日本臨床外科学会雑誌
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異時性肝転移が急速に増大した直腸肛門部悪性黒色腫の1例
小田 斉中原 千尋植木 敏幸佐田 正之
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2001 年 62 巻 9 号 p. 2246-2250

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抄録

症例は80歳,女性.主訴は肛門出血,脱肛.近医で痔核として保存的治療を受けていたが,肛門部腫瘤を指摘され当院へ紹介入院となった.直腸肛門診と内視鏡検査で歯状線直上に一見すると血栓性痔核を思わせる暗赤色弾性軟の腫瘤あり.生検標本でメラニンを有する悪性細胞を認め, HMB-45免疫染色陽性から悪性黒色腫と診断された.術前画像所見で転移なく,腹会陰式直腸切断術, D2郭清を施行した.摘出標本では歯状線上に3.9×3.2cmと3.7×1.7cmの2カ所の灰白色無茎性隆起型腫瘤を認め,組織学的病期はa1, ly1, v1, n0, Stage IIで根治度Aであった.しかし,術後8カ月に肝転移が出現し短期間で急速な増大をきたし,術後17カ月に死亡した.本疾患は腫瘍発育が著しく速く,進行例に対する有効な集学的治療法は確立されていないため,早期治療が極めて重要であると思われた.

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