2003 年 64 巻 2 号 p. 323-327
胃癌術後のカルモフール投与中に白質脳症を発症し,投薬中止によりほぼ寛解しえた1例を経験した.症例は57歳,男性,平成9年4月28日,胃癌に対し胃全摘術, Rouxen Y再建, 4群リンパ節郭清を施行した. 7月1日外来でカルモフール投与を開始, 8月31日,意識障害のため当科再入院となった.カルモフール白質脳症の診断で,入院直後よりカルモフール投与を中止,有効な治療法がないため経過観察のみとせざるをえなかった.一時は生命も危ぶまれる状態となったが,その後は徐々に症状軽快し,発症後152日でほぼ完全寛解しえた.カルモフール白質脳症に対しては,まず薬剤投与開始時から本疾患を念頭に置き,その発症予防に努め,一旦発症しても最後まであきらめずに治療に当たる姿勢が肝要であると考えられた.