日本臨床外科学会雑誌
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S-1・CDDPおよびpaclitaxel腹腔内投与が奏効した腹膜播種陽性スキルス胃癌の1例
加藤 洋介足立 厳村上 望森田 克哉加藤 秀明山田 哲司
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2003 年 64 巻 12 号 p. 3078-3081

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抄録

症例は50歳の女性.上腹部痛にて精査の結果,スキルス胃癌と診断された.診断的腹腔鏡にて高度な腹膜播種陽性と判明したため, 1期的な切除を控え, S-1・CDDPおよびpaclitaxelの腹腔内投与によるcombination chemotherapyを施行した. S-1は80mg/bodyを3週間内服し, CDDPはS-1内服から8日目に60mg/m2を静注とした.またpaclitaxelは腹腔内リザーバーを留置のうえ, 120mg/bodyの腹腔内投与weekly投与を3投1休とした.これを1クールとして2クール終了後2期的に開腹を行ったところ,腹膜播種は大網の小指頭大の結節と左横隔膜下の瘢痕のみとなり,同部の切除を含めた胃全摘術・膵脾合併切除術により根治術を施行しえた.組織学的に腹膜播種巣はわずかな腫瘍細胞の残存を認めるのみで,主病巣もgrade Ibの抗腫瘍効果が認められた.外来でのpaclitaxel腹腔内投与とS-1の内服にて術後約10カ月の現在も再発の兆候なく通院中である.

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