2002 年 63 巻 10 号 p. 2458-2462
鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄に対して腹腔鏡補助下手術を施行した1例を経験した.症例は51歳,男性.交通事故で上腹部を打撲し救急搬送された.諸検査にて明らかな腹部臓器損傷を認めず,経過観察目的にて入院したが5日後に退院した.退院後徐々に腹痛,腹満感出現し頻回に嘔吐するようになり受傷10日後に再度受診し腸閉塞の診断にて入院となった.イレウス管挿入し保存的に様子を見たが造影にて狭窄の改善が見られなかったため外傷後遅発性小腸狭窄と診断し入院後28日目に腹腔鏡下手術を施行した.腸管の約3cmにわたる管状狭窄と近傍の腸間膜血腫を認めたため同部位を切除した.病理学的には腸管狭窄部にUL-IIの潰瘍と粘膜下層までの炎症性肉芽と線維化を認め,腸間膜には動脈の狭窄と萎縮を認めたため腸間膜損傷による虚血性小腸狭窄と診断した.外傷後遅発性小腸狭窄を疑った場合の診断,治療には腹腔鏡下手術が有用と考えられた.