日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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64 巻, 8 号
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  • 岡崎 幹生, 赤坂 尚三, 庄賀 一彦, 中島 正雄, 平井 隆二
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1823-1826
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当院で経験した二次性上皮小体機能亢進症に対する上皮小体全摘出後自家移植術9例について検討した.術式は上皮小体全摘後,肉眼上最も正常に近い上皮小体を用いて移植片を作製し,腕橈骨筋内に移植した.切除上皮小体数は平均3.9腺で,過剰上皮小体や異所性上皮小体も認めた.病理組織診断はadenomaの1腺を除くといずれもhyperplasiaであった.血清intact-PTH値は術前の平均値730.6pg/mlから術後11.5pg/mlに低下していた.血清Ca値も全ての症例で術後に低下した.遺残上皮小体症例を1例,移植上皮小体の再腫大による手術症例を1例認めた.血清intact-PTH値はいずれの症例でも速やかに低下し,コントロール困難な機能低下症に陥る症例もなく,良好な成績が得られている.また再発に対する局所麻酔下での腫大上皮小体の摘出も有用であり,上皮小体全摘出後自家移植術は優れた治療法と考えられた.
  • 渡邊 常太, 渡辺 英生, 藤山 泰二, 串畑 史樹, 小林 展章
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1827-1834
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右側結腸憩室炎と急性虫垂炎は理学所見,血液検査上鑑別が難しい.このためCT検査における両疾患の鑑別,手術適応についての検討を行った.治療前に腹部単純CTを施行した右側結腸憩室炎8例と急性虫垂炎39例を対象とした.憩室炎症例中, 8例中7例(87.5%)に憩室が描出された.虫垂炎症例中,虫垂の描出は39例中26例(66.7%)に可能であり, CT所見は虫垂炎の術後病理診断と相関関係がみられた.虫垂炎の術後病理診断において,「炎症なし,カタル性」を非手術適応群,「蜂窩織炎性,壊疽性」を手術適応群の2群に分け検討すると,虫垂壁の全周性の肥厚,虫垂周囲の脂肪層の不明瞭化の2項目は2群間に有意差がみられた.腹部CT検査は,右側結腸憩室炎と急性虫垂炎の鑑別診断に有用であり,急性虫垂炎におけるCT診断はその重症度を良く反映しており,手術適応の決定に有用である.
  • 福長 洋介, 東野 正幸, 谷村 愼哉, 西口 幸雄, 田口 伸一, 岸田 哲, 藤田 みゆき, 西川 正博, 尾方 章人
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1835-1841
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【はじめに】腹腔鏡補助下大腸切除は,最近では進行癌にもその適応が拡大されている.【対象と方法】当院で腹腔鏡補助下大腸切除術を施行した大腸腫瘍114例を対象として,進行度別の至適リンパ節郭清程度を検討し開腹手術と比較した.腹腔鏡補助下大腸切除術におけるリンパ節郭清程度は,肉眼的深達度診断で,腺腫およびMの症例にD1, MPまでの症例にD2, SS以深の症例にD3とした.【結果】肉眼的深達度と組織学的深達度を比較すると, MPとしたもの20例中11例がss以深と診断された.また,肉眼的リンパ節転移(N)と組織学的リンパ節転移(n)を比較すると, n>NとなったものがN(-)症例70例中6例, N1(+)症例33例中4例に認めた.リンパ節郭清程度とnをみてみると,術前MPと診断しD2にとどめた12例中3例にn2(+)が存在した.腹腔鏡下大腸切除におけるD1, D2, D3と開腹手術のそれと比較すると,手術時間は開腹症例の方が短かったが,出血量は開腹症例の方が多く,リンパ節郭清個数には差は認めなかった.【考察】腹腔鏡補助下大腸切除においては,術前MPとの診断が曖昧であるため,またNとnの診断能の低さから, MP以深進行癌にはD3を行うべきであると考えられた.手術時間は若干長くなるものの,進行度に応じて開腹症例と同等のリンパ節郭清が少量の出血量で可能であった.
  • 千葉 斉一, 佐藤 宏喜, 佐久間 正祥, 三村 貴裕, 堀 眞佐男
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1842-1846
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.検診にて左乳房腫瘤を指摘され近医を受診し乳癌を疑われ,当科紹介となった.触診上右乳房B領域に5.3×3.0cmの腫瘤を認めた.腫瘤の境界は比較的明瞭でdimplingは認めず,胸筋固定はなく,同側腋窩に腫大したリンパ節を触知した.穿刺吸引細胞診にて低分化型の乳管癌細胞の他に漸次移行像を欠く軟骨化生腫瘍細胞を認め, Class V, matrix-producing carcinoma (MPC)と診断した. 9月30日Bt+Axを施行した.組織学所見も細胞像と同様でMPCと診断した.腋窩リンパ節はLevel Iの1個に転移を認めた.
    骨・軟骨化生を伴う乳癌は浸潤癌の特殊型に分類されており,全乳癌のうち約0.003~0.12%と極めて稀な疾患である.詳細の判明した骨・軟骨化生乳癌56例を集計し,その1亜型であるMPCと他の亜型群との比較を中心に臨床病理学的特徴を検討した.
  • 稲福 慶子, 大村 東生, 三神 俊彦, 鈴木 やすよ, 平田 公一
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1847-1850
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    異時性両側性乳癌の第2癌としての乳腺カルチノイドの1例を経験したので文献的考察を加え,報告する.症例は50歳,女性.昭和57年,右乳癌と診断され他院にて手術を受けた.同時期より,左乳房D, E領域に腫瘤を自覚していたが,諸検査において悪性所見はなく,経過観察とされた.その後,腫瘤は徐々に増大してきた. H14年5月,前胸部の打撲により乳頭から腫瘤が露出したが, 9月に当科を受診するまで放置していた.初診時,左乳頭はカリフラワー状に隆起していた.乳房外上部にも転移性のリンパ節と思われる腫瘤を認めた.細胞診により乳癌と確診し,胸筋温存乳房切除術を施行した.病理組織学的診断は乳腺カルチノイドで,クロモグラニン陽性, ER陽性, PgR陽性であり,腋窩リンパ節転移も認めた.
