.01μg/kg/min), B; PGE1術中静脈内投与群 (0.02μg/kg/min), C; PGE1非投与群の各々10例に分けた. A, B群は術直後よりさらに2日間静脈内にPGE1を持続投与した.全例肝切除中にPringle法で肝温阻血を15分間, 2回以上行った. A群の術後T. Bilの推移はB, C群に比べ有意 (p<0.05) に良好で,術後ALT, PT, HPT, ケトン体比の推移も有意差は認めなかったがB, C群に比べ良好であった. B群とC群では術後肝機能に差を認めなかった.血中Et濃度は温阻血解除後に倍増し,術前値に回復するのにA群で1~2時間, B群で1~3日間要した.
    以上より,肝温阻血を伴う硬変肝切除中の門脈内PGE1投与によって,術後肝機能やEt処理能の低下が抑制されることが確認された.
  • 丸橋 繁, 左近 賢人, 梅下 浩司, 山田 晃正, 武田 裕, 谷口 一則, 檜垣 直純, 藤原 義之, 蓮池 康則, 金井 俊雄, 後藤 ...
    1999 年60 巻2 号 p. 329-334
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    prostaglandin E1 (PGE1) の肝細胞保護効果については種々の報告があるが,その臨床的効果については不明な点が多い.
    今回, 1991年から4年間の原発性肝癌切除例 (77例)を, PGE1の術中投与を行った群 (30例)と,投与しなかった群 (47例)に分け, PGE1投与の効果をretrospectiveに検討した.両群間の背景因子,総ビリルビン, glutamyl pyruvic transaminase (GPT), hepaplastin test (HPT), cholinesterase (ChE) を術前および術後1, 3, 7, 14日目において比較した.肝機能の経時的変化を検討するため術前値に対する比も同時に比較した.両群間において出血量や手術時間等の手術因子に差を認めなかった.
    総ビリルビン, GPTの上昇に対するPGE1投与の効果は認められなかったが, HPT, ChEの術前値比はPGE1投与によりその低下が有意に抑えられた.
    術中PGE1投与の効果は,手術侵襲,虚血再灌流障害に対する肝細胞保護作用よりもむしろ,肝における蛋白合成能促進作用が主であった.
  • 長谷川 洋, 小木曽 清二, 長沢 圭一, 谷合 央, 籾山 正人, 千田 嘉毅
    1999 年60 巻2 号 p. 335-337
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1992年からの5年間に79例の胆管結石症に対して腹腔鏡下の一期的治療を行った.この中で80歳以上の高齢者は10例 (12.6%) であった,行われた術式は,経胆嚢管的切石2例,胆管切開8例であった,高齢者に対する腹腔鏡下の一期的治療の安全性を検討する目的で,この10例を対象として,その治療成績を80歳未満の例と比較検討した.切石は全例成功した.手術時間は平均192±50分,ドレーンの留置期間は平均6.0±2.9日,入院期間は平均16.1±14.0日であり, 80歳未満の例との間に統計学的に有意差は認められなかった.合併症は2例 (20%) に認めたが,感染が主で重篤なものは無かった.以上の結果より,高齢者でも全身麻酔が可能な状態であるならば,安全に一期的治療が行い得ると思われた.また,高齢者にとっては腹腔鏡下手術の,痛みが軽度で,早期に離床できるという利点は術後の合併症を減少させる上でも極めて有用と思われた.
  • 富田 凉一, 丹正 勝久, 藤崎 滋, 福澤 正洋
    1999 年60 巻2 号 p. 338-343
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    若年者 (40歳以下)胆石症62例と高齢者 (75歳以上)胆石症52例について,臨床的特徴を検討し以下の結果を得た.若年者と高齢者共に女性が多かった.併存疾患は若年者が明らかに高齢者より少なかった.無症状例は若年者に, Charcot 3徴は高齢者に明らかに多かった.急性胆嚢炎は若年者より高齢者に明らかに多かった.結石の存在部位は若年者,高齢者共に胆嚢が最も多く,結石の種類は若年者ではコレステロール結石,高齢者ではビリルビンカルシウム石が明らかに多かった.胆嚢胆汁中細菌感染率は若年者が高齢者に比較して明らかに少なく,両者ともE. coliが最も多かった.そして,好気性グラム陰性桿菌は高齢者,好気性グラム陽性球菌は若年者に明らかに多かった.合併症発生率は若年者に比較して高齢者に明らかに多く,全身合併症は高齢者のみに認められた.
  • 北村 雅也, 高橋 毅, 吉田 宗紀, 島田 謙, 柿田 章, 磯部 義憲
    1999 年60 巻2 号 p. 344-350
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    膵管形態および膵管開存の評価法としてのMRCPの有用性について検討した. 181症例にMRCPを施行し, 膵管描出能およびPFD値を計測した例(N=24)でPFD値と膵管描出能について検討を行った. またセクレチンを投与し(N=53),主膵管の描出能の改善をはかり, 腸管内に分泌された膵液の量の増加をMRCPで確認することにより, 膵管口の開存の評価を検討した・MRCP上膵管の描出率は79.0%で,PFD値と膵管描出能の相関は, 膵管描出群でP F D 僚が有意に高値であった(p=O.031).セクレチン負荷による膵管口の開存評価では,49/53例(92.5%)で腸管内の信号強度の増加がみられ,腸管内の信号強度の増加が膵管口の開存を示すものと考えられた.セクレチン負荷MRCPは従来間接的な評価法が主体であった膵頭十二指腸切除術後の膵管吻合部の開存の評価法として有用な検査法と考えられた.
