2003 年 64 巻 5 号 p. 1179-1183
症例は53歳,女性.排便時に下血を認めるようになり,近医を受診した際,肛門指診で硬い腫瘤を指摘され,直腸癌の疑いで当科へ紹介された.当科初診時には肛門指診で腫瘤は触知しなかったが,入院時には肛門指診で硬い腫瘤を触知し,腫瘤の位置が移動することが示唆された.骨盤部CT検査で直腸は浮腫状で,多層構造を呈し,その内腔には腫瘤も同定でき,また大腸内視鏡検査では,肛門縁から6cmの部位に腫瘍を認め,腸重積症を合併した進行大腸癌の診断で,手術を施行した.開腹するとS状結腸癌を先進部としたS状結腸-直腸型の腸重積症で,腸重積を整復したうえでS状結腸を切除した.
本邦において,大腸癌を先進部とする成人の腸重積症は, 1987年以降55例に過ぎず,これらを集計して,その臨床的特徴について報告した.