日本臨床外科学会雑誌
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癌と鑑別が困難であった肝内限局型原発性硬化性胆管炎の1例
鳥 正幸仲原 正明黒住 和史今分 茂中尾 量保辻本 正彦
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2003 年 64 巻 10 号 p. 2559-2563

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抄録
症例は63歳,男性.上腹部痛,背部痛,および微熱のため当科に入院した. CT検査にて左葉胆管のび漫性の拡張を認め,超音波検査で拡張胆管の中枢側に腫瘤陰影がとらえられた.血管造影で門脈左枝の狭窄を認めた. ERCPでは肝内胆管の部分的狭窄と嚢腫状拡張を認め,胆汁細胞診はclass IIであった.胆管癌の疑診にて肝左葉切除,右肝管空腸吻合,リンパ節郭清術を施行した.しかし,病理組織学的に悪性所見はなく,胆管周囲には著明な繊維化とリンパ球や形質細胞などの炎症細胞の浸潤を認め,原発性硬化性胆管炎(以下PSC)と診断した. PSCと胆管癌の鑑別は困難であるが,切除により良好な予後がえられることや胆管癌との合併の可能性を考慮すると,限局型PSCでは病巣部の切除が望ましいと考えられた.
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