抄録
原発性虫垂癌11例を経験した.男性5例,女性6例,平均年齢は61.2歳であった.術前診断は虫垂炎6例,虫垂癌2例,上行結腸腫瘍,卵巣癌,盲腸癌が各1例であった.組織型は粘液嚢胞腺癌6例,腺癌4例,腺癌と印環細胞癌の混合型1例であった.虫垂穿孔症例は4例(36.4%)あり,深達度はss 4例, se 6例, si 1例であった.術式は虫垂切除のみが2例,回盲部切除5例,結腸右半切除1例で,虫垂切除後に追加切除した症例が3例であった.平均生存期間は37カ月,また術後5年生存率は47%であった.虫垂癌の特徴は他の消化管の癌と比較してそのほとんどが炎症を伴っていることが多く,穿孔などのリスクが高いことである.また,病理組織上全ての症例がss以深であり,進行癌の状態で発見されるため,再発の可能性が高く,予後が不良である.術式ではリンパ節郭清を伴う根治手術を行い,術後の厳重なフォローが必要であると考えられた.