日本臨床外科学会雑誌
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残胃内分泌細胞癌の1例
唐澤 幸彦坪井 有加杉山 徹出石 邦彦岡野 圭一合田 文則若林 久男臼杵 尚志前場 隆志前田 肇
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キーワード: 残胃, 内分泌細胞癌
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2001 年 62 巻 8 号 p. 1886-1890

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抄録

症例は64歳,男性. 37歳時に十二指腸潰瘍のため幽門側胃切除術の既往を有していた.食物つかえ感,心窩部痛のため上部消化管造影,胃内視鏡検査を施行したところ胃噴門部にほぼ全周性のBorrmann III型腫瘍を認めた.生検でgroup Vと診断され,手術を施行した.総肝動脈,膵頭領域,大動脈周囲のリンパ節が一塊となり,著明に腫大していたため,根治術は不可能と判断し,姑息的な残胃全摘術を施行した.病理組織検査では細胞質に乏しい,小型から中型の核を有する異型細胞が索状,充実性に増殖しており,著明な核分裂像,脈管侵襲像を認めた.腫瘍細胞は好銀顆粒を有し,酵素抗体法でsynaptophisin, chromogranin, gastrinが陽性なことから,内分泌細胞癌と診断された.術後4カ月に多発肝転移を生じ1年で癌死した.胃内分泌細胞癌は稀な疾患であるが,残胃に発生したとする報告は少なく,極めて稀な症例と考えられた.

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