日本臨床外科学会雑誌
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発症初期にのみ門脈ガス血症を呈した非閉塞性腸管虚血症の1例
阪本 研一福地 貴彦二村 直樹
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2002 年 63 巻 2 号 p. 439-443

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抄録

発症初期にのみ門脈ガス血症を呈した腸壁嚢状気腫を伴う非閉塞性腸管虚血症の1手術例を経験した.症例は69歳の女性.飲酒による酩酊状態で当院に搬送された.入院時の腹部CT検査で肝両葉表層部に樹枝状の肝内門脈ガス像を認め,門脈ガス血症と診断した.入院7時間後の腹部CT検査で門脈ガス像が消失し,腹部所見が比較的軽度であったため経過観察とした.入院翌日に再度腹部CT検査を施行したところ門脈ガス像は認めなかったが,小腸壁内に気腫像を認めたため,腸管壊死を疑い緊急手術を施行した.回腸末端より口側約15cmより約1.5m長にわたる回腸の色調が不良で,一部壊死状となっており,回腸切除術を施行した.上腸間膜動脈の拍動は良好に触知された.切除腸管口側部は広範な粘膜壊死を呈し,肛門部には最深UI-IVの潰瘍が散在していた.腸管壁と腸間膜内の小血管内腔に多発する血栓像を認め,粘膜下層には広範囲にわたり気腫像が認められた.

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