日本臨床外科学会雑誌
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受傷後4日目の手術にて救命し得たIIIb型膵頭部損傷の1例
村田 暁彦遠藤 正章袴田 健一鳴海 俊治西 隆佐々木 睦男
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キーワード: 膵損傷, ハンドル外傷
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2000 年 61 巻 5 号 p. 1271-1274

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抄録

膵損傷は比較的稀な外傷であるが,治療に難渋する事が多く,予後も不良な場合も少なくない.われわれは,受傷4日後に手術を施行し,救命し得たIIIb型膵損傷症例を経験したので報告する.症例は19歳男性,平成9年10月10日,交通外傷で右季肋部を強打.翌日紹介医受診し,腹部CTなどで膵損傷と診断された.保存的加療で症状の増悪がみられ, 10月14日手術目的で当科を紹介された.初診時,上腹部を中心に腹膜刺激症状を認めたため,緊急手術施行.開腹時,少量の漿液性腹水の貯留を認めたが,血管損傷は殆どなく,後腹膜を中心に膵液の貯留と周囲臓器の炎症性癒着を高度に認めた.損傷部位は膵頭部でほぼ全周に縦断され,主膵管も完全に損傷されていた.更に膵頭部・十二指腸の温存は不可能と判断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.経過は良好で術後29日目に退院となる.

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