2003 年 64 巻 12 号 p. 3092-3096
腹腔内出血で発症した回腸のGISTを経験したので報告する.症例は37歳の男性で下腹部痛を主訴に当院消化器科を受診した.来院時,下腹部に圧痛,筋性防御を認めた.白血球数は11,400/μLと高値を示したが,他に異常値を認めず,腹部単純X線検査でも異常を認めなかった.腹部CT検査で小腸に辺縁平滑で均一に濃染される4cm大の腫瘤を認め,下腹部には腹水が存在し, CT値から血性腹水と考えられた.以上の所見から小腸腫瘍による腹腔内出血と診断し,同日緊急手術を施行した.腹部正中切開で開腹すると,腹腔内には約800mlの血性腹水を認め,回腸末端部から約130cm口側の回腸に腸管外に発育する4cm大の腫瘍を認めた.腫瘍には凝血塊が付着しており出血源と診断した.腫瘍を含めて,回腸を約5cm切除した.腫瘍は,組織学的にはsmooth muscle typeのGISTと診断した.術後1年6カ月後の現在,無再発生存中である.