抄録
稀な疾患である上腸間膜静脈・門脈血栓症による広範囲小腸壊死の1例を経験した.
症例は66歳,男性.主訴は腹痛.腹部所見で強度の圧痛,自発痛を認め,腹部CTで腹水,小腸の限局性の肥厚を指摘されたため絞扼性イレウスを疑い開腹術を施行した.手術所見では血性腹水と空腸の鬱血性壊死がみられたが,絞扼はなく末梢の腸間膜静脈に血栓を認めたため,上腸間膜静脈血栓症と診断し小腸部分切除を施行した.術後は抗凝固療法を行ったが,術後2日目に腹痛が再燃したため,上腸間膜静脈血栓症の増悪による腸管壊死の診断で再開腹し,広範囲小腸切除を施行した.残存小腸は約65cmとなった.術後再び血栓溶解療法,抗凝固療法,ワーファリンの内服を行い,血栓の消失はみられなかったが術後44日目に軽快退院した.
本症例は凝固線溶系には全く異常を認めず,特発性と診断した.