日本臨床外科学会雑誌
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精神分裂病患者に発症した腸管嚢腫様気腫症の1例
宇野 雄祐平野 誠野澤 寛原 拓央稲木 紀幸橘川 弘勝
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2003 年 64 巻 7 号 p. 1654-1657

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抄録

腸管嚢腫様気腫症は消化管の粘膜下や漿膜下に気腫性の変化をもたらす疾患である.今回われわれは,精神分裂病の既往をもち,消化管穿孔の疑いで開腹手術を施行した腹腔内遊離ガス像を伴う腸管嚢腫様気腫症の1例を経験した.患者は59歳,男性.主訴は腹痛.腹部単純X線写真および腹部CT検査で大量の腹腔内遊離ガス像を認めたため,消化管穿孔の可能性を考え開腹手術を施行した.手術時,少量の腹水を認めたが穿孔部位は同定できず, Treitz靱帯から約2mの空腸から回腸末端にわたって,漿膜下の多数の気腫状変化を認めた.腸管嚢腫様気腫症と気腫の破裂に伴う腹腔内遊離ガスと診断し,腸管切除は行わずに単開腹で手術を終えた.自験例では,抗精神薬服用に伴う腸管麻痺から腸管内圧上昇をきたし,腸管嚢腫様気腫症を発症したと推測された.

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