  • 鯵坂 秀之, 吉光 裕, 磯部 芳彰, 竹下 八洲男
    1999 年60 巻2 号 p. 351-358
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1997年12月までに温熱療法を併用した集学的治療を93例に行った.部位別および疾患別の平均加温回数,奏効率 (CR(h)+PR(h)/総数)は頸部悪性リンパ腫で10.0回, 100% (6/6), 頸部リンパ節転移で11.3回, 16.7% (1/6), 乳癌初発例で19.0回, 100% (1/1), 乳癌再発例で10.2回, 16.7% (1/6), 原発性肝癌で13.3回, 33.3% (5/15), 転移性肝癌で9.8回, 25.0% (3/12), 胆嚢癌で8.5回, 50.0% (1/2), 胆管癌で7.0回, 0% (0/4), 膵癌で8.1回, 0% (0/18), 骨盤腫瘍で10.0回, 23.1% (3/13) であった.副作用は13例に治療を要する火傷, 12例に治療を要する高血圧もしくは頻脈, 35例に軽い熱感や疼痛を認めたが温熱療法を中止するほどの重篤なものは認められなかった.
  • 道上 慎也, 石川 哲郎, 荻澤 佳奈, 吉川 和彦, 平川 弘聖, 須加野 誠治
    1999 年60 巻2 号 p. 359-363
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    Riedel甲状腺炎は,非常に稀な甲状腺炎である.今回われわれは,Riedel甲状腺炎の1例を経験したので報告する。症例は54歳女性で,1996年4月頃左前頸部に無痛性拇指頭大の硬結に気付き,同年7月に当科入院となった.頸部所見では,5.2×2.8cm大の弾性硬,境界やや不明瞭,可動性不良の腫瘤を触知した.CTでは,甲状腺左葉を中心に峡部,右葉にかかる腫瘍陰影がみられ,食道,内頸静脈との境界もやや不明瞭で浸潤が疑われた.手術所見では,甲状腺左葉の腫瘍は右葉との境界は比較的認めたが非常に硬く,気管,前頸筋群等と強固な癒着がみられ,手術は甲状腺右葉上極を残して甲状腺亜全摘術を施行した.組織診では,濾胞は消失しhyaline化した線維とリンパ球等の浸潤を認めRiedel甲状腺炎と診断された.
    以上,Riedel甲状腺炎の1例を経験したので若干の文献的考察と共に報告する.
  • 青柳 和彦, 高見 博, 尾崎 修武, 小林 紘一, 宇都宮 譲二
    1999 年60 巻2 号 p. 364-370
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    極めて稀なMEN2B症例を16歳時の甲状腺全摘から死亡まで, 25年間の経過を観察し,若干の知見を得た.甲状腺髄様癌とMarfan症候様体型,口腔粘膜の多発神経腫,左副腎腫瘍,巨大結腸症,多発結腸憩室を併存し,RET癌遺伝子の点突然変異が証明された典型例であった.
    甲状腺髄様癌は頸部リンパ節のほかに胸壁,肺,肝,下咽頭・喉頭などに遠隔転移をみた. カルシトニンとCEAの血中濃度は著しい高値を呈した. 両者はつよい正の相関関係を示し,治療の効果判惣こ有用であった.
    また,低カルシウム血症によるテタニーを発現し,高カルシトニン血症との因果關係も疑われた.
    結腸には節神経腫が散在し, それに起因するS状結腸の多発性憩室炎の穿孔性腹膜炎が直接死因であった.
  • 上野 正勝, 森本 健, 木下 博明, 若狭 研一
    1999 年60 巻2 号 p. 371-374
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    われわれは23歳の女性の片側乳房肥大を治療し,その原因が乳腺過誤腫であった1例を経験したので報告する.症例は3年前から徐々に増大する腫瘍に気づき放置していたが,来院前1年間で片側乳房の肥大が著明となった.physical findings, mammography.乳腺超音波検査より,4個の腫瘤からなる多発性の葉状腫瘍と診断し,腫瘤核出術を施行した.切除標本を検索すると,腫瘍は深い切れ込みの形成により,4区域に分葉した1個の腫瘍であった.腫瘍は境界明瞭で被膜を有し膠原線維質からなる正常乳腺様で乳腺過誤腫と診断した.組織学的には線維腺腫の像に酷似していた.乳腺過誤腫は高頻度にみられる腫瘍ではないが,その存在と,良性であるが時に巨大化することなどを熟知していれば診断および適切な治療の選択に有用であると思われる.
  • 冨木 裕一, 日野 眞子, 松田 光弘, 前川 博, 鳴海 賢二, 卜部 元道, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦, 平井 周
    1999 年60 巻2 号 p. 375-379
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は27歳, 女性. 急激な右乳房の腫脹を主訴に受診した. 血液検査でLD Hが13,811IU/lと高値を示していた.生検組織所見はDiffuse large B-cell lymphomaであった.左乳房にも腫瘤を認め,同時性両側乳腺原発悪性リンパ腫と診断した.
    MACOP-B療法で完全寛解となったが,治療開始5カ月後に左乳房に再発し,CHOP療法と両側乳房に50Gyの照射を施行した.再び完全寛解となったが,3カ月後に再発し,腹腔内,髄液,末梢血にLymphoma cellがみられるようになった.各種の多剤併用療法を施行したが,化学療法に抵抗を示すようになり,発症から29カ月経過した1998年8月18日,肺炎を併発し呼吸不全で永眠された.
    同時性両側発生例のうち,発症から1年以上生存した報告は自験例を含め6例のみである.治療は局所的な外科治療や放射線療法に優先して,系統的な化学療法を施行することが治療成積の向上に必要であると思われた.
  • 小高 雅人, 岡崎 泰長, 堀見 忠司, 岡林 孝弘, 西岡 豊, 長田 裕典
    1999 年60 巻2 号 p. 380-383
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    粘液癌および浸潤姓小葉癌という2つの異なる組織型を呈した一側多発乳癌の1 例を経験したので報告する.症傍は66歳女姓で,右乳房痛を自覚したため近医受診し,右乳房に2個の腫瘤を指摘された.その後,当院受診し,右乳房AC領域に径2.5cmの腫瘤と,CD領域に径2.0cm大の腫瘤を触知した.乳腺超音波検査では,AC領域の腫瘤は辺縁糧造で, 内部は低エコーであった. CD領域の腫瘤は辺縁不整で, 内部は低エコーと高エコーが混在していた.穿刺吸引細胞診にて両腫瘤ともClass Vであった.平成10年2月25日胸筋温存乳房切除術(児玉法)を施行した.病理組織学的検査にてAC領域の腫瘤は粘液癌,CD領域の腫瘤は浸潤性小葉癌であった.
