日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
60 巻, 8 号
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  • 土肥 雪彦
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2003-2010
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 中津 美優, 浅越 辰男, 花谷 勇治, 長岡 信彦, 葉梨 圭美, 池田 佳史, 小平 進
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2011-2015
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    最近20年間の腫瘍径2cm以下乳癌128例を臨床病理学的に検討し次の結論を得た. 1) 原発乳癌症例中の2cm以下乳癌は, 128/412 (31%), うちリンパ節転移(n)陽性は22例(17%), 再発9例(7%) はすべてn+であった. 2) 2cm以下・n+乳癌再発9例と非再発13例の病理学的比較では,再発群は組織型は硬癌,悪性度は未分化癌,浸潤範囲はf以上,浸潤性は高度浸潤癌,脈管侵襲陽性癌の比率が高く, n個数は非再発群が全例3個以下であるのに比し再発群の56%が4個以上であった. 3) T1乳癌のn+率は,腫瘍径15mm以下群(5/68)と16mm以上群(13/43)の間で有意差があった(p<0.05). 4) T0を含めた腫瘍径15mm以下乳癌ではn個数4個以上群のみ再発していたが, 16mm以上ではn1個例でも再発していた,以上より, 2cm以下乳癌の再発率は低いが,補助療法は腫瘍径15mmに境界を設け, (1) 15mm以下ではn4個以上, (2) 16mm以上ではn+例に適応があると考えられた.
  • 福島 忠男
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2016-2021
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃癌で胃全摘術を受けた161例を対象として縫合不全の危険因子とその早期診断法につき術前術中因子,術後の各種臨床検査値から検討した.術前術中の臨床因子を判別分析を用いて検討すると判別式D=7.27038-1.61155×血清アルブミン値 (g/dl, 以下Alb)-0.00051×総リンパ球数(個/mm2, 以下TLC) の値が0.04982以上で縫合不全が発生した (p<0.05). 縫合不全が発生した9例中4例が術前長期ステロイド投与,肝硬変,高度進行癌併発例であった.縫合不全例の術後のSIRSの平均継続期間は4.60±2.37日で,縫合不全 (-) 群の2.05+2.12日に比べ有意に延長していた.以上より肝硬変,ステロイド長期使用,高度進行癌例で,さらにD値が0.04982以上の症例には縫合不全の高危険群として認識し,術後SIRSが4日以上継続する場合は縫合不全や他の合併症を起こしている可能性が高く,早期の診断,対策を行うべきである.
  • 鈴木 恵史, 河村 正敏, 嘉悦 勉, 山崎 智巳, 田嶋 勇介, 長山 裕之, 高村 光一, 小松 信男, 丸森 健司, 新井 一成, 草 ...
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2022-2026
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1988年から1995年までに教室で切除された単発進行胃癌のなかで,重複癌,肝転移例および腹膜播種性転移例を除いた,根治度A, Bであるstage II~IVa症例をD4郭清群32例, D2,3郭清群77例に分け,大動脈周囲リンパ節郭清の効果について検討した. stage II~IIIb症例の5年生存率はD4群では79.5%とD2,3群の55.0%より有意 (p<0.05) に良好であったが, stage IVaではD4群, D2,3群の予後に差はなくその効果を認めなかった. n因子, t因子から検討すると, n1,2 t2,3症例ではD4群が有意に予後良好であった.手術侵襲は, D4群で平均手術時間は有意 (p<0.05) に延長し,平均出血量,平均術後在院日数のいずれも有意差を認めないものの多量,長期であった. stage II~IIIb胃癌に対する大動脈周囲リンパ節郭清はt2,3かつn2症例では効果があり,適応となり得ると思われた.
  • 大植 雅之, 関本 貢嗣, 冨田 尚裕, 三宅 泰裕, 土岐 祐一郎, 矢野 雅彦, 辻仲 利政, 塩崎 均, 門田 守人
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2027-2031
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    消化器進行癌26例(胃癌11,小腸癌2および大腸癌13例)を対象に,メチレンブルーを漿膜面に撤布したのち癌の漿膜浸潤の有無を実体顕微鏡あるいは一部の症例では腹腔鏡下に観察した.約半数の症例で肉眼診断が困難であったが,メチレンブルーにより漿膜に浸潤した癌結節は濃染した小結節として認識され,癌の浸潤がない漿膜は濃染されることなく平滑であり浸潤陰性と判定された.切除標本が得られた対象24例中22例で漿膜浸潤の有無について実体顕微鏡診断と組織診断の結果は一致していた.本法は組織診断を待つことなく短時間(術中)に精度の高い漿膜浸潤診断が可能であり臨床的に有用であると思われた.
  • 術前・術中情報による分類
    畝村 泰樹, 藤岡 秀一, 今井 貴, 佐伯 知行, 田辺 義明, 鈴木 旦麿, 三澤 健之, 小林 進, 山崎 洋次
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2032-2038
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    大腸癌単発肝転移切除33例の術前・術中情報による転移巣の分類を試み,分類別の治療成績から肝転移巣の進展形式を考案した.腫瘍長径3cm未満を小結節型, 3cm以上を大結節型,腫瘍周辺での増殖形態が認められるものを結節周囲増殖型と定義すると,以下の3型に分類された. 1)小結節型(S): 3生率,5年率ともに38%であった,同時性Sの残肝再発は高率であったが,異時性Sの転帰は良好であった. 2)大結節型(L): 3生率66%, 5生率54%と比較的良好であり,転移時期の違いによる転帰の差を認めなかった.平均腫瘍径は4.2±1.7cmであった. 3)大結節周囲増殖型(PL): 1生率33%, 2再率0%と極めて不良であった.平均腫瘍径は9.2±3.5cmで, LはSの病期の進んだ状態と考えられた.本分類は単発肝転移巣の進展形式を術前・術中に簡便に予測することを可能とし,治療上有用な情報をもたらすものと考える.
  • 廣瀬 昌博, 渡部 祐司, 河内 寛治, 難波 康男, 山本 吉浩, 藤原 恒弘
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2039-2043
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    愛媛県の中山間地域に位置する町立野村病院(以下,当院)も1992年9月に第1例目の腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下, LC) を施行した.最近9年間の当院における胆石症および胆嚢炎症例82例(同期間の全身麻酔下手術症例320例)に対する手術法を検討し,以下のような結果・結論を得た.
