2000 年 61 巻 4 号 p. 867-872
胃癌を含む3臓器以上の重複癌18例を対象とし,胃癌を中心に他臓器とのthymidylate synthase (TS)発現関係を免疫組織学的に検討した.胃癌の進行度はstage I:9, II:5, III:2, IV:2例で,全臓器癌同時あるいは異時発生はそれぞれ3例であった.胃癌のTS発現は全体では38.9%,他臓器癌との発生時相からは胃癌先行群12.5%,同時発生群37.5%,胃癌後発群50.0%であった.結・直腸癌の併存の多い他臓器癌のTS発現は76.0%であった. pTNM分類で各臓器癌の病期をみると病期の低い群でTSの発現率が低かった.
3臓器癌のすべてを検索できた10症例では3臓器TS(+)は2例, 2臓器TS(+): 5例, 1臓器TS(+): 3例で, 3臓器ともTS(-)例はなかった. 2臓器以上TS(+)の群は1臓器(+)群と比較して予後が悪かった.以上より3重複癌における各臓器癌のTS発現はそれぞれを組み合わせることにより,一層患者の予後予測に役立つと思われた.