    粘液癌および浸潤性小葉癌とかう病理組織学的に異なった型の一側性多発乳癌はたいへん稀である.
  • 下向 博洋, 小川 淳宏, 阪上 雅規, 宮田 幹世, 武田 力, 中村 俊一
    1999 年60 巻2 号 p. 384-388
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.1977年左CDE領域,4×5cmの乳癌のため定型的乳房切断術を受けた.組織型は乳頭腺管癌でT2,n1α,M0,病期IIであった.術後問題なく経過していたが1996年(術後19年)左鎖骨上の腫瘤に気づき穿刺細胞診で腺癌の所見を得た.また同時期に左前胸部の湿疹様の発赤を認め,生検で真皮内に転移を認めた.再発後内分泌療法を開始し,約1年半になるが再発部の大きさ性状に変化はなく,全身状態良好で何ら制限なく日常生活を営んでいる.
    乳癌晩期再発例は高齢者であることが多く,局所再発は全身病の一部と考えると,過大な手術侵襲を避けQOLを考慮した治療方針を立てるべきである.
  • 平田 哲, 及川 賢輔, 笹嶋 唯博
    1999 年60 巻2 号 p. 389-393
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    原発性非小細胞肺癌の胃転移症例(70歳,男性)と直腸転移症例(63歳,男性)の2例を経験した.いずれも消化管出血の精査にて転移部位の診断がつき,出血のコントロールのため外科的に治療を行った.しかしわれわれの経験した2症例も,その後の経過より胃や直腸だけではなく,他のいくつかの臓器にも転移が認められ,広範な血行性転移の一部として発見されたものと考えられた.予後に関しても再発確認後,それぞれ3カ月と5カ月で癌死し,転移巣の発見や治療は予後には影響を与えないと考えられた.非小細胞肺癌の現行の化学療法や放射線療法の効果も期待できない為,転移巣に対する治療は,患者本人,家族との十分なInformed consentのうえ,治療戦略をたてるべきである.もし外科的治療を選択した場合は,患者のPerformance Statusを評価し,重篤な合併症を併発する前に,その後のQOLを考慮した,より侵襲の少ない手術法を選択すべきと考えられる.
  • 山吉 隆友, 太田 勇司, 佐々木 伸文, 西田 卓弘, 足立 晃
    1999 年60 巻2 号 p. 394-398
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    肝萎縮を伴う肝内結石症を合併したMorgagni孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は58歳の女性で右季肋部痛を主訴として来院した.左肝内結石の診断となるも同時に胸都X線写真にて右心横隔膜角に腫瘤陰影を,胸部CTにて右前縦隔に脂肪濃度の腫瘤像を認め縦隔の脂肪腫等を予想した.肝左葉切除を行うべく開腹すると,大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアであることが判明した.ヘルニア嚢を反転切除後ヘルニア門を縫合閉鎖し肝左葉切除を予定通り施行した.術後は胸部X線の腫瘤陰影は消失し.15カ月経過した現在再発は認めない.
  • 吉田 達也, 菅野 範英, 江渕 正和, 丸山 道生, 長浜 雄志
    1999 年60 巻2 号 p. 399-403
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    幽門狭窄を呈する進行胃癌が原因と考えられる食道破裂を経験し,保存的治療の後にリンパ節郭清を伴う一期的切除再建術を施行したため報告する.症例は51歳の男性で,嘔吐の後に激しい胸痛・呼吸苦で発症した.入院時,チアノーゼを呈し,胸部単純X線上胸水を伴う左気胸を認め,緊急内視鏡により食道破裂の診断となったが,同時に胃に進行癌を認め,また全身状態も不良であったため,一時保存的に経過をみた.その過程で胸部CT・再度の内視鏡を施行し,食道破裂の確定診断および胃癌の病理組織学的診断を得て,発症後21日目に胃全摘および下部食道切除・脾合併切除術・D2郭清・胸腔内Roux-en-Y再建術を一期的に施行した.術後は比較的順調に経過し,術後補助化学療法を施行した後に退院した.原因に胃癌を有すると思われる食道破裂は検索範囲内では報告例がなく,貴重な症例であると思われたため報告した.
  • 井上 征雄, 國崎 忠臣, 石橋 経久, 碇 秀樹, 吉田 彰, 地引 政晃
    1999 年60 巻2 号 p. 404-407
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    無症状に経過したvon Recklinghausen病に合併した胃動脈瘤破裂の1例を経験した.症例は75歳女性.既往歴は20歳よりvon Recklinghausen病.主訴はなし.平成4年よりC型肝炎で経過観察されていた.平成9年4月の上部消化管造影,上部消化管内視鏡で胃幽門側の粘膜下腫瘍を疑われ, 当科に紹介された. 選択的腹腔動脈造影にて右胃大網動脈に小さな動脈瘤と造影剤の漏出を認め,上腹部CTの所見と併せ,血腫も疑い手術を施行した.腫瘤は大網と胃結腸間膜に覆われており,腫瘤部位も含めて胃部分切除を施行した.切除標本では内部に腫瘍組織を認めず血腫と診断された.
    von Recklinghausen病に合併した胃動脈瘤破裂の本邦報告例は,われわれが検索し得た限りではなく,非常に稀な症例であった.
  • 藤森 勝, 真名瀬 博人, 大竹 節之, 宗村 忠信, 鈴木 温, 行部 洋, 関下 芳明, 塩野 恒夫
    1999 年60 巻2 号 p. 408-411
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.食遵癌根治手術の2年5カ月後右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診,NSAIDをふくむ感冒薬を内服していたことと造影で再建胃管から右胸腔への造影剤漏出を認めたことから,再建胃管潰瘍の右胸腔への穿孔と診断し手術を施行,穿孔部の縫合閉鎖に加えてpericardial fat graftによる補強を行い良好な結果を得た.潰瘍は術後H2ステージで推移していたが7カ月後に再発を認め,胃管粘膜の培養でHelicobacter pylori陽性であったため除菌を行い,8週後にはS1ステージまで改善した.再建胃管潰瘍が遷延,再発する場合Helicobacter pyloriの関与についても考慮する必要があると考えられた.
