日本臨床外科学会雑誌
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無石胆嚢炎による胆嚢穿孔の1例
福島 忠男亀田 久仁郎長田 俊一高橋 徹也高橋 利通
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キーワード: 無石胆嚢炎, 胆嚢穿孔
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2000 年 61 巻 12 号 p. 3326-3329

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抄録

症例は69歳男性. 10日前より心窩部痛があり,近医で投薬を受けていたが,次第に食事摂取困難となり来院した.心窩部から右季肋部に圧痛を認め,血液学的所見では白血球数13850/μml, 血小板数92000/μml, CRP35.5mg/dlと重症感染が示唆された.腹部CTで胆嚢の腫大はなかったが横隔膜下に腹水を認め,胆嚢は肥厚し,胆嚢炎を呈していた.明らかな結石は認められなかった.開腹すると膿性の腹水を多量に認め,胆嚢底部に膿苔があり,穿孔していた.病理組織学的所見では穿孔部付近では胆嚢壁の全層にわたり出血と好中球の浸潤が認められ,穿孔部では胆嚢壁の壊死が認められた.細動脈に動脈硬化が認められた.外来患者に発生する無石胆嚢炎の基礎疾患として動脈硬化の存在が注目されている.動脈硬化による細動脈の閉塞による虚血により無石胆嚢炎がおこるとされる.本症例でも動脈硬化による虚血が原因と考えられた.

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