    (1)中山間地域に位置する当院でもLCは近年増加傾向にあり,全手術症例からみてその占める割合が大きい.また, 94年以降は予定手術に対しては全例, 96年以降胆嚢炎症例にもドレナージ後可能な限りLCを施行しており,胆石症・胆嚢炎症例に対する標準術式として定着している.
    (2)当院のような施設では,急性胆嚢炎症例は高齢者に多く,しかも全身状態が悪いため,このような症例に対して,あえて危険を冒すことなくPTGBDやPTGBAなどのドレナージ後にLCを行うのが望ましいと思われる.
  • 藤岡 秀一, 吉田 和彦, 柳澤 曉, 稲垣 芳則, 畝村 泰樹, 鈴木 旦麿, 三澤 健之, 小林 進, 田辺 義明, 青木 照明, 山崎 ...
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2044-2050
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    浸潤性膵管癌切除例43例を用いて, p53蛋白発現と細胞増殖活性について免疫組織染色を行い,臨床病理学的因子および予後との関連について検討した. 1次抗体には抗p53抗体(DO-7),抗Ki-67抗体(MIB-1)を用いた.単変量解析では膵断端浸潤(pw), p53蛋白発現の2因子が有意に予後に影響したが,多変量解析ではいずれの因子も有意ではなかった.臨床病理学的因子ではp53蛋白発現は腫瘍径(ts),動脈浸潤(a),静脈浸潤(v),膵内神経浸潤(ne),リンパ節転移,膵剥離面浸潤(ew), pwと有意に相関し(p<0.05),細胞増殖活性とも有意に相関した(p=0.039).再発形式では, p53蛋白発現は術後肝転移率と有意に相関した(p=0.041).本研究より浸潤性膵管癌におけるp53蛋白発現は予後因子としての意義は少ないが,局所進展,細胞増殖活性および肝転移との関連が示唆された.
  • 大西 博信, 谷村 弘, 山上 裕機
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2051-2056
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    甲状腺未分化癌の予後は極めて不良であり,術後に画一的な化学療法や放射線療法を併用しても臨床効果はほとんど期待できない.
    われわれは腫瘍細胞を分離し純度90%にてSDI法を行う抗癌剤感受性試験の結果に従った化学療法を行った.症例は73歳の女性,主訴は右頸部腫瘤で,術前生検により甲状腺未分化癌と診断し,甲状腺全摘術とリンパ節郭清を行い,再発時には気管および喉頭合併切除による拡大手術を施行した.切除癌組織から3種類の不連続密度勾配法で腫瘍細胞を90%に純化しSDI法を施行した結果, CDDPとADMに感受性を示したので, 1日目にCDDP 60mg/m2, 4日目にADM 40mg/m2の全身投与を1クールとし, 1月ごとに4回施行したところ,初回手術後11カ月生存した.
    すなわち, SDI法の結果に基づいた化学療法は甲状腺未分化癌の治療成績を向上させる可能性がある.
  • 丸橋 繁, 中野 芳明, 門田 卓士, 衣田 誠克, 岡本 茂, 岡村 純
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2057-2061
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    乳腺線維腺腫は乳腺良性腫瘍のなかではよくみられるものであり,乳癌との鑑別が必要である.線維腺腫の多くは触診および画像により診断可能で,一般に癌化しないと考えられているため切除せずに経過観察することが多い.しかし,非常に稀ではあるが線維腺腫内乳癌が国内外で報告されている.今回われわれは,国内報告20例目にあたる,乳腺線維腺腫内に発生した微小乳癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は43歳,女性.左乳房腫瘤に気づき当院受診.生検を行った.術前診断は線維腺腫であったが,病理組織学的検索により,その一部に浸潤性乳管癌を伴った線維腺腫であることがわかった.
  • 岩下 幸雄, 中島 公洋, 平野 誠太郎, 安田 光宏, 蓮田 慶太郎, 穴井 秀明
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2062-2065
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した乳癌の1例を経験したので報告する.症例は43歳の女性.背部痛を主訴に前医を受診し,右乳房腫瘤を指摘され平成10年4月30日当科を受診.右乳房に5×4cmの腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診でClass Vと診断された.術前諸検査の結果,広範囲骨転移および頭蓋内転移を伴う進行乳癌であった.手術は胸筋温存乳房切除術(児玉法)を施行した.病理検査では充実腺管癌であり, Ia, Ib, Icリンパ節転移を認めた.術後全身化学療法が奏効し,現在外来通院中である.
    von Recklinghausen病には非上皮性悪性腫瘍の合併はしばしば認められるが,上皮性悪性腫瘍の合併は少なく,特に乳癌との合併は本邦では31例が報告されているのみである.皮膚病変のため,自覚的にも他覚的にも発見が遅れる傾向があり,特に体表から触知される乳癌に関しては注意深い診察と経過観察が望まれる.
  • 谷口 雄司, 中村 広繁, 石黒 清介, 前田 啓之, 牧原 一彦, 応儀 成二
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2066-2068
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性. 1992年3月に左乳癌に対して拡大乳房切除術を施行した. t3n0m0, Stage IIであった. 1995年3月に左胸壁再発に対し,左第1, 2肋骨および胸骨部分切除術を施行した.5.5×5cmの胸壁欠損を広背筋皮弁で再建した. 1997年4月に胸骨下縁の左縁に再々発をきたした.同年7月に左第4, 5, 6, 7肋骨および胸骨部分切除術を施行した. 7.5×6.5cmの胸壁欠損を二枚重ねにしたDexon mesh®を縫着してからナイロン糸を格子状にかけて固定し,さらに,右腹直筋弁を充填して再建した.現在外来通院中であるが,呼吸機能も正常範囲内に保たれており,日常生活にも支障がない.
  • 田中 一成, 杉下 岳夫, 児玉 俊
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2069-2071
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    76歳女性, 26年前に左乳癌に対して定型的乳房切除術を受けている.術後25年で前胸部腫瘤が発見され,画像診断により胸骨腫瘍と判明した.生検が行われ,病理学的に乳癌と同様の組織像をもつ腺癌であった.同時に胃癌も発見され,幽門側胃切除が行われた.胸骨転移に対しては放射線治療および化学内分泌療法が行われた. 5年後の現在健在中である.
