日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
絞扼性イレウスにて緊急手術を施行した肺癌腹腔内転移の1例
櫻井 照久尾浦 正二吉増 達也中村 恭子松山 健次内藤 泰顯
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 61 巻 8 号 p. 2178-2181

詳細
抄録
症例は69歳,男性.原発性肺癌に対する左上葉切除施行後の2年3カ月目に急激な腹痛が出現し,当院救急受診となった.腹部は全体に膨満し,腹部右側に腫瘤ならびに筋性防御を触知した. CTでは腹部右側に限局した小腸の拡張像を認め,閉塞性イレウスの疑いで緊急開腹手術を施行した.開腹所見では,少量の血性腹水と約30cmの絞扼され壊死に陥った小腸を認めた.また,大網,腸間膜へのリンパ節転移と腹膜播種を疑わせる所見を認めた.イレウスの原因はリンパ節転移により側腹壁へ浸潤固定された大網と腸間膜リンパ節転移により固定された上行結腸との間へ嵌入した回腸の絞扼性内ヘルニアと診断された.腹腔内には原発巣を疑わせる腫瘍は認めなかった.壊死部を含む小腸部分切除術,回腸瘻造設術および大網,腸間膜転移部の生検術を施行した.生検組織は肺癌原発巣と同様の腺癌像であったため,肺癌の腹腔内転移と診断した.術後3カ月の現在,通院加療中である.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top