2001 年 62 巻 12 号 p. 3068-3072
特発性血小板減少性紫斑病を合併した仙骨前部領域原発の巨大な骨髄脂肪腫の症例を経験した.症例は59歳,男性, 7歳時に特発性血小板減少性紫斑病と診断され,治療のため31年前よりステロイドによる内服加療中であった.腹部腫瘤が増大出血傾向を伴ったため,開腹腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は境界明瞭で,仙骨前面より発生しており,摘出標本の重量は4,614gであった.組織検査では,成熟脂肪織の増生と,その間島嶼状に分布する骨髄細胞成分からなる骨髄脂肪腫であった.骨髄脂肪腫は,骨髄組織と脂肪組織より構成される比較的稀な良性腫瘍で,主に副腎に発生するが,自験例は仙骨前面より発生しており,われわれの検索しえた範囲では本邦報告例としては初めてであり,また腫瘍の大きさも4,614gと骨髄脂肪腫としては,本邦最大であった.幼少期より特発性血小板減少性紫斑病と診断され,長期に及ぶ,副腎皮質ホルモンを内服中であり,腫瘍との関連性も示唆されたため,文献的考察を加え報告する.