  • 野路 武寛, 平 康二, 菱山 豊平, 中村 豊, 竹内 幹也
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1851-1853
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    副乳腺に発生する癌は比較的稀で,全乳癌の0.2-0.6%で認められるとされている.今回われわれは,慢性腎不全にて血液透析中の患者に発生した副乳癌の症例を経験したので報告する.症例は42歳,女性.慢性腎不全にて血液透析中であった.左腋窩の2 cm大の腫瘤を主訴に来院し,平成14年4月腫瘤の切除生検を行ったところ,浸潤性乳管癌(充実腺管癌)と診断された.画像診断にて乳房病変のないことを確認し,副乳癌の診断にて広範囲局所切除,リンパ節郭清を行った.病理検査にて充実腺管癌と副乳腺組織を認め,乳腺外側領域との連続性を認めなかったため副乳癌と診断した.腋窩リンパ節転移は3個認め,ホルモンレセプターは陰性であった.術後補助療法として経口抗癌剤投与を行っているが,術後9カ月現在再発を認めていない.副乳癌の診断,治療および補助療法について本邦報告例から文献的考察を行った.
  • 金本 裕吉, 植田 直樹, 平岩 味恵, 高城 武嗣
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1854-1857
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.左腋窩の腫瘤を主訴に当院を受診した.摘出生検にて腺癌の腋窩リンパ節転移の診断を得たが乳腺内に腫瘤は認めず,原発巣は不明であった.病理組織検査から潜在性乳癌を疑い, 5'-DFURを投与しつつ外来にて原発巣を検索していた.初診日より7カ月後,左乳腺D領域の低エコー域のエコーガイド下,穿刺吸引細胞診でclass Vの診断を得たため,同部のquadrantectomy,腋窩リンパ節郭清を行った.切除標本で約2 mm大の原発巣を認めた.術後4年経過した現在,再発の徴候なく健在である.従来,本邦での潜在性乳癌の治療方針では乳房切除術が多く選択されていたが,画像診断の進歩ならびにQOLが叫ばれる現在,十分なinformed consentのもと,個々の症例に応じた適切な治療法を熟慮する必要がある.
  • 重川 崇, 佐藤 一彦, 田巻 国義, 津田 均, 平出 星夫, 望月 英隆
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1858-1863
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺悪性葉状腫瘍の遠隔転移に対する治療法は一般的にどれも効果のないことが多い.今回われわれは乳腺悪性葉状腫瘍の肺,副腎転移に対してifosfamideが奏効した1例を経験したので報告する.
    3年前, 44歳の女性に対し左胸筋温存乳房切除術(Bt+Ax; Auchincloss法)が施行された.病理組織学的診断にて乳腺悪性葉状腫瘍と診断された.約5カ月後,左鎖骨下腫瘤と腹部腫瘤を主訴に当科を受診.乳腺悪性葉状腫瘍の左鎖骨下局所再発および肺,副腎への遠隔転移が判明した.そこでifosfamide単剤による治療を開始したところ, 3クール終了後には局所再発病変,肺病変および副腎病変に対して著効を示した.
    今後,他剤との併用など, ifosfamideの投与方法をさらに工夫すれば,乳腺悪性葉状腫瘍の遠隔転移症例に対する新しい有用な手段となる可能性があるものと考えられる.
  • 林 泰寛, 林 智彦, 太田 長義, 伊藤 雅之
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1864-1867
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性. 2002年4月24日に左乳房有痛性腫瘤を主訴として当科を受診した.マンモグラフィー, US, CTにて左乳房全域を占める乳癌が疑われたため,確定診断および治療目的に手術を施行した.術中迅速組織診にて浸潤性乳管癌と診断され,腋窩リンパ節郭清を伴う胸筋温存乳房切除術を行った.切除標本は6.2×5.2cm大で,所々に壊死,出血を認める腫瘍であり,組織学的には充実性腺管癌様の部分と軟骨化生を伴いながら腫瘍細胞が索状~分散性に増生する部分が混在していた.また,この二つの成分は免疫特殊染色所見から同一の上皮性組織由来のものと考えられ,軟骨化生を伴う乳癌と診断された.
    骨・軟骨化生を伴う乳癌は本邦での報告例は約60例と稀な疾患であり,組織学的分類上では浸潤癌の特殊型に属し,比較的大きなものが多い.本症例のような巨大な乳房腫瘤に遭遇した場合,本疾患を念頭に置いて診察,治療を行うべきであると考えられた.
  • 横地 隆, 原 修, 露久保 辰夫, 土屋 隆
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1868-1871
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.近医にて肺結核の診断のもと,定期的に経過観察されていたが,腹部不快を主訴に当院を受診.胸部単純X線写真を施行したところ,左胸水の貯留および左肺門部の腫瘤影を認めた.胸部造影CTにて,腫瘤の外縁および内側の一部が不整に増強して描出された.縦隔腫瘍摘出術を施行したが,組織学的には海綿状成分と毛細血管性成分が混在した血管腫と,液化変性を伴う嚢胞様病変を認めた.手術後2年以上を経過した現在も胸水の再貯留を認めず,良好な経過を示している.
