2003 年 64 巻 1 号 p. 179-183
症例は59歳,男性.心窩部痛で来院した.肝機能検査に異常を認め,総ビリルビン値は8.6mg/dlと上昇していた.超音波検査で膵頭部領域に占拠性病変が指摘され, ERCで下部胆管に隆起性の腫瘍が認められた. EUSで腫瘍内部に腺癌と異なる点状高エコーのびまん性の混在を認めた.血管造影下CTでdelayed enhancementにより腫瘍が描出され膵浸潤が疑われた.下部胆管癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 2.6×1.5×1.5cmの白色調の腫瘍で,組織像では小型の腫瘍細胞がシート状に線維性結合組織を伴い増殖していた.特殊染色と電顕で神経内分泌細胞への分化がみられず,小細胞型未分化癌と診断した.術後4カ月に肝転移,腹腔内リンパ節転移が認められ,急速な腫瘍増大により術後6カ月に死亡した.急速な転帰をきたした胆管未分化癌の1例を報告した.