  • 天池 寿, 内藤 和世, 柳田 正志, 閑 啓太郎, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1999 年60 巻2 号 p. 412-416
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.狭心症状の精査目的で来院した.心血管系の精査では異常を認めなかったが,高度の貧血を伴っていたため,さらに消化管を中心に諸検査が行われた.その結果,肝転移を伴う横行結腸癌と肥厚性胃炎と考えられる胃の隆起性病変を指摘された.1996年12月5日外科手術を施行.胃病変は手術所見で悪性リンパ腫が強く疑われたため,大腸病変と供にen bloc切除した.切除標本の病理組織検査にて,胃の病変はGastritis Cystica Profunda (GCP)と診断されたが,手術既往のない胃に発生し,巨大皺襞を形成するGCPは極めて稀であり.一般にその術前診断は困難である.しかしながら本症は基本的には非腫瘍性の良性病変と考えられ,保存的治療が原則であることから,超音波内視鏡検査や胃粘膜切除術などの手法を用い,術前に正確に診断することが肝要と思われる.
  • 石神 純也, 長谷 茂也, 夏越 祥次, 帆北 修一, 愛 甲孝
    1999 年60 巻2 号 p. 417-420
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    長径20cmの胃stromal tumorの1切除例を経験した.症例は77歳の男性で,上腹部の腫瘤を主訴に入院し,腹部CT検査で上腹部の巨大な嚢胞性疾患が疑われた.術中所見で腫瘤は胃体部と連続し,一部で膵への浸潤が疑われたため,胃部分切除と膵体尾部切除を行い,腫瘤を摘出した.腫瘍の明らかな残存はみられなかった.腫瘤は大きさ21×20cm,重量2.4kgで病理組織学的に胃平滑筋肉腫が疑われた.免疫組織学的検索により筋漂性および神経原性のマーカーは陰性で,CD 34が陽性を示し,胃 stromal tumor, uncommitted typeと診断された.現在,明らかな再発の兆候は認められない.消化管のstromal tumorは最近確立された概念であり,本疾患の臨床的特徴を明らかにするためには症例の集積が必要と考えられる.
  • 山村 進, 恩田 昌彦, 宮下 正夫, 笹島 耕二, 徳永 昭, 吉田 寛, 山下 精彦, 弦間 和仁
    1999 年60 巻2 号 p. 421-425
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性,左季肋部痛を主訴に前医を受診し,上部消化管造影,胃内視鏡検査,腹部CTにて壁外性巨大胃腫瘍を認め,手術目的で当科紹介,入院となった.諸検査にて胃平滑筋肉腫が強く疑われた.腫瘍が巨大で周囲臓器への浸潤が疑われ,手術時の大量出血を回避する目的で,手術前日に血管造影を施行し栄養血管である左胃動脈,脾動脈,後胃動脈,短胃動脈,左胃大網動脈,左横隔膜下動脈の塞栓術を行った.これにより少ない術中出血量で,脾摘出術を含む胃全摘術を終了し得た.術後経過は良好で現在のところ再発を認めず外来通院中である.
  • 長谷川 久美, 川合 重夫, 久米 進一郎, 仁瓶 善郎, 杉原 健一
    1999 年60 巻2 号 p. 426-430
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.17歳時より上腹部不快感,腹満感が持続していたが,検診の上部消化管透視検査では異常なしとされていた.平成8年8月吐下血が出現し,近医にて胃粘膜下腫瘍と診断され,同年10月当院受診.前庭部小彎前壁に太い基部を持つ,径約6cmの粘膜下腫瘍が十二指腸内に嵌入していた.腫瘍は生検鉗子にて容易に胃内に引き戻りcushion sign陽性であった.CTで十二指腸下行脚内にfat density massを認めた.胃脂肪腫を疑い開腹腫瘍摘出術を施行.病理検査で脂肪腫の確定診断を得た.自験例は4年前の造影検査でも十二指腸に腫瘤性病変が描出されていたが,見過ごされていた.前医にて腫瘍の表面にびらんが認められていたことから脂肪腫からの出血であった可能性が考えられた.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 長澤 圭一, 籾山 正人
    1999 年60 巻2 号 p. 431-433
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    真性腸石を伴ったMeckel憩室穿孔の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は66歳男性.右下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部単純X線写真,腹部CTでは右下腹部に石灰化陰影を認めた.虫垂炎または憩室炎による汎発性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した.回腸末端より70cm口側の腸間膜付着側対側にMeckel憩室を認めた.憩室内には腸石が存在し,先端で穿孔していた.腸石は腹部X線写真で透過性が外層で低い二重構造を示すため真性カルシウム塩腸石と診断した.
    Meckel憩室に腸石を伴うことは極めて稀であり若干の文献的考察とともに報告する.
  • 北原 光太郎, 黒木 信義, 梶山 林太郎, 川原 昭夫, 大熊 隆介
    1999 年60 巻2 号 p. 434-438
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    回腸に発生した潰瘍を伴うinflammatory fibroid polyp(以下IFP)の1例を報告した.症例は60歳女性で,腹部膨満感,腹痛,嘔吐を主訴に来院.腹部単純撮影にて鏡面形成を認めたため腸閉塞の診断で入院.ロングチューブからの造影にて直径3cm大の円形の陰影欠損像を回腸に認めたため,小腸粘膜下腫瘤の診断で回腸部分切除術を施行した.腫瘤はbridging foldを伴う亜有茎性で2.7×2.7×2.5cm大の粘膜下腫瘍であり,腫瘤部と肛門側に一部潰瘍を伴っていた.病理組織学的には,腫瘤は粘膜下層に存在し,好酸球およびリンパ球の浸潤を伴う線維芽細胞様細胞の増殖からなりIFPと診断された.小腸のIFPは比較的稀であり本邦報告例の検討を加えて報告した.
