日本臨床外科学会雑誌
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過長S状結腸より発生した腸管嚢腫様気腫の1例
松岡 功治前川 恭子佐伯 俊宏
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1999 年 60 巻 6 号 p. 1566-1569

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抄録

症例は67歳,女性.生来便秘傾向であった.平成10年5月より左下腹部痛,腹部膨満感,粘血便が出現し軽快増悪を繰り返すため同年9月近医より紹介となった.来院時腹部単純X線でブドウの房状の透亮像を認め,注腸造影では過長S状結腸に多数の類円形隆起性含気性病変が存在し腸管嚢腫様気腫と診断した.一方大腸内視鏡検査でS状結腸の一部に狭窄を認め,既に不可逆的変化を来しているものと考え腹腔鏡補助下にS状結腸切除術を施行した.腸管嚢腫様気腫は腸管内,特に粘膜下層または漿膜下層に多発性の含気性嚢胞を形成する比較的まれな疾患である.本邦ではわれわれの検索し得た限りで1997年までに509例の報告があるが,その発生機序については依然不明な点が多い.治療法としては高濃度酸素療法が有効ともいわれるが,本例のように腸管の狭窄などの不可逆的変化を来した症例では外科的治療が必要であると考えられる.

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