  • 舟木 成樹, 阿部 裕之, 鈴木 敬麿
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1872-1875
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    心房中隔欠損修復術後のdiversionは比較的稀な疾患である.今回われわれは33年間の長きにわたり,心房中隔欠損症術後の下大静脈-左房還流を呈していた症例を経験したので報告する.症例は39歳の女性で6歳時に部分肺静脈還流異常症を伴う心房中隔欠損症に対して手術を受けている.術直後よりチアノーゼが認められたが放置されていた.今回精査のため入院,心房中隔欠損症術後の下大静脈-左房還流と診断し,手術を施行した.常温体外循環下に右房を切開すると,下大静脈開口部は全く認められなかった.異常隔壁を切除すると,部分肺静脈還流異常を伴う2次孔型の心房中隔欠損症と下大静脈開口部が認められた.異種心膜パッチを用いて中隔形成術を施行した.術後経過は良好でチアノーゼも消失した.
  • 湯浅 吉夫, 平井 章三, 有岡 一郎, 松本 英男, 土肥 俊之
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1876-1879
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは肺塞栓により血圧低下と右心負荷をきたした症例に対し,経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)下に血栓溶解療法を行い救命しえた1症例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.子宮筋腫と診断され,子宮摘出術を施行されたが,術後5日目早朝に突然の胸痛,呼吸困難が出現し,当院紹介となった.肺動脈造影を行ったところ,肺動脈の広範囲に血栓を認め,肺塞栓症と診断した.ショック状態が持続し,肺動脈圧の上昇など右心負荷所見を認めたため,直ちにPCPSを開始し,血栓溶解療法を行った. 24時間後にPCPSから離脱,術後約1カ月で退院となった.体血圧の維持が困難であり,かつ右心負荷所見を認める肺塞栓に対し, PCPSを用いることは右心負荷を軽減し,肺塞栓急性期の治療に有用であると思われた.
  • 三好 孝典, 田中 隆, 本田 純子, 松森 保道, 高谷 信行
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1880-1884
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.自覚症状は特になかったが,大腿骨骨折入院時胸部レントゲン写真で異常影を指摘された. CT上,腫瘤は右上葉にあり46×32mm大で,壁側胸膜への直接浸潤が疑われた. 2カ月後のCTで,腫瘤は59×55mmと増大していた.経気管支鏡下肺生検では悪性所見を認めなかったが,肺癌が疑われたため,手術を行った.右上葉の腫瘤は肺尖部で胸膜と炎症性に癒着していた.組織学的には紡錘形の組織球様細胞がstoriform patternを示し,炎症細胞を伴っていた.免疫染色で, α1-antitrypsin, α1-antichimotrypsinが陽性であったことから,炎症型MFHと診断された.術後3年あまり経過したが再発の徴候なく経過良好である.
  • 中村 貴成, 柴田 高, 藤田 淳也, 塚原 康生, 北田 昌之, 島野 高志
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1885-1889
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.左上腹部腫瘤と食欲不振を主訴に当院受診.既往歴として48歳時に左胸水に対し他院入院加療.腹部CT検査では左上腹部に小児頭大の不整形な充実性腫瘍が認められ,全身麻酔下に開腹したところ左横隔膜下・胃前面に小児頭大・表面不整・易出血性・淡黄白色の腫瘍が認められた.腫瘍は左横隔膜に強固に浸潤し多数の腹膜播種を伴い,術中迅速病理診断で胸腺腫と判明したため,腫瘍および腹膜播種を可及的に摘出するに留めた.術後胸部X線を再検討したところ左上縦隔に腫瘍像が認められた.胸部CT検査で前縦隔に横隔膜へと続く腫瘍像が認められ,浸潤性胸腺腫が横隔膜へ直接浸潤し腹腔内進展・腹膜播種したものと考えられた.化学療法を行い残存腫瘍は縮小傾向にあり,術後9カ月生存中である.
  • 生方 英幸, 本橋 行, 田崎 太郎, 春日 照彦, 片野 素信, 田渕 崇文
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1890-1895
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性. EG領域の2型進行癌にて下部食道切除術施行.再建は細径胃管を作成し,自動吻合器を用いて端側式食道胃管吻合を胸腔内で施行した.術後SIRSの状態となったため,胸腔ドレナージを追加し, CHDF, PMX施行し全身状態の改善に努めた.再開胸は危険な状態であったため,全身状態の小康を待ち術後31日目に検査を行い縫合不全を確認した.術後40日目にUltraflexのcovered stentを内視鏡下に挿入したところ,全身状態の劇的な改善がみられ,その3週間後には瘻孔は完全に閉鎖された.近年の手術手技,手術器具の進歩にも関わらず食道癌の縫合不全発生率は約15%前後との報告が多く難易度の高い術式である.特に胸腔内吻合の場合は頸部吻合に比較し重篤になりやすく治療に難渋する.再開胸できないほど全身状態が悪化している症例の救命には,侵襲の少ないステント治療も有効な一手段であると考えられた.
  • 片川 雅友, 佐尾山 信夫, 岡田 雅子, 戸田 和史, 津田 洋, 吉田 冲
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1896-1899
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    明らかな所属リンパ節転移と十二指腸への直接浸潤が疑われた進行胃癌の症例に対して,非治癒切除になる可能性があると判断したため術前にTS-1を投与した.投与開始の2週間後に行った腹部CTでは所属リンパ節腫大は消失し,上部消化管造影では胃腫瘍は著明に縮小した.引き続き2週間投与し, 1週間の休薬期間をおいて胃全摘術・脾・膵尾部合併切除(No.16を除くD3)を行った. TS-1投与中から術後を通して明らかな副作用を認めず,術後経過も良好であった.術後8カ月を経た現在,再発の徴候はなく外来通院中である.本薬剤は進行胃癌症例に対する術前化学療法として有効な手段であった.
