抄録
症例は67歳の男性で,2008年7月に右開胸開腹食道亜全摘術,3領域郭清術,胸骨後経路頸部胃管吻合術を施行した.術後3日目に腹痛出現し,術後4日目の検査にて胸骨後経路に横行結腸が陥入した内ヘルニアによるイレウスと診断した.術後6日目に緊急開腹手術を施行し内ヘルニアを修復した.術後は経過良好にて再手術後39日目に退院した.現在までに7か月経過も再発の所見はない.食道がん術後にはまれに再建経路を通って内ヘルニアが起こることが知られているがその頻度は極めて少なく,本邦では今症例を含めて報告があるのは8例を数えるのみである.そのうち7例は後縦隔経路に陥入したもので,胸骨後経路に陥入したものは我々の報告が初めてであり,極めてまれな症例であったため報告する.