症例は76歳の男性で,外傷の既往なくショックを伴った腹部全体の疼痛にて緊急入院した.この患者は9カ月前にも原因不明の脾破裂による腹腔内出血のため入院し,このときは保存的に軽快していた.今回入院時には汎血球減少と造影腹部CTにて腹腔全体に出血を認め,前回と同じ部位に脾臓の破裂像を認めた.翌日,貧血が進行し全身状態が増悪したため緊急手術となった.開腹時,脾被膜は散在性に破れ怒張した血管が露出していた.このうち2箇所から拍動性出血が認められた.側副血行の発達は認めず,外見上,肝,リンパ節にも異常は認めなかった.摘出脾臓は大きさ32.5×19.0cm,重さ3,050gで病理検査で病理検査でnon-Hodikin B型リンパ腫, Diffuse large cell typeと診断された.術後6クールのCHOP変法(CPA, THP, VCR, Pred)を施行し,現在まで完全緩解を維持している.悪性リンパ腫に脾破裂を伴う重要な要因の一つとして白血病化による急速な腫瘍細胞の増殖が考えられた.