  • 谷口 健次, 末永 裕之, 桐山 幸三, 和田 応樹, 平井 敦
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1900-1902
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    極めて稀と思われる穿孔で発症した石灰化胃癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は51歳の女性.主訴は腹部膨満感で,その原因精査中に腹痛が出現し,腹部単純X線写真,腹部computed tomography (以下CTと略記)で腹腔内遊離ガスと多量の腹水,著明に肥厚した胃壁と内部の石灰化を認めたため,石灰化胃癌の穿孔を疑い緊急手術を施行した.開腹すると,ほぼ胃全体を占める4型の胃癌で,胃体中部前壁小彎よりに穿孔部を認めたため,胃全摘出術,腹腔洗浄ドレナージ術を施行した.組織型は膠様腺癌であった.胃癌の石灰化がX線写真上確認されることは比較的に稀である.自験例を含めた本邦報告例88例の検討では,ほぼ全例が進行癌であり,切除しえたものは55%にすぎず,予後不良な例が多かった.今回,胃癌穿孔についても,その穿孔様式,穿孔に至る原因に対しての文献的考察を加えた.
  • 大楽 耕司, 岸川 正彦, 榎 忠彦, 野島 真治, 濱野 公一
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1903-1906
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは術前に診断しえた左傍十二指腸ヘルニア症例を経験した.症例は27歳,男性.平成11年4月頃より上腹部痛を認めたため近医を受診した.腹部エコーや上部消化管内視鏡検査を施行されたが,原因は不明であったため経過観察された.しかしその後も腹痛の改善がみられないため,平成12年5月に当院受診となった.受診時臍上部に疼痛を認めたが,筋性防御はなかった.上部消化管造影検査や腹部CT検査で胃背側,膵前方に小腸を認め左傍十二指腸ヘルニアと診断した.このため開腹術下にヘルニア門を閉鎖した.傍十二指腸ヘルニアは急性腹症で発症し術中に確診されることが多いが,本症例のように上部消化管造影検査や腹部CT検査での診断も可能である.そのためには本疾患の存在を念頭におくことが必要で,これにより緊急手術を回避することが可能であると考えられる.
  • 杉山 章, 百木 義光, 浪花 宏幸
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1907-1911
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    非常に稀な特発性小腸穿孔の1例を経験したので報告する.
    症例は80歳,男性.下腹部痛を主訴とし,発症より7時間後に当院を受診した.来院時,下腹部は膨隆し,筋性防御,ブルンベルグ兆候を認めた.胸部および腹部X線検査で両側横隔膜下に遊離ガス像を認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した. Treitz靱帯より180cm肛側の小腸の腸間膜付着部反対側に, 5mm大の穿孔が認められ,穿孔部を含めて約5cm小腸を切除した.摘出標本では,穿孔部の近傍に5mm大のUI IIの潰瘍が認められたが,穿孔部位周囲の粘膜面には異常は認められなかった.組織学的には,漿膜面に好中球とフィブリンの出現がみられたが,慢性炎症の所見は認められなかった.また,粘膜の漿膜側へのslidingも認められなかった.以上より,特発性小腸穿孔と診断した.術後に癒着による腸閉塞を合併したが保存的に軽快し,術後47日目に退院した.
  • 上杉 尚正, 松井 則親, 西 健太郎, 守田 知明
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1912-1915
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    開腹手術により完全虫体を摘出しえた小腸アニサキス症の1例を経験したので報告する.症例は58歳,男性.イワシの酢の物を食べた後より,腹痛,腹部膨満感,嘔気が出現しイレウス,腹膜炎の診断で入院した.急速なアシドーシスの進行を認め,緊急手術を施行した.開腹した所,回腸の一部が狭窄し,それより口側の回腸150cmに鬱血,浮腫を認め切除した.狭窄部粘膜面に刺入し活発に活動している寄生虫1体を確認し,小腸アニサキス症と診断した.
  • 荻谷 朗子, 板東 隆文, 古畑 善章, 酒井 敬介, 磯山 徹
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1916-1919
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性.腹痛を主訴に当院へ救急搬送され入院となった. 1カ月前にも同様の腹痛で他院を受診し,鎮痛剤で改善していた.入院後,経過観察を行っていたが腹痛は悪化し,臍周囲に腫瘤を触れるようになった.緊急CTで部分的な拡張腸管を認め,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を行った.開腹すると50cmにわたり空腸が著明に拡張し,肛門側の空腸が腸間膜と一緒に口側へ嵌入する逆行性の小腸重積であった.用手整復を試みたが不可能であり,拡張腸管を含めた小腸部分切除を行った.肉眼的に,拡張した小腸の粘膜は壊死に陥っていた.また,肛門側に径3.5cm大の有茎性小腸ポリープを1個認め,これが今回逆行性の小腸重積を起こしたと考えられた.病理組織学的にはPeutz-Jeghers型ポリープであった.術後の検索では他にポリープを認めず,本例は単発であった.
    Peutz-Jeghers型ポリープによる逆行性小腸重積は本邦で報告がなく,若干の文献的考察を踏まえ報告する.
  • 西島 弘二, 伊藤 博, 黒阪 慶幸, 竹川 茂, 桐山 正人, 小島 靖彦
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1920-1924
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の女性. 14歳時よりvon Recklinghausen病と診断されている.下腹部腫瘤を主訴に近医を受診し,子宮筋腫と診断され精査加療目的に当院へ紹介入院となった. CT検査, MRI検査にて径8 cm大の子宮筋腫の他に,最大径9 cm大の大小多発する腹腔内腫瘤を指摘された.また,血管造影では,上腸間膜動脈領域に多発する腫瘍濃染像の存在が確認された.子宮筋腫および腹腔内多発性腫瘤の診断にて,開腹手術を行った.径8 cm大の子宮筋腫を認め,単純子宮全摘術を行った.また,上部空腸約45cmの範囲に,最大径9 cm大の壁外性に突出する多発性腫瘍を認めたため,同部位を切除した.切除標本の病理組織検査では,小腸腫瘍は大小を問わずすべて異型の乏しい紡錐形の細胞が増殖しており,免疫組織化学的検査では, c-kit, CD34が陽性で,平滑筋細胞マーカー,神経細胞マーカーは陰性であり狭義のgastrointestinal stromal tumorと診断された.
