抄録
壊死型虚血性大腸炎は稀な疾患であり予後不良であることが多い.今回われわれは肺癌手術翌日に発症した壊死型虚血性大腸炎の1例を経験した.このような症例は極めて稀と思われるためここに報告する.
症例は70歳男性.肺癌 (stage I A) のため左上葉切除術を施行された.翌日より腹痛が出現し次第に増強した.緊急大腸内視鏡検査にて虚血性大腸炎と診断したが,腹膜刺激症状を認めなかったため保存的治療を開始した.しかし,次第に腹膜刺激症状が出現したため発症12時間後に緊急手術を行った.腹腔鏡下に回盲部付近からS状結腸まで広範囲な色調変化が見られ,特に肝彎曲部に全層性のの壊死,白苔の付着が観察された.開腹下に大腸亜全摘術を施行し,回腸人工肛門を造設した.術後は厳重な呼吸循環管理を必要としたが120病日に退院する事ができた.動脈硬化,術前の浣腸,周術期のストレス等が発症に関与した事が推察された.