日本臨床外科学会雑誌
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術前診断しえた多発性早期胆嚢癌の1例
龍沢 泰彦前田 一也清水 淳三川浦 幸光
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2000 年 61 巻 6 号 p. 1552-1557

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抄録

症例は79歳の女性で,発熱,肝機能障害のため当院入院となった.腹部USにて胆嚢底部と頸部に各々27×16mm, 14×9mmの乳頭状の腫瘍を認めた. EUSでは深達度はいずれもpmまでと考えられた.腹部CT上,肝転移・リンパ節転移は認めず,多発性早期胆嚢癌の診断にて手術を施行した.腫瘍は胆嚢腹腔側にあり, T1N0H0P0M(-): Stage Iで, R1のリンパ節郭清を伴う胆嚢摘出術を施行した.肉眼的に胆嚢底部に24×16mmのI型の腫瘍,体部に12×7mmのIIa型の腫瘍を認めた.結石はなかった.組織型は底部がpap, 体部がtub1であり,両者とも深達度はpmであった.またly, v, pnはいずれも認めず,リンパ節転移も認められなかった.術後2年経過した現在,再発の徴候なく外来通院中である.多発性胆嚢癌の報告例は増加傾向にあるが,術前に多発病変および深達度を診断しえたのはわれわれが検索しえた範囲内では自験例のみと考えられた.

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