日本臨床外科学会雑誌
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両側腎細胞癌術後に甲状腺転移をきたした1例
大村 健史森田 博義関川 敬義
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2002 年 63 巻 1 号 p. 180-184

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抄録

比較的稀な腎細胞癌の甲状腺転移の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性. 1984年に左腎癌にて左腎摘出術を施行され, 1997, 1998年にも右腎癌にて右腎部分切除術を施行されている. 2000年3月のCT,超音波検査にて右甲状腺内腫瘤を指摘され,さらに同年6月に穿刺吸引細胞診で腎細胞癌の転移が強く疑われた. 7月甲状腺右葉切除術を施行し,病理組織学的にも腎細胞癌の転移であることが確認された.計4回の手術材料の病理組織像は,基本的に同一であり,左腎癌を原発とする,異時性の対側腎転移および甲状腺転移と推察された.腎細胞癌の甲状腺転移は,本邦においては自験例を含めて現在まで23例報告がなされているが,左腎原発の症例が多い傾向が見られる.その理由としては,左腎静脈から椎骨静脈叢を介して頸椎まで上行する転移経路の存在が考えられた.

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