日本臨床外科学会雑誌
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直腸癌に合併したFournier's gangreneの1例
藤澤 稔丸山 俊朗児島 邦明深澤 正樹別府 倫兄二川 俊二
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キーワード: 直腸癌
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1999 年 60 巻 6 号 p. 1583-1586

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抄録

進行直腸癌に合併し,急激な経過を辿って救命し得なかったFournier's gangreneの1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性.主訴は黒色便で,注腸検査上直腸Rbにapple core signを認めたため,直腸癌の診断で入院となった.直腸診で全周性の腫瘍を触知し,肛門周囲に異常は認めなかったが,入院3日目に同部位と陰嚢の腫脹を認めたため切開排膿した.その2日後に会陰部から右側腹部に連なる握雪感を伴った腫脹を認めたため,緊急手術で切開排膿と壊死組織の切除を行った.患者は術後播種性血管内凝固症候群(DIC)から成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併し,人工呼吸器管理としたが軽快せず,第6病日に死亡した.直腸癌の術前Fournier's gangreneを合併したという報告は,検索し得た限り本邦で1例,欧米で2例のみであった.これらはいずれも癌が直腸壁を穿破しており,癌の直接浸潤が肛門周囲膿瘍の原因であると考えられた.

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