  • 和田 英俊, 吉田 雅行, 小林 利彦, 礒垣 淳, 常泉 道子, 数井 暉久
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2072-2076
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性. 1987年9月30日左乳癌(T1N0M0, stage I)にて左胸筋温存乳房切除術(Bt+Ax)を他院で施行された. 1995年8月に左前胸部の腫瘤を自覚し, 1995年12月に当科を受診した.遠隔転移や縦隔浸潤はなく胸壁の局所再発と診断し, 1996年1月30日に胸壁切除・再建術を施行し治癒切除が得られた.切除標本は原発巣と同様の粘液癌でestrogen receptor, progesterone receptorとも陽性であった.術後に補助化学療法とホルモン療法を施行した.現在,術後3年経過しているが,再発の徴候を認めていない.今回,孤立結節型の胸壁の局所再発で初回手術後健存期間が8年の症例に対して胸壁切除術を施行し良好な結果を得た.男子乳癌においても,女子と同様に遠隔転移や縦隔浸潤のない胸壁再発に対しては積極的な手術療法を行うことで予後の改善が得られるものと思われた.
  • 前田 正幸, 松崎 泰憲, 枝川 正雄, 清水 哲哉, 鬼塚 敏男, 浅田 祐士郎
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2077-2081
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    われわれは39歳女性の左胸壁に発生した稀な胸壁発生Desmoid腫瘍の1例を経験した.患者は検診における胸部X線写真上の異常陰影と左肩の痛みを主訴に当科を受診した.術前の胸部CTおよびMRIでは左肺尖部の胸壁発生の腫瘤であった.胸腔鏡下に腫瘤切除術を行った.腫瘤は第1肋間の肋間筋から発生しており,第1肋骨を含め腫瘤を切除した.腫瘤の大きさは4×3×2cmで,病理組織像はDesmoid腫瘍であった.術後1年5カ月目に胸部MRIにて局所再発を認めたため放射線照射を施行した.その後, 1年の現在再発腫瘍のサイズは変化なく,現在外来にて経過観察中である.
  • 中村 透, 岡安 健至, 李 宗雨, 大原 正範, 細川 正夫, 加藤 紘之
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2082-2085
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.左上葉原発の肺癌で上葉切除,縦隔郭清(R2a)を受け,退院後, 1~2カ月に1回の外来受診を続けていた.術1年2カ月後,突然,咳漱,呼吸困難,胸部圧迫感を自覚し,胸部X線写真で左胸水貯留を指摘され入院.胸部CTでは内部均一,胸水穿刺液は暗赤色の古い血性,細胞診はClass Iであった. Expanding Hematomaを疑い開胸手術を行った.古い血性の胸水を約2,000ml認めたが,出血点は確認できなかった.肥厚した胸膜には炎症性の巨細胞反応とともに,ヘモジデリンを貪食した組織球浸潤が認められた.再開胸術後11カ月を経た現在,胸部X線写真,胸部CT検査で異常所見はない.
    Expanding Hematomaは開胸手術,人工気胸術の既往の患者にごく稀に発生するが,長期間放置すると慢性膿胸,器質化膿胸に移行すると想定されている.本例は亜急性期に症状を呈したため,迅速な対応ができた症例と考えられたので報告した.
  • 篠原 寿彦, 三森 教雄, 野尻 卓也, 朝倉 潤, 土肥 直樹, 三好 勲, 山崎 洋次
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2086-2090
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    日常の臨床において血気胸を認め胸腔ドレナージを施行する症例は少なくない.血気胸の誘因としては,胸部外傷や自然血気胸,胸膜炎などが考えられる.いずれにせよ血気胸に対する基本的な治療は,輸液,酸素投与,および胸腔ドレナージである.胸腔ドレナージは 1) 胸腔内圧減少による循環動態の改善, 2) 肺内シャントの減少および肺コンプライアンスの増加による低酸素血症の改善, 3) 血腫除去による拘束性障害の改善, 4) air leakや胸腔内出血量を観察するmonitering system等を目的とする.一方,その合併症としては,肋間動脈,内胸動脈等の損傷による出血や,肺実質損傷,再膨張性肺水腫が挙げられる.
    われわれは,自然血気胸に対して胸腔ドレナージを施行した直後, shockに陥り緊急手術を要した2症例を経験したので自然血気胸に対する胸腔ドレナージの盲点について若干の文献的考察を含めて検討する.
  • 淺野 博, 金子 公一, 森田 理一郎, 菅 理晴, 小山 勇, 尾本 良三
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2091-2094
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    腎移植後の悪性腫瘍の発生は長期間の免疫抑制剤投与のため頻度の高いことが知られているが,肺癌は比較的まれである.今回,われわれは生体腎移植後6年目に発見された肺扁平上皮癌の1切除例を経験したので報告する.
    症例は58歳の女性で,妊娠中毒症による腎不全のため9年間の血液透析の後, 1990年4月生体腎移植術を受け,免疫抑制剤としてアザチオプリンとシクロスポリンが投与されていた. 1996年12月左肺癌が発見され,左肺上葉切除,縦隔リンパ節郭清術が行われた.組織学的に扁平上皮癌で,病理病期T2 N2 M0 stage IIIAで,術後合併症なく退院した.
  • 加瀬 昌弘, 蔵田 英志, 坂本 和裕, 孟 真
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2095-2099
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性. 5年前に自覚した前胸部の腫瘤が次第に増大するため来院した.腫瘤は胸骨柄に発生し9×7cm大で拍動を伴っていた.頸部リンパ節生検でneuro-endocrine cell tumorの疑いとの診断を得て手術した.手術は両側鎖骨頭と左右の第1~2肋骨を合併切除する胸骨の上半部切除であり, 12×9cmの胸郭欠損部には特別な補填は行わなかったが順調に経過した.最終病理診断で甲状腺癌からの転移と判明し甲状腺全摘と頸部郭清術を追加した.
  • 特異なMRI画像所見を呈した1例
    坂本 和裕, 加瀬 昌弘, 孟 真, 蔵田 英志
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2100-2103
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    食道嚢胞は縦隔に発生する稀な先天性嚢胞である.今回,胸腔鏡下に切除した食道嚢胞の1例を経験したので報告する.
