2003 年 64 巻 7 号 p. 1658-1663
症例は88歳,女性. 20歳代に虫垂穿孔性腹膜炎で虫垂切除・右卵巣摘出術施行. 2000年1月から数回の腸閉塞を発症したが保存的に改善. 2001年12月20日,腹痛出現.腸閉塞の診断で入院.イレウス管による保存的療法を開始.しかし,症状の増悪寛解を繰り返し,炎症所見の遷延と低栄養状態が改善されないため, 2002年3月19日,手術施行. Treitz靱帯より約15cmの空腸に20cmにおよぶ腸重積を認め,空腸部分切除術を施行.術後49日目に退院した.切除標本に腫瘍や憩室などの器質的病変を認めなかったことから,発症原因はイレウス管操作や留置刺激によるものと考えた.本症例の反省点は腹部CT所見から腸重積症の診断に至れず,腸閉塞の保存的療法を継続し,病悩期間を長期化し,全身状態の悪化を招いたことが挙げられた.今後イレウス管操作を頻回に行う場合,何らかのトラブル発生の可能性を念頭に置いた慎重な対応が必要であると考えた.