  • 森屋 秀樹, 柳田 優子, 中崎 久雄, 田島 知郎, 幕内 博康
    1999 年60 巻2 号 p. 439-443
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    Crohn病の下血の頻度は比較的少なく,大量下血は極めて稀である.
    大量下血を契機に発見された小腸Crohn病の1例を経験したので報告する.症例は23歳の生来健康な男性.大量下血によるショックで搬送されたが,輸液療法で改善した.上部下部内視鏡検査では明らかな出血源を認めず,小腸造影で小腸腫瘍が疑われ,開腹した.開腹所見より,小腸Crohn病が疑われ,回腸を約60cm切除した.約20cmにわたる縦走潰瘍と敷石状隆起,小潰瘍の散在を認め,病理組織学的にCrohn病と診断された.
    術後3年の経過観察において大腸,小腸ともに再発を認めていない.
  • 高 順一, 町田 彰男, 李 雨元, 新谷 隆, 村上 雅彦, 草野 満夫
    1999 年60 巻2 号 p. 444-446
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女姓.臍周囲痛,右鼠径部腫瘤を主訴に来院.腹部単純X線にて,多数の小腸ガスおよび鏡面像を呈し,緊急腹部CT検査で,右鼠径部に嵌頓した腸管を認めたため,右大腿ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断し緊急手術を施行した.手術所見では,回盲部から約50cmの部位の回腸が大腿動静脈の内側にRichter's herniaの状態で嵌頓していた.さらに小腸はtreitz靭帯と嵌順部を軸に反時計方向に360° 捻転し小腸全体は暗赤色を呈していた.嵌頓,軸捻転を解除したが嵌頓した一部回腸は血流障害による壊死性変化が強く,回腸部分切除を施行した.他の小腸は解除と同時に正常色に復した.術後経過は良好で第16病日に退院となった.二次性の小腸軸捻転症で,ヘルニアによって引き起こされるものは極めて稀であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 橋本 慶博, 阿部 貞信, 萩原 栄一郎, 古川 良幸, 平井 勝也, 青木 照明
    1999 年60 巻2 号 p. 447-450
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は27歳女性.正常分娩後に下血を認め当院産婦人科受診.多量の下血によりショックとなり当科紹介となった.各種画像診断・内視鏡検査により空腸からの出血と診断,小腸切除術を施行した.術後病理検査により絨毛癌と診断され,化学療法目的にて婦人科転科となったが,その後脳転移・肺転移が認められた.妊娠中・産褥期に発症する絨毛癌の頻度は妊娠数万回に1回といわれている.絨毛癌はその生物学的特性より,早期から血行性転移を来す.特に消化管への転移は診断が困難であり,他に多発性転移を伴っていることが多く,予後不良のことが多い.
    転移性小腸絨毛癌は非常に稀な疾患であり,本邦臨床例では8例の報告がみられるのみである.妊娠中・産褥期の絨毛癌は転移病巣による症状で発見されることもあり,異常性器出血,下血,呼吸器症状,脳神経症状に遭遇した場合には,頻度は少なくとも,絨毛癌の可能性も念頭におく必要がある.
  • 小出 紀正, 高橋 泰夫, 浅野 英一, 水野 伸一, 下地 英機
    1999 年60 巻2 号 p. 451-455
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    腸重積症で発症した虫垂粘液嚢腫の1例を経験した.
    症例は78歳,男性.右下腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診し,急性腹症の診断で当院を紹介受診した.腹部超音波検査で嚢胞性腫瘤を先進部とする腸重積症と術前診断し緊急手術を施行した.回盲部の嚢胞性腫瘤を先進部とする腸重積症で,用手的に整復した後,回盲部切除術を施行した.切除標本では腫大した虫垂が回盲部の腫瘤と連続し,虫垂粘液嚢腫による賜重積症と診断された.
    虫垂粘液嚢腫による腸重積症では,腹部超音波検査が腸重積の診断のみならず,任意の断面の画像所見が得られることから先進部の質的診断にも有用であると考えられた.
  • 都筑 重利, 渡辺 光久, 太田 心平, 保坂 成俊
    1999 年60 巻2 号 p. 456-460
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    術前診断が可能であった上行結腸癌による成人腸重積症の2例を経験したので報告する.(症例1)61歳男性.主訴は右下腹部痛.入院時腹部超音波検査・腹部CT検査にて腸重積が疑われ,注腸造影検査にて腸重積と診断し注腸にて整復した.整復後先進部に腫瘤を認め,大腸内視鏡検査にて2型の癌腫と診断,待機的に根治術を行った.病理組織学的には4.2×3.7cm,高分化型腺癌,ss.ly1,v1,n(-)であった.(症例2)44歳女性.主訴は上腹部痛.腹部超音波検査・腹部CT検査にて腸重積を疑い,注腸検査を施行し腸重積と診断した.注腸整復時先進部に腫瘤を認め,大腸内視鏡検査にてポリープと1型癌腫を認めた.結腸右半切除術を行った.病理組織学的には2.8×2.2cm,pm,ly2,v2,n1(+)であった.急性腹症では本疾患も念頭に診断にあたり,その際超音波検査,CT検査は有用であり必須の検査と考えられた.
  • 内田 剛史, 猪川 弘嗣, 中村 栄秀, 林 剛, 山田 省一, 淡海 秀光
    1999 年60 巻2 号 p. 461-464
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性,左下腹部痛を主訴に来院した.左下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知した.注腸造影でS状結腸から下行結腸にかけて不正な鋸歯像を伴う,狭窄像を認め,CTではS状結腸から連続する低吸収域の腫瘤像が認められた.炎症性腫瘤性病変が疑われ保存的治療を施行したが,腫瘤の縮小はみられず,CEA高値であり,粘膜下浸潤型S状結賜癌も否定できなかったため,外科的手術を施行した.開腹所見ではS状結腸間膜に炎症性腫瘤を認め,小腸が癒着しており,腫瘤を含めS状結腸部分切除術を施行した.病理組織検査にて腸間膜脂肪織炎と診断された.本疾患は本邦で77例が報告されており,自験例を含め78例につき若干の文献的考察を加え報告する.