    症例は36歳,男性.心電図異常にて当院入院時,胸部X線異常影を指摘された.胸部CT検査では左後縦隔に4.8×3.2cmの腫瘤を認め,胸部MRI検査ではT1強調画像でiso intensity, T2強調画像でlow~iso intensityを呈した.神経原性腫瘍の疑いで胸腔鏡下腫瘍切除を施行した.腫瘍の大きさは6.0×4.0×3.5cmで表面平滑,嚢胞壁は厚さ0.5~2mm,内腔は単房性で淡褐色泥状の内容物を有した.病理学的に嚢胞壁内面は重層扁平上皮に覆われ, 2層の平滑筋層を有し,食道嚢胞と診断した.
  • 星野 豊, 寺島 信也, 後藤 満一, 猪又 義光, 井上 仁
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2104-2108
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    腹腔内出血をきたした,稀な胃stromal tumorの1例を経験したので報告する.症例は60歳,女性.主訴は不正性器出血.婦人科的疾患はなく,腹部超音波にて左上腹部に直径約10cmの腫瘍を認めた.胃壁外性発育型の粘膜下腫瘍と診断,腫瘍切除術を施行した.病理診断は胃平滑筋肉腫であった.標本の免疫染色を施行したところ,筋原性マーカーのα-SMA, desminが陰性,神経原性マーカーのS-100, NSEが弱陽性, CD34が強陽性であった.その結果により新分類上stromal tumorと診断された.本症例のstromal tumorにより不正性器出血として発症,腹膜播種にて死亡に至った経過を文献的に考察した.
  • 羽田野 和彦, 新宮 浩, 河部 英明, 中山 博司
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2109-2113
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.既往歴として幽門側胃切除後,糖尿病の合併がある.胆嚢小腸瘻,肝膿瘍を併発する急性胆嚢炎の治療中,早期乳頭部癌を指摘された.膵頭十二指腸切除術(PD)は過侵襲と判断し,乳頭部切除術(LE)を施行した.切除標本は1.7cm大,露出腫瘤型の腫瘍であった.病理組織学的には高分化型管状腺癌であり,深達度はmであった.術後第21病日に退院し,術後16カ月経過した現在,再発は認めていない.本邦における乳頭部癌のLE施行25例の集計の結果,早期癌13例には再発,癌死例はみられず(平均観察期間17カ月),進行癌では9例中, 6例が癌死し,平均生存期間は25カ月であった.乳頭部腺腫,高齢者,ハイリスクの早期乳頭部癌に対すLEは治療選択肢のひとつであると考えられた.
  • 松岡 孝紀, 野水 整, 片方 直人, 渡辺 文明, 八巻 義雄
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2114-2117
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性. 37年前に胃潰瘍にて幽門側胃切除, Braun吻合を伴ったBillroth II法再建術の既往あり.突然上腹部痛,腹満出現し吐血も見られたため当科に搬送された.上腹部に膨隆と圧痛が見られ,腹部CTにて腸重積と診断し緊急手術を施行した.開腹すると空腸が逆行性にBraun吻合内に重積していたため, Braun吻合を含めた空腸切除術を施行した.術後経過は特に問題なく第16病日に退院した.
    胃切除術後吻合部腸重積は稀な術後合併症であるが,その中でもBraun吻合部に発生したものはさらに稀である.術後1カ月以内に発症するものが殆どであるが,当症例のように10年以上経過した後に突然発症した例も報告されている.診断には内視鏡,胃透視,腹部CT,超音波等が有用であるが,当症例では腹部CT検査にて著明に拡張した小腸の中に層状構造とtarget signが見られ,術前診断に有用であった.
  • 岸本 浩史, 阿部 要一, 安斎 裕, 山田 明, 塚田 一博
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2118-2121
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女性. 30歳で虫垂切徐術, 42歳で胃潰瘍のため胃切開術をうけている. 79歳時にイレウスにて入院の既往があり,この頃から鉄欠乏性貧血,低蛋白血症を認めていた. 1997年9月14日,腹痛,嘔吐を主訴に来院.癒着性イレウスと診断し入院となった,ただちにイレウス管を挿入し腸管の減圧を行ったが,第2病日に腹腔内遊離ガス像を伴った汎発性腹膜炎を発症し,緊急手術を行った.腹腔内の癒着は軽度で,腹腔全体に混濁した腹水を認めた.手拳大の嚢状に拡張した回腸に穿孔を認めたが絞扼はみられず,穿孔部周囲にも癒着は認められなかった.嚢状に拡張した回腸を切除し端端吻合を行った.拡張した腸管には食物が充満しており,粘膜面に地図状ないし輪状の浅い多発潰瘍を認め,その一部が穿孔していた.病理組織学的には,慢性出血性多発性小腸潰瘍と診断され,稀に腸閉塞症および小腸穿孔をきたす疾患と思われるので報告する.
  • 黒川 勝, 平野 誠, 村上 望, 荒能 義彦, 長尾 信, 橘川 弘勝
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2122-2126
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    血管造影が診断に有用であった小腸平滑筋肉腫を先進部とした成人腸重積症の1例を報告する.
    症例は85歳の女性.嘔気・嘔吐を主訴に当院内科を受診した.原因不明のまま経過観察となったが,再度嘔気・嘔吐出現し精査加療目的に当科紹介入院となった.血管造影検査では,遠位の空腸枝の直腸静脈の内腔に近位の空腸枝が走行し,その末梢腫瘍濃染像を認めた.これらの所見により,腫瘍を先進部とした腸重積症と診断した.手術は腫瘍を含む小腸部分切除術を施行した.切除標本では3.0×3.0×1.5cm大の粘膜下腫瘍を認め,その中心に1.3×1.0cm大の潰瘍を認めた.組織学的に平滑筋肉腫と診断された.小腸悪性腫瘍および成人腸重積症は比較的まれな疾患で,術前診断率はきわめて低い.血管造影検査は小腸腫瘍の診断方法としては勿論のこと,成人腸重積症の診断においても有用と思われた.
  • 塩澤 学, 熊本 吉一, 片山 清文, 白石 龍二, 原田 弘秋, 鈴木 喜裕
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2127-2130
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.腸閉塞にて発症し手術施行. Bauhin弁より160cm口側に7×5.5×4cmの腫瘍を先進とする回腸-回腸型の腸重積を認め,小腸切除を行った.病理組織学的にBurkitt型リンパ腫と診断した.化学療法を併用せずに経過観察していたが,術後3カ月目に再発をきたし,化学療法を施行し寛解を得た.
