1999 年 60 巻 6 号 p. 1469-1474
1990年12月~1996年10月に当科で施行した腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)および腹腔鏡下総胆管切石術(LCL)の724例を,開腹既往なし(A群),下腹部手術既往あり(B群),上腹部手術既往あり(C群)の3群にわけて,開腹歴による腹腔鏡下手術の適応について検討した. LCでは開腹移行率に差がなかった(A群: 3.2%, B群: 3.0%, C群: 4.2%). C群の手術時間は91.4±31.0分,術後の在院期間は9.4±5.6日とA群・B群に比較して延長し有意差を認めたが,重篤な合併症はみられなかった.また,C群の開腹移行例は他の群と同様に炎症性変化の高度な症例であり,術中合併症についても差がなかった.上腹部の手術既往は腹腔内癒着が手術操作を困難にする1つの要因ではあるが,腹腔鏡下手術導入初期のようにLCの禁忌項目ではなく,特に炎症性変化の乏しい症例では十分施行可能と考えられた.