2002 年 63 巻 9 号 p. 2201-2205
回盲部原発の悪性リンパ腫は比較的頻度が少ないとされている.われわれは回腸悪性リンパ腫が原因と思われる腸重積症の1手術例を経験したので報告する.症例は29歳,男性.膜性増殖性糸球体腎炎にて昭和63年に生体腎移植を受けた.今回腹痛を主訴に当科を受診した.触診にて右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,腹部超音波検査にて同部位にtarget signを認め,腹部CT検査で上行結腸に同心円上の壁肥厚を伴う腫瘤形成を認め,回盲部腸重積と診断し,緊急開腹術を施行した.術中,径25mmの粘膜下腫瘍を先進部とする約20cmの回腸嵌入と捻転を認め,用手整復を行うも困難であった.そのため回盲部切除術を施行した.病理診断の結果,びまん性大細胞型B細胞悪性リンパ腫であった.術後経過は良好で24病日に外科治療を終了した.今回われわれは腎移植患者に発症した回腸原発悪性リンパ腫症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.