日本臨床外科学会雑誌
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シートベルト着用に起因する小腸破裂症例の検討
田口 宏一湊 正意中西 一彰相木 総良
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2000 年 61 巻 5 号 p. 1217-1222

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抄録

平成9年1月から平成11年6月までにシートベルトに起因する小腸破裂の6例を経験した.年齢は7歳から65歳までで,男性2例,女性4例であった.受傷時運転者は2例で,他は助手席に乗車していた.受傷から手術までの時間は3例が即日手術をしたが,他の3例は1から3日を要した.これは受診時腹膜刺激症状がはっきりせず,絶食,点滴等の保存的治療により,症状が軽減し診断が遅れたためであった.破裂部位は5例が空腸で,そのうち2例は腸間膜損傷を合併していた.回腸の1例は,盲腸の漿筋層の裂創を合併していた.手術は全例腸管破裂部の縫合閉鎖とドレナージ術を施行した.全例元気に退院したが, 7歳の症例はイレウスを併発して再手術をした.シートベルトは腹部の外傷の予防には有効ではなく,改良の必要がある.シートベルトを着用した腹部外傷症例は,入院の上慎重な経過観察をして,手術の時期を逸することがないよう注意が必要である.

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