  • 阿部 仁郎, 宗本 義則, 天谷 奨, 浅田 康行, 飯田 善郎, 三浦 将司
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1925-1929
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸重積をきたした悪性黒色腫小腸転移の1例を経験したので報告する.症例は89歳,男性.主訴は右下腹部痛,貧血. 1999年に背部悪性黒色腫の手術を受けている. 2001年6月頃より右下腹部痛を自覚し当院内科を受診,腹部超音波, CTにて右下腹部に腸重積を認めた. 2001年7月6日精査加療目的にて外科入院となった.小腸造影で先進部に腫瘍を認める回腸腸重積症を認め,小腸腫瘍による腸重積の診断にて, 2001年7月18日に手術を施行した.手術時には腸重積は解除されており,回腸に10カ所の黒色腫瘤を認めた.約90cmの腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.免疫染色の結果, HMB-45蛋白陽性で,悪性黒色腫の小腸転移と診断した.術後8カ月再発なく経過したが,他病死した.
  • 重田 博, 小森山 広幸, 田中 一郎, 萩原 優, 山口 晋
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1930-1933
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Nonocclusive mesenteric ischemia (NOMI)と診断した1例を経験したので報告する.症例は58歳,男性.腹痛,嘔気を主訴に緊急入院.慢性腎不全に対して人工透析施行中であった.来院時ショック状態で,下腹部を中心に腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査にてfree airを認め,消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.手術所見では回腸終末部から上行結腸にかけて非連続的な腸管壊死と回腸終末部の多発腸管穿孔および回腸末端から口側約100cmの連続する腸管壊死を認めた.壊死腸管を切除し, delayed anastomosisを考慮し人工肛門,小腸瘻を造設した.病理組織所見で粘膜の強い壊死性変化と潰瘍形成を認めた.腸間膜の主幹動静脈に血栓,閉塞所見はなく, NOMIと診断した.術後ショック状態から離脱不能で,第2病日に死亡した. NOMIに遭遇する機会は少ないものの予後不良であり,急性腹症の鑑別診断として重要と考えた.
  • 馬庭 知弘, 白石 好, 磯部 潔, 森 俊治, 西海 孝男, 古田 凱亮
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1934-1938
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.腹痛,嘔吐にて受診し,イレウスの診断にて緊急入院した.糖尿病,パーキンソン病にて治療中であった.翌日,腹膜刺激症状出現,全身状態の悪化,腹部CT上S状結腸の著明な浮腫と多量の腹水を認め,汎発性腹膜炎疑いにて緊急手術を施行した.手術所見では漿液性の腹水多量, S状結腸とS状結腸間膜に強度の浮腫,直腸に多量の宿便を認めた.非穿孔性の閉塞性腸炎による腹膜炎と診断し, S状結腸切除,人工肛門造設,直腸粘液瘻造設術を施行した.腹水培養でEnterococcus faeciumとBacteroides vulgatusが検出された.病理所見では好中球を主体とした粘膜の急性炎症性細胞浸潤と虚血性変化を認めた.術後敗血症によるショック,急性腎不全を発症するもエンドトキシン吸着,血液濾過を含む集中管理にて軽快した.
  • 土川 貴裕, 長谷川 直人, 菅野 紀明, 森山 裕, 川端 真, 浜野 哲男
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1939-1943
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸動静脈奇形(AVM)に対しコイル塞栓術を施行した後,再発を繰り返したため,根治的に右結腸切除術を施行した1例を経験したので報告する.
    患者は62歳,女性.主訴は下血,貧血.平成8年4月, 11月に回結腸動脈領域の大腸AVMに対しコイル塞栓術を施行した.平成14年7月12日,右結腸動脈領域のAVMの再発所見が認められたため根治的に右結腸切除術を施行した.消化管AVMにおいては本症例のように異時性多発性にAVMが出現することもあり,治療後も慎重に経過観察することが重要と考えられた.
  • 森田 泰弘, 高橋 修, 篠嵜 秀博, 下田 司, 遠藤 幸夫
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1944-1947
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    盲腸捻転症例において, CTにて経時的変化をとらえた1例を経験したので報告する.症例は74歳女性で,腹痛・嘔吐を主訴に来院.左腹部に著明に拡張した腸管ガスを認め,腸閉塞と診断.保存的治療にて改善せず,開腹術施行した.開腹所見では移動盲腸があり,回腸末端とともに反時計方向に360度回転していた.腸管壁は著しく菲薄化しており,回盲部切除を施行した. retrospectiveにCTを検討すると手術前日の腹部CTでは右側腹部に上行結腸を認めたが,症状の増悪した手術当日の腹部CTでは同部位にあった上行結腸は確認できず,拡張した小腸に置換されていた.このCTにおける“上行結腸の消失”の所見は盲腸捻転の診断に役立つだけでなく,捻転の程度を推測するのに役立つ可能性が示唆された.
  • 松浦 一生, 野間 浩介, 峠 哲哉
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1948-1951
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    巨大な虫垂粘液嚢腫が虫垂根部で捻転し,急性腹症として開腹手術を施行した極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は33歳,女性.主訴は腹痛.以前より時折腹痛があったが,放置していた. 1ヵ月前に当院にて妊娠中絶手術施行.突然腹痛出現したため,当院産婦人科受診.下腹部に圧痛と筋性防御を認め,経膣超音波検査にてダグラス窩に8×3 cmの嚢胞性病変および腹水を認めたため,右付属器炎,卵管膿腫による腹膜炎の疑いで緊急手術となった.開腹時,右付属器は正常であったが,腸詰様に腫大した虫垂がその根部を軸として時計方向に2と1/4回転(810度)捻転していた.捻転を解除後,虫垂切除し,手術終了した.摘出した虫垂は, 3×10cm大,内部はゼリー状物質で満たされていた.病理診断は非腫瘍性の貯留嚢胞で,悪性の所見は認めなかった.患者は術後8日目に軽快退院した.
