2000 年 61 巻 4 号 p. 862-866
1969年から1998年までに経験した膵損傷27例について検討を行った.日本外傷学会膵損傷分類はI型11例, II型7例, IIIa型6例, IIIb型3例であった.複数の臓器損傷を伴うものが多く22例は2臓器以上の腹腔内臓器損傷を伴っており, 4臓器以上の損傷を認めた4例中3例は死亡例であった.手術方法はドレナージ術8例,膵授動兼膵床ドレナージ術7例,膵尾側切除術6例,膵頭十二指腸切除術5例, Letton & Wilson法1例であった.ドレナージ術を施行した4例に外傷性膵炎を認めた.一方,膵授動兼膵床ドレナージ術を施行した症例では外傷性膵炎を認めたのは1例のみであった.挫滅組織の充分な除去とドレナージを徹底させるための膵授動兼膵床ドレナージ術が重要と考えられた.また,膵管損傷例において膵尾側切除あるいは膵頭十二指腸切除術は重篤な合併症は認められず安全な術式であった.