日本臨床外科学会雑誌
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後腹膜広範囲膿瘍まで進展した穿孔を伴わない輸入脚症候群の1例
青木 毅一肥田 圭介岩谷 岳斎藤 和好
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2003 年 64 巻 1 号 p. 74-78

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抄録

61歳,男性. 3年前の胃全摘術ならびに十年来の糖尿病の既往あり.昼食後の突然の上腹部痛にて搬送され,諸検査で絞扼性イレウスを疑われ緊急手術となった.輸入脚吻合部より数cm肛門側の小腸が絞扼し,十二指腸が著明に拡張した輸入脚症候群の所見であったが,輸入脚に明らかな穿孔,壊死は認めず絞扼解除と十二指腸周囲のドレナージを施行した. 2病日より右側腹部の発赤を認め, 17病日に腹部CT上広範囲の後腹膜膿瘍を認めた.皮膚切開によるドレナージを行うも広範囲の組織欠損をきたし, 169病日に腹直筋皮弁による閉鎖を行った.膿瘍形成の発生機序として,著明な拡張により被薄化した十二指腸壁からの腸液の漏出が疑われた.輸入脚症候群で輸入脚に明らかな穿孔や壊死を認めない場合でも糖尿病などの易感染性を招来するような合併症を有する場合,術後の後腹膜膿瘍の発生も考慮し,頻回の画像検査による早期発見,治療に努めることが大切である.

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