  • 奥濱 幸博, 砂川 亨, 奥島 憲彦
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1952-1955
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性. 1999年8月1日午前6時頃に腹痛があり覚醒する.腹痛が持続するため同日当院受診する.受診時,右下腹部に軽い圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御などの腹膜炎の所見はなく,血液検査上も正常であった.しかし,外来で検査を行っている短時間で腹痛は腹部全体に広がり筋性防御が出現し,血液検査で白血球とCRPの上昇がみられた.腹部CTは,回盲部に憩室と腸管浮腫像があり,回盲部憩室炎穿孔による穿孔性腹膜炎の診断で手術を行った.術中所見で虫垂憩室穿孔を認めたため,虫垂切除術と腹腔内ドレナージを行った.病理組織学的に虫垂憩室は固有筋層を欠く仮性憩室であった.虫垂憩室炎は穿孔率が高く,短時間で穿孔性腹膜炎に移行しやすいため,無症状で発見された場合でも慎重な経過観察を行い,有症状化すれば積極的な外科治療を考慮すべきであると考える.
  • 目黒 英二, 稲葉 亨, 入野田 崇, 早川 善郎, 岡田 晋吾, 貝塚 広史
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1956-1960
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    壊死型虚血性大腸炎は稀な疾患であり,予後不良となることが多い.今回われわれは急激な発症を呈し,強度の代謝性アシドーシスがみられた壊死型虚血性大腸炎を経験した.症例は64歳,男性.腹痛を主訴に来院.緊急大腸内視鏡検査にてS状結腸の粘膜壊死を認め,同日緊急手術を施行した.腹水は少量認め(細菌培養:陰性), S状結腸に壊死性変化がみられた. S状結腸切除術および一時的人工肛門造設術(Hartmann手術)を施行した.病理検査ではS状結腸粘膜下の広範な出血,粘膜壊死,小血管における血栓を多数認め,壊死型虚血性大腸炎と診断した.術後9カ月現在,再発の徴候はみられていない.本疾患は死亡率が高いが本症例では早期手術により救命しえた.このように壊死型虚血性大腸炎は早期診断,早期手術が必要と考えられた.
  • 五代 天偉, 永野 篤, 藤澤 順, 松川 博史, 清水 哲, 富田 康彦
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1961-1964
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌11例を経験した.男性5例,女性6例,平均年齢は61.2歳であった.術前診断は虫垂炎6例,虫垂癌2例,上行結腸腫瘍,卵巣癌,盲腸癌が各1例であった.組織型は粘液嚢胞腺癌6例,腺癌4例,腺癌と印環細胞癌の混合型1例であった.虫垂穿孔症例は4例(36.4%)あり,深達度はss 4例, se 6例, si 1例であった.術式は虫垂切除のみが2例,回盲部切除5例,結腸右半切除1例で,虫垂切除後に追加切除した症例が3例であった.平均生存期間は37カ月,また術後5年生存率は47%であった.虫垂癌の特徴は他の消化管の癌と比較してそのほとんどが炎症を伴っていることが多く,穿孔などのリスクが高いことである.また,病理組織上全ての症例がss以深であり,進行癌の状態で発見されるため,再発の可能性が高く,予後が不良である.術式ではリンパ節郭清を伴う根治手術を行い,術後の厳重なフォローが必要であると考えられた.
  • 徳原 孝哉, 原 章倫, 原田 知明, 泉 信行, 岩本 伸二, 佐竹 一成, 橋本 和明
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1965-1969
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性および64歳,男性.ともに高度進行大腸癌であり,術前の胸部helical CT検査にて孤立性肺転移(右肺)を発見した.原発巣切除および所属リンパ節郭清後,化学療法としてCPT-11 (40mg/m2/2w)を7クール, 5FU (200mg/day)を10週連続投与した. 3カ月後のhelical CT検査の効果判定ではNCであるも,新病変の出現がないため右肺部分切除を施行した.切除標本の病理組織学的検索ではともにGrade 2であった.有害事象については, grade 2の口腔粘膜異常とgrade 1の皮膚症状が認められたが血液毒性はなく,本投与法は外来治療で,入院加療を必要としなかった.今回の2症例は,大腸癌術前検査での胸部helical CT検査の重要性とともに,化学療法としてのCPT-11/5FU併用療法の意義を示唆する貴重な症例と考えられた.
  • 田島 隆行, 諸角 強英, 宮崎 洋史, 古川 秋生, 仲丸 誠, 幕内 博康
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1970-1973
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    子宮留膿腫と癒着し,深達度診断が困難であったS状結腸癌症例を経験したので報告する.症例は88歳の女性,主訴は下腹部痛.外来にて大腸内視鏡検査を行いS状結腸癌と診断し入院となった.入院時より軽度の腸閉塞症状を認めたが経鼻胃管挿入と補液にて改善した.腹部CT検査でS状結腸癌が子宮に浸潤しているものと診断したため,子宮付属器合併切除を伴うS状結腸切除術を施行した.術後の病理組織診断にてこの癒着は炎症性の癒着で癌の浸潤ではないと診断された. S状結腸癌や直腸癌に併存した子宮留膿腫の本邦報告例は自験例を含め8例で,癌の浸潤を認めなかったのは2例のみであった.子宮は壁が厚いため癌が内腔まで浸潤することは稀とされているが,子宮留膿腫を伴っている場合は炎症性浸潤との鑑別が困難で術前深達度診断を誤りやすく注意すべき病態と考えられた.