  • 坂下 文夫, 古田 智彦, 林 幸貴, 本多 俊太郎, 小島 則昭
    1999 年60 巻2 号 p. 465-468
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌が重積を来し結腸脱を惹起した症例を経験したので報告する.患者は,76歳女性.下血と肛門からの腸管脱出を主訴に当科受診した.来院時,脱出腸管は還納されていたが,直腸指診で肛門より約8cmのところに1型腫瘤を触知した.入院後,腸管の肛門外脱出を頻回に認め,徐々に増大し用手的還納が困難となったため,手術を施行した.開腹下に重積腸管を整復すると,腹膜翻転部より20cm口側に小指頭大の腫瘤を認め, 高位前方切除, D 2 リンパ節郭清を行った. 切除標本で, 2.5 × 2.Ocm の1型腫瘍,病理組織学的所見は高分化腺癌であった.
  • 保田 尚邦, 渋沢 三喜, 角田 明良, 神山 剛一, 中尾 健太郎, 草野 満夫
    1999 年60 巻2 号 p. 469-472
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    原発性びまん浸潤型大腸癌は稀な疾患である.今回われわれは原発性びまん浸潤型大腸癌の6例を経験したので考察を加え報告した.男女比は1:2と女性に多く,平均年齢は64.5歳であった.占拠部位は6例とも左側大腸であった.組織型では低分化腺癌3例,分化腺癌2例,粘液癌1例であった.注腸X線検査所見で最も特徴的な所見は中,長い腸管の狭窄像と壁の硬化像であった.加えて粘膜面の敷石様変化,母指圧痕像,鉛管様変化像が認められた.大腸内視鏡検査においで2例で粘膜面への癌の露出を認めず生検の結果は陰性であった.よって注腸X線検査や大腸内視鏡検査で多彩な所見があらわれることを念頭に入れ,早期診断の向上に努める必要が示唆された.また根治度Bを施行した1例で5年生存を得たことより根治度を高め予後の改善に努めることが急務と考えられた.
  • 永野 靖彦, 南湖 正男, 長堀 優
    1999 年60 巻2 号 p. 473-476
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は46歳女性.左鼠径部腫瘤を主訴に受診した.左鼠経腫瘤はリンパ節であり穿刺吸引細胞診はadenocarcinoma, Group Vであった.また肛門指診では,下部直腸に3cm大の弾性硬の腫瘤を触知し,肛門周囲には5×5cm大に広がる境界明瞭な紅斑様病変を認めた.肛門周囲皮膚病変の生検でPaget細胞を認めた.大腸内視鏡検査では直腸Rbに2型腫瘍を認め,生検で印環細胞癌を認めた.以上より肛門周囲Paget病を伴った直腸印環細胞癌,鼠径リンパ節転移と診断し,仙骨腹式直腸切断術,膣後壁合併切除,左鼠径リンパ節郭清を施行した.肛門周囲Paget病を伴った直腸印環細胞癌は稀な疾患であり, 文献的考察を加え報告した.
  • 安藤 英也, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 西尾 秀樹, 村田 透, 谷合 央
    1999 年60 巻2 号 p. 477-481
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    経皮経肝胆管ドレナージ(以下PTCD)は閉塞性黄疸に対する治療およびその原因疾患の診断に対し不可欠な手技であるが,この手技に起因する様々な合併症が報告されている.このなかでも稀な合供症として瘻孔再発がある.今回われわれは,瘻孔再発を切除しえた例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は45歳男性.平成4年9月黄疸を主訴に来院した.PTCDを施行し,精査の結果,十二指腸乳頭部癌と診断した.同年10月26日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)を施行した.術後経過は良好で平成5年1月16日に退院した.同年3月頃よりPTCD瘻孔部に硬結が出現,徐々に増大し,疼痛が増強したため,PTCD瘻孔再発を疑い,精査を行った.切除可能と診断し,瘻孔部腫瘤切除術を施行した.病理組織検査上も乳頭部癌の再発と診断された.術後経過は良好であったが再手術後約8カ月に腹腔内再発による消化管出血で死亡した.
  • 姫野 佳久, 中島 公洋, 白下 英史, 安田 光宏, 蓮田 慶太郎, 穴井 秀明
    1999 年60 巻2 号 p. 482-485
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.平成1年6月29日,上行結腸癌に対し右半結腸切除施行.mucinouscarcinoma, ss, n1, ly0, v0, stage IIIa, D, curability Aであった.平成9年2月より発熱腹痛あり,CT上肝S5S6に巨大腫瘍を認め,内部にair-fluid levelのある広い空洞を認めた.注腸造影では右上腹部小腸と肝腫瘍内空洞との間に瘻孔を認めた.平成9年4月15日,肝右葉切除,小腸合併切除術施行.腫傷径は1O5mmで内部に径70mmの空洞を有し,ゼラチン様物質および糞便が充満, この空洞と小腸との間に瘻孔が形成され, 小腸壁への腫瘍浸潤あり,病理所見では.粘液癌肝転移および小腸への直接浸潤であった.肝転移巣内の空洞化および小腸との瘻孔形成といった, 特異な発育形態を示す切除例の報告はなく, 粘液癌腫瘍内部の流動化, 単発巨大肝転移巣内部の壊死, 前回手術による肝と小腸の癒着,などの理由により本例のような病態が発生したと考えられた.
  • 野村 裕紀, 星川 剛, 木村 雅美, 時田 捷司, 平田 公一
    1999 年60 巻2 号 p. 486-489
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    転移性肝癌に対し経皮的エタノール局注療法(PEIT)を施行し,効果があったと判断した4症例と効果が認められなかった症例を比較し検討した.エタノール注入にあまり抵抗がなく,十分量のエタノールが腫瘍内に注入しえた4症例では局所効果が得られ有効であったが,他の1症例ではエタノール注入に抵抗があり効果も不十分であった.転移性肝癌の組織型をはじめとする腫瘍の性質が関与していることが考えられた.
