2000 年 61 巻 3 号 p. 706-709
直腸の放射線性狭窄および癒着が原因で発生した閉塞性大腸炎の1例を報告した.症例は68歳の女性.約2年前に子宮頸癌に対して放射線治療を受け,以後便秘傾向が強くなった.平成10年2月24日下腹部痛を訴え入院し,その2日後には汎発性腹膜炎の所見を呈したため開腹手術を行った.腹膜翻転部より5cm口側の直腸が仙骨前面に癒着しており,その口側に8cmにわたる全周性壊死が存在した.癒着部より肛門側直腸は壁の硬化と狭窄化が認められた.病理組織学的には全層性壊死の所見であり,肛門側の狭窄部には腫瘍性病変はなかった.閉塞性大腸炎の原因のほとんどが大腸癌で,自験例のごとく良性狭窄が原因で発生した例は稀である.