  • 青竹 利治, 松村 光誉司, 打波 大, 堀内 哲也, 田中 國義
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1974-1977
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,女児.左側腹痛を主訴に近医にて胃内視鏡検査を施行されたが異常はなく経過観察されていた.腹痛が増悪し体重減少もきたしたため発症より約2カ月で前医に入院となった.大腸内視鏡検査および注腸検査にて回盲部に潰瘍性病変を認め,生検にてadenocarcinomaと診断された.当科に紹介入院し,盲腸癌の診断にて右半結腸切除術, D3郭清を施行した.腫瘍は小児手拳大で虫垂根部をひきこみ近傍の腸間膜に腹膜播種が疑われた.病理診断はwel>mod, si, ly1, v1, ow (-), aw (-), ew (-), n (-) stage IIIaであった.術後UFTE顆粒2.25g, PSK 3gの投与を施行し,術後19カ月で再発の徴候は認められていない.
  • 礒 幸博, 住田 敏之, 吉本 次郎, 阿川 千一郎, 瀬戸山 隆平, 河野 信博
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1978-1982
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.大腸内視鏡検査にてS状結腸に2'型病変認めたため,手術目的にて入院となった.生検および画像診断にて回腸原発悪性リンパ腫のS状結腸浸潤を疑い,手術を施行した.術中所見ではS状結腸に手拳大の腫瘤を認めたが,他の消化管には全く異常を認めなかった.この時点でS状結腸原発の悪性リンパ腫を疑い, S状結腸切除術を施行した.術後経過は良好であったが,第34病日のCT上,骨盤内腫瘤の出現と腹水を認め,細胞診にてclass Vの結果であった.第40病日のCTでは腹水貯留と無数の播種所見を認め,その後は急速に全身状態が悪化し,第43病日に死亡した.組織学的最終診断は, S状結腸未分化癌であった.剖検では,全身に渡り著しい播種結節が認められたが,吻合部には再発の所見はなかった.
  • 小山 剛, 山本 篤, 高垣 敬一, 堀 武治
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1983-1988
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃壁膿瘍という比較的稀な病態にて発症した大腸癌の1切除例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.背部痛,心窩部痛を主訴に当院を受診.血液検査では白血球15,400/mm3, CRP 16.67mg/dlと炎症所見の高度上昇を認め,胃内視鏡検査にて,胃体上部大彎側後壁に発赤を伴う粘膜腫瘍様の隆起性病変を認めた.その頂部肛門側には膿の付着があり,鉗子圧迫によるドレナージ術にて膿の排出を認め,細菌培養にてHaemophilus parainfluenzaが検出された.胃壁膿瘍の診断にて抗生剤投与も行い,症状は消失し,炎症所見の改善も認めた.しかし,その後の精査にて,横行結腸癌胃浸潤と診断され,左側結腸切除術,胃部分切除術を施行した.組織学的には,高分化型腺癌であり,胃漿膜下で膿瘍を形成していた.胃壁膿瘍の本邦報告は,自験例を含め36例であり,そのうち大腸癌に起因するものは本例で3例目であった.
  • 小倉 行雄, 三田 三郎, 早川 英男, 森 直治, 前田 光信
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1989-1991
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌における精索転移は非常に稀な病態である.今回われわれはS状結腸癌術後1年1カ月時に右精索に転移性腫瘍を認め,切除した1例を経験したので報告する.
    症例は78歳,男性. 77歳時, S状結腸癌にてS状結腸切除後,外来通院中.右鼠径部の腫瘤を自覚し精査を行った.骨盤造影CTにて右精索内に不均一に造影される径約20mmの腫瘤陰影を認め,転移性腫瘍を疑い手術を行った.腫瘍は精索と強固に癒着しており高位除睾術を施行した.病理組織学的所見では77歳時のS状結腸癌と同様,中分化型腺癌であった.
    術後は極めて良好で,特記すべき合併症は認めなかった.
    本症例は大腸癌術後に精索転移をきたした稀な病態と考えられた.
  • 安藤 修久, 安藤 秀行, 大池 恵広
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1992-1996
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性.右下腹部の疼痛と同部の巨大腫瘤を主訴に来院した.血液検査にて著明な貧血と炎症所見を呈し, CEAの上昇を認めた.腹部CTにて回盲部に直径6cmの腫瘍像を認め,この周囲から腹壁を介して皮下に連なる液体成分主体の腫瘤陰影を認めた.腹部USでは皮下膿瘍と思われるecho free spaceを伴う, echogenic massが腹腔内に描出された.以上より回盲部癌の腹壁浸潤による皮下膿瘍形成と診断し,ただちに切開排膿を施行した.全身状態の改善を待ち,入院7日後にD3郭清を伴う結腸右半切除術を施行した.腫瘍は盲腸に位置し, 10×7 cmの潰瘍限局型で後腹膜に穿破していた.病理組織診断は中分化型腺癌, se, ew(+), n(-)であった.腹壁に皮下膿瘍を形成した症例については大腸癌の潜在に注意する必要があると思われた.
  • 宮脇 美千代, 田中 康一, 久保 宣博, 藤吉 健児, 佐藤 哲郎, 福永 淳治
    2003 年 64 巻 8 号 p. 1997-2000
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性. 6年前に直腸癌に対し低位前方切除術を施行されている.平成14年7月10日,近医にて癒着性腸閉塞で開腹術を施行された際,術中に右横隔膜の腫瘍を認め当院紹介された.経皮的針生検で直腸癌の横隔膜転移が強く疑われ,手術を施行した.右横隔膜から横隔膜付着部胸壁に及ぶ手拳大の腫瘍で,一部肺と癒着していた.右横隔膜,胸壁,肺の合併切除を行い,腫瘍を完全摘出したのち,横隔膜,胸壁の欠損部をMarlex Meshにて各々再建した.病理組織検査は中分化型腺癌で,直腸癌の横隔膜転移と診断した.横隔膜腫瘍は珍しく,特に本症例のような孤立性転移は報告も少ない.その機序として腫瘍細胞の横隔膜小孔(peritoneal stomata)への吸収,迷入が考えられた.