  • 西尾 徹, 渡辺 一晃, 腰塚 浩三, 高野 邦夫, 多田 祐輔
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2131-2134
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫はきわめて稀な疾患で,日常の診療の中で経験することは非常に少ない.われわれは,早期胃癌の入院待機中に下血し,それを契機として小腸の平滑筋肉腫が発見された症例を経験したので報告する.
    症例は47歳男性.平成9年5月初旬より空腹時の心窩部痛を自覚し近医を受診.上部消化管内視鏡検査でIIc型の胃癌を発見され当科に紹介された.入院待機中に下血し, Hb値10.9g/dlの貧血を認めたが,その後下血を認めなかったため待機手術とした.術前検査で右下腹部に腫瘤を認め, CT, Echoなどの所見より胃癌に小腸の平滑筋肉腫を合併し,肉腫より下血したものと診断した.幽門側胃切除術,小腸合併切除術を行ったが,術後20カ月経過した現在も再発なく通院中である.
    本例は下血の原因の特定時に胃,大腸に疾患がある場合でも詳細な現病歴を聴取し,必要により小腸も検索範囲に含めるべきである点で示唆に富んだ症例であると考えられた.
  • 森山 初男, 菊池 暢之, 春木 哲哉, 野口 剛, 菊池 隆一, 内田 雄三
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2135-2138
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃切除後に発症したileosigmoid knotの1例を経験した.症例は69歳,男性,胃癌による胃切除の既往がある(59歳時).強度な腹痛を訴え来院し,既に強度な腹膜刺激症状を伴っていた.腹部X線写真(左側臥位)にて十二指腸,大腸の鏡面像を認め,腹部CTにおいて拡張したS状結腸を認めた.腸管壊死を伴ったイレウスの術前診断で緊急手術を施行した.小腸が約1mにわたり赤色,浮腫状となっており,その小腸は,反時計まわりに軸捻転したS状結腸に包みこまれる形に絞掘されていた. S状結腸を時計まわりに回転すると絞掘は解除されS状結腸,小腸の血行は回復した. S状結腸,小腸ともに切除は行わなかった.経過は順調であり第21病日に退院した.腸管結節症の発症の1つに空腹時の大量な食物摂取があげられている.胃切除後には胃の食物貯留能が低下し一度に大量の食物が腸管に流れ易く,このことが自験例には発症の一因になった可能性が考えられた.
  • 柴田 佳久, 千木良 晴ひこ, 鈴木 正臣, 加藤 岳人, 松尾 康治, 尾上 重巳
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2139-2144
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性. 1980年痔瘻手術時にCrohn病の診断をうけ内科的治療となる.その後腸管病変も増悪し,回腸上行結腸瘻を併発し内科通院治療していた. 1992年に糞尿に気付き栄養療法や在宅IVHを追加されたが, 1997年に水腎症と腎孟腎炎を発症したため内科的治療限界と判断され開腹手術となった.右尿管狭窄と腸管膀胱瘻に対して,尿管ステント・回腸上行結腸切除・瘻孔閉鎖術を施行した.手術後は摂食も良好で, QOLも改善し社会復帰している. Crohn病の増悪により,回腸結腸間の瘻孔に加え腸管膀胱瘻を形成,また高度炎症が後腹膜へおよび尿管狭窄を起こしたと考えられた. Crohn病による腸管膀胱瘻は外科的治療が必要となることが多く, QOLの面から手術時期を決めることが重要である.
  • 宮口 直之, 曽我 浩之, 小島 茂嘉, 瀬野 晋吾
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2145-2148
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    血清CEAが高値を示した高齢者の虫垂粘液嚢胞腺腫の1例を経験した.
    症例は82歳女性.胃癌の術後で経過観察中に血清CEAが高値となり,触診上右下腹部に腫瘤を触れたため精査加療目的で紹介された. CT検査で子宮と盲腸の間に鶏卵大の腫瘤を認め,超音波検査では嚢胞性腫瘤であり,右卵巣嚢腫もしくは胃癌の卵巣転移を疑い手術を施行した.腫瘤は虫垂原発であり,悪性も否定できなかったため回盲部切除術を施行した.病理組織検査の結果,虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.術後,血清CEAは正常化した.
    超音波検査で右下腹部に嚢胞性腫瘤を認めた場合,本疾患も鑑別疾患として念頭に置く必要があると考えられた.
  • 山之内 孝彰, 脇 慎治, 西脇 由朗, 池松 禎人, 内村 正幸
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2149-2153
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.右腹壁の腫脹・疼痛を主訴に来院.来院時,右腹壁に水疱壊死を伴う発赤した領域を認めた.腹部単純X線およびCT検査にて,同部の皮下組織および筋層内にガス像が確認され,ガス壊疽の診断にて切開ドレナージ,デブリドマンを施行した.細菌培養の結果,非クロストリジウム性ガス壊疽であり,抗生物質の投与,高圧酸素療法を施行し救命することが出来た.その後,皮膚欠損部に植皮術を施行したが,後腹膜との瘻孔形成を認めた.大腸の精査を行ったが悪性腫瘍の診断は得られなかった.しかし,瘻孔は閉鎖せず開腹手術を施行したところ,後腹膜に穿通した虫垂癌を認めた.
    原因不明の非クロストリジウム性ガス壊疽には悪性腫瘍,特に結腸癌の合併が多いとされ,免疫力の低下が関与しているといわれている.虫垂癌を合併した症例は稀であり文献的考察を加えて報告した.
  • 松平 秀樹, 久保 寿朗, 奥井 重徳, 西田 貞之, 伊坪 喜八郎, 山崎 洋次
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2154-2157
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.腹部膨満,上腹部痛および発熱を主訴に来院し入院となった.既往に詳細不明であったが2度の腸閉塞に対する手術を施行されていた.術前検査の腹部X線写真, CT,注腸造影などにより横行結腸から下行結腸にいたる巨大結腸とその口側結腸の腸間膜内に腫瘤陰影を認め開腹手術を行った.開腹時,横行結腸から下行結腸は著明に拡張し横行結腸肝彎曲に深い潰瘍病変を触知し同部位を含めた結腸部分切除術を施行した.切除標本の病理検査で潰瘍は非特異的潰瘍の所見のみであり,本症例は何らかの原因で生じた巨大結腸症に隣接して発生した単純性潰瘍であると結論された.患者は術後,大きな問題なく退院し外来にて経過観察中である.単純性潰瘍の発生機序については未だ諸説あり,またわれわれが検索し得た範囲では単純性潰瘍と巨大結腸症の併発例は認められず,本症例は稀な症例であると考え,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 三浦 源太, 藤島 宣彦, 山口 方規
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2158-2161
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性. 1992年3月,イレウス症状の精査で発見された上行結腸の印環細胞癌に対し右半結腸切除術を施行した.術後はCDDP, UFTを中心とした化学療法を行い約6年間の無症状期がつづいた. 1998年10月,黄疸が出現し,精査にて肝十二指腸靭帯近傍の印環細胞癌が証明され大腸印環細胞癌の局所再発と診断した.根治的治療は不可能と判断し,内瘻化による減黄と化学療法を行い良好なQOLを得ている.
