日本臨床外科学会雑誌
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Stamey手術(膀胱頸部吊り上げ術)後10年目に発生した難治性骨盤内膿瘍の1例
重田 英隆長嶋 孝昌平松 和洋水上 泰延新美 清章
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2003 年 64 巻 11 号 p. 2869-2872

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抄録

Stamey手術後に発生した難治性骨盤内膿瘍を経験したので報告する.症例は57歳,女性.主訴は右鼠径部痛である. 1988年に腹圧性尿失禁に対しStamey手術をうけた. 1998年8月より右鼠径部痛が出現し,当科を受診した.右大腿ヘルニアの診断で手術が施行されたがヘルニア嚢はなく,メッケル憩室が膀胱背部に癒着し,その部に残糸と膿瘍を認めた.憩室切除,残糸摘出,ドレナージ術が施行された. 2000年2月骨盤内膿瘍が再燃した.経皮的膿瘍ドレナージ術が施行され軽快したが,その後も軽快再燃をくりかえしていた. 2001年1月に瘻孔切除術が施行されたが軽快しなかった. retrospectiveにみると初回CTより膿瘍深部に径5×6 mmのリング状石灰化が存在しており,この異物による骨盤内膿瘍を疑った. CTガイド下に経膣的に異物をマーキングし,除去できた.異物はStamey手術で使用された人工血管グラフトであった.以後膿瘍や尿失禁の再発を認めていない.

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