  • 高橋 祐, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 千田 嘉毅
    1999 年60 巻2 号 p. 490-494
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    急性気腫性胆嚢炎はガス産生菌により胆嚢内および胆嚢壁内に特徴的なガス像を生ずる比較的稀な疾患である.今回われわれは4例の気腫性胆嚢炎を経験した.4例とも本症と診断後直ちに経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行した,そして全身状態の改善を待ち胆道系を精査した後に,根治手術を行い良好な結果を得た.
    本症は重症例が多くまた穿孔の頻度が高いことから早急な外科的治療が必要であると従来よりいわれてきた.しかし最近本症の本邦報告例122例中33例にPTGBDが施行され,その有効性が報告されている.本症に対するPTGBDの利点として(1)局麻下に短時間で施行可能,(2)効果的な感染コントロール,(3)ドレナージチューブを利用した胆道系精査,が考えられる.本症に対する第一の処置としてPTGBDは極めて有用であり,本症にも安全な待機手術は可能であると思われた.
  • 中川 英刀, 蓬池 康徳, 小林 研二, 吉川 宣輝
    1999 年60 巻2 号 p. 495-498
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性で,8年前より胆石を指摘されており無症状であったが,検診にて胆嚢癌の合併が多い陶器様胆嚢と診断された.CT・超音波検査では,胆嚢壁の石灰化・胆石を認めたが,腫瘍性変化や他の壁の異常は認めず,胆嚢癌合併の可能性は低いと判断し,腹腔鏡下による摘出を試みた.手技上の問題点として,胆嚢が硬く鉗子による把持が困難であり,3mmのリトラクターを追加して,肝床部ごと脱転し,胆嚢頸部の処理を行い得た. また, 肝床部が炎症のため剥離困難であり, 胆嚢壁を開放して胆嚢を摘出し,残った肝床部の胆嚢壁を追加切除した.術後は合併症もなく退院した.切除標本の胆嚢粘膜上皮は完全に脱落しており,悪性所見は認めなかった.陶器様胆嚢の治療において,術前の詳細な検査のうえで胆嚢癌の合併の可能性が低い症例に対しては,まず腹腔鏡下による胆嚢摘出術を試みるべきものであると考える.
  • 土肥 健彦, 渡辺 五朗, 松田 正道, 橋本 雅司, 澤田 寿仁, 宇田川 晴司
    1999 年60 巻2 号 p. 499-502
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出後のトロッカー挿入部における腹壁瘢痕ヘルニアの2例を経験したのでここに報告する.症例1は腹腔鏡下胆嚢摘出を施行した約1年後に臍部の膨隆が出現した.腹壁瘢痕ヘルニアの診断にて手術を施行したところ臍上部10mmのトロッカー挿入部の筋膜は欠損しヘルニア門を形成していた.症例2は肥満率22%の女性で腹腔鏡下胆嚢摘出術後3日目にイレウスを認め,臍右側に膨隆が出現したために腹部CT検査を施行したところ皮下に腸管の逸脱を認めた.臍部トロッカー挿入部の腹壁瘢痕ヘルニアの診断にて手術を施行したところトロッカー挿入部脇の筋膜が裂け腸管が脱出していた.腹腔鏡下胆嚢摘出後のトロッカー挿入部における腹壁瘢痕ヘルニアは報告例が少なく,皮下脂肪の厚い例などで筋膜の縫合閉鎖が不完全な場合に起こり得る.診断には腹部CT検査が有効であり腹部の膨隆が小さくても早期の段階で発見可能である.
  • 柴原 弘明, 松田 眞佐男, 井垣 啓, 角田 伸行, 上道 武, 石榑 秀勝
    1999 年60 巻2 号 p. 503-507
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔動脈閉塞を伴う下膵十二指腸動脈瘤の1例を経験した.症例は59歳男性.検診で行われた腹部超音波検査で膵嚢胞を疑われ,造影CTで動脈瘤と診断された.血管造影検査では,下膵十二指腸動脈に約2cmの瘤を認め,腹腔動脈は閉塞していた.肝・膵・脾への血行は,瘤より分岐する前・後下膵十二指腸動脈および背側膵動脈が側副血行路となって維持されていた.腹部臓器の血流を温存するため,動脈瘤切除後,背側膵動脈・後下膵十二指腸動脈を顕微鏡下に下膵十二指腸動脈と吻合し血行再建を行った.動脈瘤の切除標本では動脈硬化の所見であった.術後約1年を経た現在,上腸間膜動脈周囲神経叢切除によると思われる下痢傾向を認めるが,社会復帰している.今回の動脈瘤切除・血行再建は良好な結果を得ており,有用な術式であったため報告する.
  • 太田 岳洋, 吉川 達也, 新井田 達雄, 吾妻 司, 高崎 健
    1999 年60 巻2 号 p. 508-512
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(PD)後の膵腸吻合縫合不全,膵液瘻はいまだ治療に難渋する合併症である.今回われわれは難治性の膵液瘻に対し非観血的に内瘻化しこれを治癒せしめた.症例1は胆嚢癌に対し肝切除+PDを施行した.術後膵腸縫合不全から膵液瘻を生じ,約4カ月間膵液瘻が持続,観血的治療も考慮したが瘻孔より膵管と対側腸管内にカニュレーションできたことから,両者を橋渡しする形で膵管チューブを留置し内瘻化した.症例2は十二指腸乳頭部癌に全胃幽門輸温存膵頭十二指腸切除術 (PpPD) を施行した.術後,膵腸縫合不全から膵液瘻を生じ, somatostatin analogueを投与でも閉鎖できず,症例1と同様に膵管と対側腸管内にカニュレーションした後に, PTCD瘻孔を通じて経皮経胆管的に膵管内にチューブを挿入留置し内瘻化した.難治性膵液瘻の治療として,今回施行した非観血的内瘻術は侵襲も少なく非常に有用な方法と考えられた.