  • 西森 英史, 前佛 均, 山口 浩史, 松野 孝, 平田 公一, 小林 謙二
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2162-2166
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.来院時著明な腹部膨満,イレウス所見を認め,直腸指診にて弾性硬の腫瘤を触知,腹圧を加えると腫瘤の肛門側への移動を認め,直腸腫瘍による腸重積を疑った.注腸造影検査後に大量の便排出を得られたため腸重積状態は解除された. CFにて, S状結腸の2型進行癌の他に, 7個の隆起性病変を確認でき, 3個については生検で癌と診断された.各々の病変に対し適切な切除を行うため,術中CFを用いて随時判断した.低位前方切除術および横行結腸と上行結腸の腺腫に対しては局所切除を施行した.病理組織検査では4病変は高分化腺癌と診断され,それぞれm, sm, mp, ssと異なる深達度であることが確認された.他の病変は中等度から顕著な細胞異型を示すtubularあるいはtubulo-villous adenomaであった.本症例の外科治療として,大腸多発癌における根治性と術後QOLのバランスを考慮した適切な術式とはどうあるべきか,という問題を考えさせられた.なお術中CFの併用が過不足のない術式決定に有用と考えられた.
  • 篠原 剛, 寺崎 正起, 久納 孝夫, 岡本 恭和, 坂本 英至, 神谷 諭, 小林 聡, 浅羽 雄太郎
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2167-2170
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性. 1985年(68歳時),上行結腸癌および肝転移の診断にて,右半結腸切除,肝右葉切除を受けている.その後,左乳癌(1987年),下行結腸癌(1989年),横行結腸癌(1994年),胃癌(1997年)に対しそれぞれ結腸部分切除術,胸筋合併乳房切除術,幽門側胃切除術が施行された.本症例は1)患者の母親が直腸癌で死亡していること, 2)同胞二人が直腸癌で死亡していること, 3)長男が脳腫瘍および胃癌にて手術を受けていることより遺伝性非ポリポーシス大腸癌(hereditary non-polyposis colorectal cancer: HNPCC)の1症例であると考えられた.
  • 河原 秀次郎, 平井 勝也, 青木 照明, 黒田 陽久, 鈴木 俊雅, 武内 考介
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2171-2173
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性. 1992年11月19日S状結腸癌のため当科で手術を施行した.その後外来通院していたが,異時性孤立性脾転移を生じたため1994年6月12日脾摘術を施行した.再手術後経口抗癌剤を用いた外来治療を行っていたが,多発性肝転移再発による肝不全のため再手術後15カ月目に永眠された.大腸癌脾転移は臨床上極めて稀な疾患であり,大腸癌初回手術後1年以上経過し,脾にのみ転移が認められた異時性孤立性脾転移症例は比較的予後が良好とされている.しかし自験例のように再手術後早期に肝転移再発が生じる症例もあるため,脾摘術は有効な治療法ではあるが,脾転移巣の早期発見が予後の向上に重要と考えられ,局所再発,肝転移,肺転移だけでなく脾転移の存在も念頭に置いた外来followが必要である.
  • 中山 善文, 日暮 愛一郎, 永田 直幹, 伊藤 英明
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2174-2178
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    HAM (HTLV-I関連脊髄症)はHTLV-I感染によって起こる慢性脊髄性対麻痺を示す疾患である.われわれは, HAMの患者において,下血を契機に注腸造影と大腸内視鏡によって診断され,保存的治療によって治癒した直腸宿便性潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は66歳,女性. 58歳よりHAMを発症,両下肢痙性麻痺,神経因性膀胱となり,現在加療中である.また,この頃より便秘がひどくなった.平成9年1月6日より,排便時暗赤色の下血を認め,精査のため当科外来受診となった.大腸内視鏡検査,注腸造影から,病変は上部直腸左側壁に約3cm径の深い潰瘍性病変として認められた.止血剤,抗生物質,緩下剤などの投与により症状が改善し,その後の検査で,この病変が瘢痕を残して治癒していたので,宿便による圧挫性潰瘍が直腸間膜に穿通し,深い潰瘍性病変を形成したものと考えられた.
  • 平尾 隆文, 今本 治彦, 山崎 恵司, 福永 睦, 菅 和臣, 高塚 雄一
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2179-2182
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃癌のSchnitzler転移による直腸狭窄は,従来,姑息的な人工肛門造設が余儀なく施行されていた.今回,われわれは,同疾患にexpandable metallic stent (EMS)を留置した症例を経験したので報告する.
    症例は64歳女性,胃癌にて手術を施行し,外来にて経過観察中,腹部膨満感,全身倦怠感の増悪にて再入院となった.直腸狭窄による腸閉塞が疑われ,直腸造影にて直腸RS (直腸S状結腸移行部)に狭窄を認めたため,術後1年4カ月後に同部位にEMSを留置した.その後症状は,徐々に軽快し食事摂取が可能となり,退院が可能となった.この治療方法は,手技も比較的容易であり, QOLの改善に非常に有用な方法と思われた.
  • 加川 隆三郎, 斎藤 徹, 宮岡 哲郎, 南 亮, 奥村 亮介
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2183-2188
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    痔瘻癌は,複雑痔瘻を背景とする癌であり,骨盤内に複雑に分岐する瘻管の一部に発生した癌を診断するのは極めて困難である.今回,典型的な痔瘻癌の症例に術前に各種の画像診断を行い, MRIで痔瘻癌のうち粘液産生の強いものに特徴的と思われる所見を得た. T2強調画像では,病変が顆粒状の強い高信号域の集合として描出された.痔瘻癌は粘液癌が多く,この所見は痔瘻癌のなかで粘液産生の強いものに観察される粘液湖の存在を示していると考えられ, T2強調画像は痔瘻癌の複雑痔瘻との鑑別診断に有用と考えられた.また,術後の骨盤内再発の診断にもMRIのT2強調画像が有用と考えられた. T1強調画像では,本来脂肪組織の高信号域であるべき部位に病変部が低信号域として描出され,骨盤内を複雑に走行する瘻管の同定も可能であった. T1強調画像では,痔瘻癌の病変の広がりを立体的に把握しやすく,手術術式の決定に有用と考えられた.
