日本臨床外科学会雑誌
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背部皮下悪性線維性組織球腫に原発性肺腺癌を合併した1剖検例
朝戸 裕下山 豊田村 明彦坂田 道生橋口 尚子向井 美和子
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2000 年 61 巻 4 号 p. 911-915

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抄録

症例は発熱,脱力感を主訴に来院し,肺炎の診断で入院した91歳の女性.
入院後に右肩甲骨部に弾性硬の皮下腫瘤を触知した.同腫瘤は急速に増大し9cm大で隆起性となった.細胞診診断はclass IV,非上皮性悪性腫瘍疑い.右鎖骨上窩,腋窩に硬い腫瘤を触知し,リンパ節転移を疑った.胸部CT画像にて右肺S6分岐部に腫瘤影を認め肺癌を疑った.高齢を考慮し,全麻下に背部腫瘤切除,鎖骨上窩リンパ節生検と気管支鏡検査を行った.組織学的には背部悪性線維性組織球腫(以下MFH),通常型,リンパ節転移と肺原発の腺癌の診断であった.その後,鎖骨上窩の遺残腫瘍が急速増大した.鎖骨下動脈よりのpirarubicin50mg/body動注治療を2回行ったが無効であった.多発肺転移も出現し,死亡し,剖検が施行された. MFHと癌の重複例は照射療法により誘発されたMFHと,放射線に無関係のMFHとに大別される.本邦の後者の重複例は30例報告されており,文献的に検討したが,本症例は偶然の合併と思われた.

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