  • 腹部超音波検査による早期拾い上げについて
    松尾 浩, 清水 泰博, 森本 剛史, 安井 健三, 鳥井 彰人, 紀藤 毅
    1999 年60 巻2 号 p. 513-517
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は52歳,女性.上腹部痛で近医を受診し腹部超音波検査で胆嚢壁の肥厚を指摘され当院を受診した.精査で胆管非拡張型膵胆管合流異常症と診断し,同年7月手術を行った.症例2は39歳,女性.上腹部痛で近医を受診し,腹部超音波検査で胆嚢壁肥厚とadenomyomatosisを疑われ当院を受診した.精査でadenomyomatosisとコレステロールポリープを伴った非嚢腫状拡張型膵胆管合流異常症と診断し,同年12月手術を行った.手術はいずれも胆嚢摘出,肝外胆管切除および胆管十二指腸吻合術を施行した. 2症例はともに胆嚢粘膜に過形成を認め, 1例目はcholesterolosis, 2例目目はadenomyomatosisとコレステロールポリープを合併していた.嚢腫状拡張を伴わない膵胆管合流異常症を早期に発見するには,腹部超音波検査で最内層の低エコーを主体とした胆嚢壁の肥厚所見が有用で,この様な特徴的な胆嚢壁肥厚所見を認めた場合にはEUSやERCPで精査を行うべきであると考えられた.
  • 膵solid cystic tumorとの関連について
    上田 毅, 豊田 暢彦, 片山 俊介, 山口 由美, 堀江 靖, 前田 迪郎, 貝原 信明
    1999 年60 巻2 号 p. 518-521
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵に発生した石灰化病変の1例を経験したので,膵solid cystic tumor (SCT) との関連性について報告する.症例は70歳,女性.自覚症状はなく近医で検診を契機に発見された.画像所見上,膵に大きさ4×4.5cmの石灰化被膜を有した腫瘤を認め,門脈が腫瘤により完全に圧排されていた.平成9年5月13日, SCTの術前診断で腫瘤核出術が施行された.切除標本では厚く石灰化した被殻の中に凝血塊が充満しており,組織学的にはSCTにもしばしば出現するコレステリン結晶が認められたが,細胞成分は認められなかった.従って,何らかの炎症性病変が器質化したものか, SCTが長い過程の中で増殖と壊死を繰り返し,最終的に細胞成分を失ったものかは鑑別が困難であった.
  • 木村 一雄, 鹿島 健, 鈴木 隆, 酒井 均, 前川 貢一, 岩波 正英, 生田目 公夫
    1999 年60 巻2 号 p. 522-526
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部腫瘤を形成したアミロイドーシスの1手術症例を経験したので報告する. 85歳男性.腹痛を主訴に来院,左下腹部に手拳大の腫瘤を触知した. CTscanではhigh density areaを含む内部構造不均一な腹部腫瘤を認め,血管造影検査では上腸間膜動脈分枝の圧排所見, hypovascular areaが確認された.腸間膜由来の腫瘍と考え,開腹術を施行した. Treitz靭帯より約100cmの腸間膜に10cm大の硬い凹凸不正な腫瘤を認め,また小腸にも腫瘤性病変が認められた.腸間膜腫瘍摘出術,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検索では,この腫瘤は無構造なアミロイド物質より形成されていた.また,術後の検索では.慢性炎症や癌に起因する二次性アミロイドーシスや多発性骨髄腫の合併を示唆する所見は認められなかった.腸管由来の限局性アミロイド腫瘤は本症を含め13例で興味ある症例と考え,本疾患の特徴,症状,治療法を中心に文献的考察を加え報告する.
  • 星野 和男, 仲村 匡也, 池田 文広, 小山 透, 川田 清, 森下 靖雄
    1999 年60 巻2 号 p. 527-529
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    25歳男性の腹腔内伏針(新鮮例)を,緊急腹腔鏡下手術で摘出した1例を経験した.患者は自分で針を腹部に迷入させ,その10日後に腹痛を訴え,通院中の精神科から腹腔内迷入の疑で紹介された.腹部単純レントゲン写真2方向と腹部超音波検査,腹部CT検査で,腹壁下の大網内に伏針を認め,同時に腹腔内出血が否定されたため,血管損傷のない腹腔内伏針と診断した.直ちに入院,緊急腹腔鏡下手術を行った.伏針は大網内に隠れていたが一部が透見でき,容易に摘出し得た.癒着剥離を含め41分で手術を終了し,術後経過も良好で第5病日に退院した.著者が調べた限りでは,文献上で腹腔内伏針の新鮮例に対して,緊急腹腔鏡下手術を行い摘出したとの報告はなく,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 中村 徹, 北村 宏, 岩瀬 正紀, 伴野 仁, 久世 真悟, 豊田 太
    1999 年60 巻2 号 p. 530-533
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.健康診断の腹部超音波検査にて腹腔内腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.来院時自覚症状は無く,腹部理学的所見上も異常所見を認めなかった.腹部超音波検査にて肝左葉と腹部大動脈の間に腫瘤を認め,精査のため入院となった.腹部CTでは周囲との境界明瞭で,造影されない腫瘤として描出された.腹部血管造影では明らかな圧排像や腫瘍濃染像を認めなかった.以上より後腹膜腫瘍の術前診断にて,手術施行した.開腹すると,最大径3cmの腫瘍が小網内に胃角小彎と接して存在し,周囲の臓器への浸潤,癒着等はみられなかった.小網の一部とともにこれを切除した.病理組織学的検査にて,柵状配列を示す円形の核を有する紡錘状の腫瘍細胞の増殖を認めた.腫瘍細胞はS 100蛋白染色陽性で, Antoni A型の神経鞘腫と診断した.本症は頻度の低さに加えて自覚症状や理学的所見,画像診断上特有なものがなく,術前診断は困難であるが,同部位に発生する腫瘍の鑑別すべき疾患の1つであると思われた.
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