抄録
von Recklinghausen病に合併した乳癌の1例を経験したので報告する.症例は43歳の女性.背部痛を主訴に前医を受診し,右乳房腫瘤を指摘され平成10年4月30日当科を受診.右乳房に5×4cmの腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診でClass Vと診断された.術前諸検査の結果,広範囲骨転移および頭蓋内転移を伴う進行乳癌であった.手術は胸筋温存乳房切除術(児玉法)を施行した.病理検査では充実腺管癌であり, Ia, Ib, Icリンパ節転移を認めた.術後全身化学療法が奏効し,現在外来通院中である.
von Recklinghausen病には非上皮性悪性腫瘍の合併はしばしば認められるが,上皮性悪性腫瘍の合併は少なく,特に乳癌との合併は本邦では31例が報告されているのみである.皮膚病変のため,自覚的にも他覚的にも発見が遅れる傾向があり,特に体表から触知される乳癌に関しては注意深い診察と経過観察が望まれる.