  • 小島 正幸, 谷沢 健太郎, 佐貫 潤一, 佐藤 宗勝, 奥村 稔, 高橋 敦
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2189-2192
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    当初複雑痔瘻と診断し治療した管外型の肛門管癌を経験した.症例は49歳,男性. 1995年6月2年来の肛門周囲からの排膿,出血を主訴に当科外来受診.馬蹄型の坐骨直腸窩膿瘍の診断で,切開排膿術を施行. 2カ月後複雑性痔瘻の診断で根治手術を施行. 1997年8月頃より瘢痕創から出血を認め, 10月31日外来を受診.肛門左側の皮膚に潰瘍を認め,また左鼠径部にリンパ節を触知した.管外型の肛門管癌を疑い生検を施行し,腺癌と診断. 12月11日腹会陰式直腸切断術および左浅鼠径リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には粘液腺癌で鼠径部のリンパ節転移を認めた.肛門管癌の初発症状は痔核関連疾患に類似しており,見逃さないためにはすべての症例に組織診断が必要である.本症例も初回治療時,組織診断を施行していればすでに癌が存在していた場合診断できたはずである.組織診断の重要性を改めて認識するとともに日常診療で注意すべき疾患であるので報告する.
  • 山本 達人, 的場 勝弘, 佐藤 仁俊, 都志見 睦生, 安藤 静一郎, 都志見 久令男
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2193-2196
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    十二指腸温存膵頭切除5年後に胃全摘術を施行した胃癌の1例を経験したので報告する.
    症例は, 52歳男性. 1993年3月慢性膵炎に対して,十二指腸温存膵頭切除術を受け社会復帰していた. 1998年5月胸焼けが出現し,近医を受診,胃癌と診断され手術目的で紹介となった.胃内視鏡,胃透視で4型胃癌を確認し,胃全摘術を行い,ρ-Roux-en-Y法で再建した.病理組織は, sig, ss, INFγ, ly0, v0, ow (-), aw (-), n1, stage II,根治度Aであった.現在再発なく,外来にて経過観察中である.今後,臓器機能温存手術の増加が予想されるが,温存臓器に対するfollow upと再手術に際しては根治性と温存機能の損失とのバランスを考慮した術式の選択が重要であると思われた.
  • 林部 章, 鬼頭 秀樹, 阪本 一次, 十倉 寛治, 浅田 健蔵, 竹林 淳
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2197-2201
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    われわれは,腫瘤形成性膵炎の4例を経験したので,うち2症例を供覧し,若干の考察を加えて報告する.症例1は, 54歳の男性で閉塞性黄疸を伴う膵頭部癌の疑いにて入院した.腹部US・EUS・ERCPで特徴的な画像を認め,腫瘤形成性膵炎と診断しえた.症例2は, 53歳の女性で,膵腫瘍の疑いにて入院した. EUS・ERCPで腫瘤形成性膵炎と診断した.当科で経験した4例について,これらの特徴をふまえたうえで検討したところ,最も診断に有用であったのは, ERCPであり,次にUS・EUSであった. CT・血管造影で診断がやや困難であった理由として, CTでは病変と周囲膵の濃染の程度を客観的に評価することが困難であり,血管造影はhypovascular (膵癌)とisovascular (腫瘤形成性膵炎)の鑑別にやや不向きであるためと考えられた.
  • 野口 洋文, 堀見 忠司, 岡林 孝弘, 永野 克二, 小高 雅人, 大朏 祐治
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2202-2206
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃粘膜下腫瘍との鑑別に苦慮した膵腺房細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳女性.心窩部痛を主訴として来院した.触診にて上腹部に可動性のある腫瘤を触知した.腹部超音波検査にて巨大な腫瘤像を認め,仰臥位にて脾静脈,門脈の圧排像を認めたが,坐位にて圧排が改善されていた.上部消化管造影検査・内視鏡検査にて幽門側後壁より壁外性の圧排像を認め,中心に潰瘍を伴っていた.腹部CT検査では高・低吸収域の混在する腫瘤像を認めた.触診での可動性,超音波検査での体位による脾静脈,門脈の圧排像の変化より,胃原発の粘膜下腫瘍を疑い,手術を施行した.手術時,腫瘍は横行結腸および膵頭部に浸潤していると思われたため膵頭十二指腸切除術および横行結腸部分切除を施行した.標本割面より膵頭部より発生した腫瘍であったが,主膵管,膵内胆管は正常であった.病理組織学的所見より膵頭部に発生した膵腺房細胞癌と診断された.
  • 佐々木 秀章
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2207-2211
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷による脾損傷の保存的療法中に脾内仮性動脈瘤を生じた症例を報告する.
    33歳女性,交通事故にて搬送,肝外側区損傷(IIIa)と脾損傷(IIIa)を認めた.保存的療法で安定した状態であったが経過観察のため施行した第9病日のCTで,脾内にやや造影効果の強い領域があり,超音波検査では低エコーレベルの嚢胞状の領域として描出,第16病日にはdynamic CT,超音波検査で増大した血栓を伴った動脈瘤と確認された.第23病日に動脈塞栓術(TAE)を施行,その後問題なく経過しているが約10カ月後もCTで造影されず低エコーレベルの小領域が脾内に認められた.
    脾内仮性動脈瘤は遅発性脾破裂の一因といわれている.脾損傷で保存的療法や脾温存手術を選択した場合,計画的な画像診断による経過観察で破裂前に発見治療することが望まれる.
  • 永田 浩一, 廣田 正樹, 加藤 博之, 芳賀 駿介, 河内 保之, 梶原 哲郎
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2212-2217
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜欠損部に生じた内ヘルニアによる腸閉塞は稀であり,腹腔鏡下に手術された症例は検索した限りにおいて報告されていない.今回,われわれは腹腔鏡下手術にて診断,治療した子宮広間膜裂孔ヘルニアの1症例を経験したので報告する.
