日本臨床外科学会雑誌
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リンパ管シンチグラフィを治療方針決定に応用した食道癌術後乳糜胸の1例
西澤 聡大杉 治司竹村 雅至李 栄柱岸田 哲田中 芳憲
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2003 年 64 巻 12 号 p. 3044-3047

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抄録

食道癌術後乳糜胸の治療方針決定にリンパ管シンチグラフィが有用であった症例を経験した.症例は71歳,男性.平成12年12月4日, Lt食道癌に対し, 3領域リンパ節郭清を含む食道癌根治術を施行した(pT 3, pN 4, pM 0, pStage IVa).術後,胸腔ドレーンよりの排液は100ml/日程度であったが,経口摂取を開始した術7日後に白濁した500mlの胸水がみられ,ズダン染色陽性で乳糜胸と診断した.保存的療法を行ったが約500ml/日の乳糜排出が持続した.術50日後にTechnetium (99mTc) Human Serum Albumin Diethylenetriamine Pentaacetic Acid Injection (以下99mTc-HSAD)によるリンパ管シンチグラフィを行ったところ,胸管本管は描出されたが気管分岐部レベルで胸管側口よりの漏出を認め,胸管の不全断裂または合流枝よりの漏出と診断した.そこで50%ブドウ糖液の胸腔内注入による胸膜癒着療法を2回行ったところ,乳糜漏出は消失した.術93日後の同シンチで胸管の開存と漏出のないことを確認した.

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