日本臨床外科学会雑誌
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気管腕頭動脈瘻の1例
松倉 規元石 充古川 幸穂岡崎 強桑原 正喜松原 義人
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2002 年 63 巻 10 号 p. 2399-2401

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抄録

気管腕頭動脈瘻は気管切開後のきわめて重篤な合併症である.今回,気管切開後42日目に気管腕頭動脈瘻を発症した症例を経験した.症例は62歳の男性で既往歴に結核性膿胸による右肺摘除,胸郭成形術をうけたことがあり,胸郭変形がみとめられた.外来受診時に意識消失発作から心肺停止をきたした.蘇生を行ったが低酸素脳症による意識障害が遷延し気管切開を行った.気管切開後42日目に体位変換時に気道出血がみられ,出血源を確認するために気管チューブを抜去したところ気切孔より血液の噴出がみられ,ただちに経口挿管しカフを過膨張させることにより止血した.翌日には制御不能の再出血をきたし窒息状態で死亡した.剖検により気管腕頭動脈瘻を確認した.本症例は胸郭変形により気管前壁と腕頭動脈が接しており気管腕頭動脈瘻の危険因子を有していたものと考えられた.このような症例では本症を念頭に置き発症を予防することが必要と考えられた.

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