日本臨床外科学会雑誌
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最大径16mm,リンパ節転移陽性のmp結腸癌を伴った家族性大腸腺腫症の1例
石田 秀行竹内 幾也猪熊 滋久村田 宣夫藤岡 正志出月 康夫
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1999 年 60 巻 6 号 p. 1570-1574

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抄録

リンパ節転移陽性の小型進行癌を伴った家族性大腸腺腫症(FAP)の興味ある1例を経験したので報告する.症例は39歳,男性. S状結腸進行癌,下部直腸早期癌を合併した非密生型FAPの術前診断で手術を行った.術中,上行結腸の壁在リンパ節2個に腫大を認めたが,右側結腸領域に明らかな腫瘍性病変を触知しなかった. S状結腸癌に対してD3, 右側結腸領域に対してD2郭清を伴うrestorative proctocolectomy・回腸肛門管吻合を施行した.切除標本では, S状結腸の2型進行癌のほか,上行結腸に最大径16mmの平皿陥凹型病変を認め,組織学的には深達度mpの中分化腺癌で,リンパ節転移陽性であった.進行癌を合併したFAPの場合,口側大腸の術前検索が不十分になり,本症例のような小さな進行癌が見逃される可能性がある.大腸癌を合併したFAPの手術にあたっては,術中の十分な視診・触診のうえ,リンパ節郭清範囲の決定に慎重な態度が必要である.

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