2003 年 64 巻 5 号 p. 1184-1188
症例は14歳,男児.腹痛,吐気を主訴に近医受診し,右下腹部圧痛により急性虫垂炎と診断され,保存治療を受けるも軽快せず,腸閉塞症状出現のため当院へ紹介入院となった.入院当日,急性虫垂炎の術前診断のもと虫垂切除術が施行されたが,摘出虫垂に炎症所見はみられなかった.術後に見直した腹部CTで,横行結腸脾彎曲部に全周性の肥厚性狭窄部が認められた.大腸内視鏡検査にて同部に全周性の不整な腫瘍を認め,生検にて低分化腺癌と診断された.再手術にて同部に全周性の腫瘤と腹膜播種を認め,左側結腸切除術およびCDDP 100mg腹腔内投与を施行した.病理組織学的所見はss, n1(+), H0, P3, M(-), por, sci, ly2, v1, infγ, stage IVであった.再手術後62日目に腹膜播種による多発小腸狭窄が出現し,回腸盲腸切除術が施行された.術後化学療法を加えたが再々手術から10カ月後に亡くなった.小児といえども悪性を念頭においた診療が必要だと反省した.