2003 年 64 巻 7 号 p. 1597-1601
骨・軟骨化生を伴う乳癌の中の特殊亜型であるmatrix-producing carcinoma (MPC)の1例を経験した.症例は55歳の女性で1999年1月に乳房切除術が施行され,病理組織診断は軟骨粘液化生を伴う充実腺管癌であった. 1年10カ月後に肺転移が出現したため他院で転移巣の楔状切除を受け, MPCの肺転移と診断された.原発巣の病理組織像を再検討したところ, Wargotzらの提唱したMPCの組織像に合致した.本症例の軟骨基質を産生する細胞の由来は,免疫組織化学的検討の結果から上皮細胞由来であると考えられ,さらにCD10が軟骨基質に直接接する腫瘍細胞の一部に陽性であることから,この細胞は筋上皮細胞様の形質を持つと推定される.