日本臨床外科学会雑誌
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特発性大腸穿孔の1例
大町 貴弘高橋 直人岩渕 秀一
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2000 年 61 巻 9 号 p. 2396-2400

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抄録

症例は29歳男性,下腹部痛,肛門痛を主訴に前医受診したが,下腹部痛強度のため精査目的に当院紹介となった.既往歴は特になく,外傷等の既往はなかった.
身体所見上,下腹部に強い圧痛と筋性防御を認め,血液検査所見は軽度の炎症所見のみで,胸腹部単純X線写真に異常は認められなかった.腹部CTでS状結腸周囲に遊離ガスを認め,消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急開腹術を行った.術中所見は,S状結腸の腸管膜対側に3cm×4cmほどの菲薄化した腸管壁を認め,この一部が穿孔していた.病理所見は穿孔部の粘膜の嵌入はなく途絶し,筋層は鋭的に断裂していた.穿孔部に肉芽,膿瘍はなく急性炎症像が見られ,組織学的に特発性大腸穿孔と診断した.
本症例は,穿孔部に比べ,筋層の広範囲な欠損を伴っており,筋層断裂と穿孔までの時間経過が示唆され,この点では本邦でも報告が少なく比較的稀な症例と考えられた.

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