    症例は73歳女性.保存的治療で軽快しない癒着性腸閉塞の診断で,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を検索したところ,右子宮広間膜欠損部に腹側から背側に,終末回腸から約1mの部位の回腸が約15cm嵌入し内ヘルニアを発症していた.嵌入していた回腸は赤紫色であったが,整腹後色調が回復したため腸管切除は行わず,裂孔を閉鎖し手術を終了した.術後経過は良好であった.
    術前診断が難しく嵌入腸管の血行不良のため腸切除となることが多い本疾患において,近年適応が拡大されつつある腹腔鏡下手術は診断および治療に優れた方法であると考えられる.
  • 佐藤 啓宏, 池谷 俊郎, 大和田 進, 森下 靖雄
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2218-2222
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    小腸腸間膜脂肪織炎は腸間膜脂肪織の非特異性炎症をきたす稀な疾患で,鑑別と治療法の確立がなされていない.イレウス症状を呈した小腸腸間膜脂肪織炎に対して,腹腔鏡補助下手術例を経験したので報告する.患者は78歳,男性.発熱,腹痛,嘔吐を主訴に来院,腸閉塞の診断で入院した.イレウスチューブを挿入し減圧を行った.小腸造影で小腸の一部に限局性狭窄像をみた.腹部CT検査で小腸壁は全周性浮腫状に肥厚し,その近傍に造影される低吸収域腫瘤をみた.手術は腹腔鏡補助下に行った. Treitzより1m肛門側の小腸は奨膜が約10cmにわたり浮腫状,まだら状に発赤していた.同部を栄養する腸間膜は黄白色で硬かった.小腸腸間膜脂肪織炎と診断し, 6cmの左傍腹直筋小切開をおき,病巣部を含め小腸20cmを切除した.病理組織所見は,小腸粘膜は径1cm以下の限局性小びらんが多発し,腸間膜脂肪織は出血壊死と肉芽性変化を示していた.
  • 若原 正幸, 種村 廣巳, 大下 裕夫
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2223-2228
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    術前診断に難渋した骨盤内後腹膜神経鞘腫の2例を経験した.症例1は56歳男性.頻尿を主訴に受診し, CTにて巨大後腹謄腫瘍を指摘され,腫瘍全摘出術を施行した.仙骨前面の後腹膜腔より発生しており, 21×12×6.5cm, 1,180gで,比較的厚い被膜に被われた一部嚢胞変性を伴う弾性硬の腫瘍であった.免疫染色にてS-100蛋白が陽性Antoni-A型, Antoni-B型の組織像を示す神経鞘腫であった.症例2は73歳男性.肛門痛にて受診し,大腸内視鏡検査にて肛門癌を, CT, MRI検査にて骨盤内腫瘍を指摘された.腹会陰式直腸切除術と骨盤内腫瘍全摘出術を施行した.病理組織診断で骨盤内腫瘍はAntoni-A型とB型の混在する神経鞘腫であった.神経鞘腫は,術前診断が困難な場合が多く,また腫瘍が残存したりすると,術後に悪性化や転移を起こしたとの報告もあり,完全摘出を心がけるべきであると思われた.
  • 長島 由紀子, 上野 富雄, 林 弘人, 丹黒 章, 岡 正朗
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2229-2232
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.主訴は左腰背部無痛性腫瘤. 4年前にEhlers-Danlos症候群と診断されている.術前検査により,左上腰三角をヘルニア門とし,結腸をヘルニア内容とする上腰ヘルニアと診断した.
    手術では,ヘルニア門を形成している組織が脆弱であったため,直接的な縫合閉鎖は不適切と判断し, Marlex Meshを2層に置き,ヘルニア門を閉鎖した.
    腰部には,解剖学的抵抗減弱部位として,上腰三角と下腰三角があるが,これらの部位にヘルニアが発生することは極めて稀である. Ehlers-Danlos症候群は,皮膚,関節の異常な過伸展性を特徴とする稀な症候群である.今回われわれは, Ehlers-Danlos症候群に,腰ヘルニアを合併した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 倉地 清隆, 星屋 泰則, 小原 誠, 綿引 洋一, 小坂 昭夫
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2233-2237
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    大腸・腎同時性重複癌の2例を経験したので報告する.症例1は65歳の男性.背部痛を主訴に近医受診し,腹部超音波検査で肝多発腫瘍と左腎腫瘍を指摘され当院紹介入院となった.入院後の検査でS状結腸癌多発肝転移と左腎腫瘍と診断し,高位前方切除術と左腎摘出術を施行した.病理組織学的所見はS状結腸癌肝転移と左腎細胞癌であった.術後化学療法を施行したが8カ月後に死亡した.
    症例2は74歳の女性.検診で便潜血陽性を指摘され,下部消化管検査にて直腸癌と診断した.術前の腹部CT,超音波および血管造影検査から左腎細胞癌の合併と診断し,高位前方切除術と脾・左腎摘出術を施行した.術後1年6カ月間再発なく健在である.
    検診の普及や画像診断の向上,高齢化に伴い重複癌に遭遇する頻度が増加しており,術前診断において見落としのないように注意が必要である.
  • 金 永満, 小林 研二, 三嶋 秀行, 吉川 宣輝
    1999 年 60 巻 8 号 p. 2238-2245
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例1は65歳男性.同時性食道(Im, sm, ly1, v0, n2)・胃(体下部, sm, ly1, v1, n0)表在型重複癌に対し,食道亜全摘・胃全摘・脾摘・胆摘・3領域リンパ節郭清術・右半結腸利用胸骨前経路再建術を施行.症例2は56歳男性.食道早期癌(Iu~Ei,全長15cm, sm, ly1, v1, n0)・多発性胃粘膜癌(体上部後壁,体上部大彎,体下部後壁, m, ly0, v0, n0)の同時性重複例に対し,食道亜全摘・3領域リンパ節郭清・胃粘膜切除術・胸骨前経路胃管再建術を施行.同時性食道・胃表在型重複癌の治療方針は,侵襲度の軽減と根治性の調和の点から,内視鏡治療と手術療法の的確な選択が必要となるため,術前診断の重要性が高い.今回われわれは手術療法を行い,胃病変の深達度,局在部位,リンパ節郭清の必要性を考慮して,異なる再建術式を選択した2例を経験したので報告する.
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