抄録
今回Dubin-Johnson症候群に合併した後腹膜平滑筋肉腫の症例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,平成10年9月泌尿器科にて後腹膜腫瘍摘出術を受け,平滑筋肉腫の診断であった.平成12年5月, CT検査で後腹膜に腫瘍の再発を認め胃,膵臓および縦隔に浸潤していた. 8月より黒色便,眩暈を認め,貧血を指摘され入院となった.総ビリルビン3.2mg/dl,直接ビリルビン2.6mg/dlと直接型優位の黄疸を認めた.胃内視鏡検査で胃内に突出する易出血性の腫瘍を認め生検の結果平滑筋肉腫の診断であった.入院後も下血が続いたため手術を施行した.肝臓は黒褐色であったが大きさや形態はほぼ正常であった.後腹膜腫瘍は胃および膵体尾部とともに切除し,縦隔浸潤部も経腹的に切除した.組織学的には平滑筋肉腫と診断された.肝生検では小顆粒状の褐色の色素が肝細胞内に沈着していた.術後は最高総ビリルビン10.2mg/dlと上昇したが漸減し,肝不全の徴候もなく退院となった.