日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
TAE療法が奏効した直腸カルチノイド肝転移・長期生存の1例
山本 広幸松下 利雄広瀬 由紀藤井 秀則田中 文恵青竹 利治
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 64 巻 5 号 p. 1209-1212

詳細
抄録

症例は65歳,男性,便秘を主訴に当院を受診し,直腸診にて下部直腸左側に硬い可動性のない腫瘤を触知したため入院となる.注腸透視,大腸内視鏡検査では下部直腸左側に約3 cm大の隆起性病変を認め,生検でGroup 5 (carcinoid tumor疑い)の病理診断であった.手術所見は直腸下部左側から後壁にかけて腫瘤を触知し一部仙骨前面に浸潤している所見であり,腹会陰式直腸切断術を施行し,術後は骨盤部に放射線治療を施行した.術後約1年6カ月で両葉にわたる多発肝転移巣を認めTAEを施行した. TAEにより転移巣は消失するも再燃を認めた時点で以後3回施行した.肝転移巣は良好にコントロールされていたが,術後8年後に肝転移,骨転移が出現し,その後6カ月後に肺転移による呼吸不全のため死亡した.外科的切除,放射線療法, TAEが奏効し長期生存したと考えられ,このような進行症例に対しては積極的に集学的な治療を行うべきであると考えられた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top