  • 平嶋 勇希, 上田 和光, 山田 純, 武井 芳樹, 佐藤 宗勝, 奥村 稔
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2001-2004
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.健康診断で肝機能異常を指摘された.腹部超音波, CT, MRCP検査で胆嚢,総胆管内に結石はなく胆道拡張もみられなかったが総胆管左背側に棒状の透亮像がみられた.しかし,この時点で確定診断がつかず経過観察となった. 6カ月後,腹痛と肝胆道系酵素値の異常が発症しERCP検査を行ったところ胆嚢管低位合流と胆嚢管内に4×1 cm長の鋳型状結石を認めた.術式は可及的に胆嚢管を長く切除する開腹胆摘術を行った.胆嚢は慢性胆嚢炎で結石はビリルビン結石であった.自験例は長い胆嚢管内で胆汁の鬱帯により発生した,いわば原発性胆嚢管結石症ともいえる.再発を防止するためには胆嚢管を可及的に切除する胆摘術が必要と考えられた.
  • 奥 喜全, 谷 眞至, 大西 博信, 木下 博之, 内山 和久, 山上 裕機
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2005-2009
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性. 1999年4月,体重減少と食欲不振にて近医を受診し,胆嚢癌を疑われた.腹部US, CT, ERCPにて胆嚢底部に腫瘍および肝S4, S5への直接浸潤を認めた.胃透視,内視鏡, EUSで胃壁および十二指腸球部から下行脚に直接浸潤を疑わせる所見も認めた. 1999年6月に手術を施行した.腫瘍は胆嚢底部原発で肝右葉に浸潤していたものの,胃と十二指腸への浸潤はなかったが,左上腹部腹膜に腹膜播種を疑う結節を認め,術中迅速病理検査に提出したところundifferenciated carcinomaであったため,胆摘・肝床部切除にとどめ,手術を終了した.術後の病理組織学診断ではneuroendo-crine carcinomaで,免疫組織染色ではNSEが陽性であった.患者は術後6カ月後に死亡した.胆嚢原発内分泌細胞癌の1例を経験したのでここに報告する.
  • 水崎 馨, 大町 貴弘, 中江 佐八郎
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2010-2014
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で,上腹部痛を主訴に来院した.腹部所見は上腹部を中心に腹膜刺激症状,筋性防御を認めた.腹部単純X線では左上腹部に石灰化を認めたが,腹腔内遊離ガス像は認めなかった.腹部CTでは左横隔膜下,脾臓から膵尾部に連続する径8cmの嚢胞と嚢胞内出血,膵石,腹水を認めた.以上の所見より,慢性膵炎に合併した膵嚢胞の破裂による腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.腹腔内には血清腹水を多量に認め,膵体尾部・横行結腸間膜・脾臓・胃後壁・左横隔膜が強固な癒着のため一塊となり,この中に嚢胞を認めた.手術は膵体尾部切除術と脾摘術を施行した.慢性膵炎の合併症として膵仮性嚢胞内出血による腹腔内出血は非常に稀である.今回,自験例を含めた本邦報告例22例に若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 中村 育夫, 村林 紘二, 楠田 司, 高橋 幸二, 永井 盛太, 堀 智英
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2015-2019
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.主訴は背部痛,臍周囲痛である.入院前日より背部痛を認め,その後突然臍周囲痛をきたし来院した.腹部US, CTでは,膵頭部領域に11×8×4 cmの内部不均一な血腫を認め,上腸間膜動脈,門脈が圧排されていた.腹部MRIでは, T1にて高信号, T2にて低信号を示し造影効果がないことから血腫と診断された.腹部血管造影では,下膵十二指腸動脈からの造影で前後下膵十二指腸動脈にそれぞれ1個の動脈瘤(8×11mm,3×11mm)を認めた.以上より膵十二指腸動脈瘤の破裂による後腹膜血腫の診断にて手術施行.術中所見では,血腫による癒着が高度であり,また下膵十二指腸動脈からの動脈瘤を検索したが動脈瘤を同定することができなかったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.
  • 團野 克樹, 東山 聖彦, 檜垣 直純, 高見 康二, 大宮 英泰, 児玉 憲
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2020-2024
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腎癌根治術後13年目に孤立性肺転移, 15年目に急速増大した肺靱帯転移を発見し,その両転移巣を同時に切除しえた症例を経験したので報告する.症例は77歳,女性, 1987年左腎細胞癌にて左腎摘出術施行. 2000年4月,胸部X線検査で右肺にcoin lesionが出現.胸部CT上,右肺S3に9mmの腫瘤を認めた. 2002年1月肺穿刺細胞診施行,腎細胞癌肺転移と診断.その際前回CTではなかった, 3cmの腫瘤を右肺S10に認めた.両病巣とも肺部分切除にて切除.病理学的にS3は肺内転移であったが, S10病変は肺外肺靱帯内への転移で,且つ両転移巣間に病理組織学的な違いは観察されなかった.腎癌転移巣では陰影増大の速度や大きさのみで手術適応を判断すべきでなく,その多様な病態を考慮して治療法を選択すべきと考えられた.腎癌の肺靱帯への転移は極めて稀で,調べ得る限り報告がないため報告した.
  • 久下 博之, 桑田 博文, 中島 祥介
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2025-2028
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.下腹部腫瘤を主訴に来院した.臍部から恥骨上縁に新生児頭大,弾性硬の腫瘤を触知した.骨盤CT検査,骨盤MRI検査で膀胱頂部に10×8cm,内部に粘稠な液体を有すると思われる腫瘍を認めた.尿膜管腫瘍と術前診断し手術を施行した.腫瘍は腹横筋膜と腹膜の間に存在し,膀胱頂部と連続していた.周囲臓器への浸潤,骨盤内リンパ節の腫大は認めなかった.腫瘤摘出術,膀胱部分切除術を施行した.標本内にはゼラチン様物質が充満し,組織学的にはムチン産生性高分化型腺癌であった.最終的に尿膜管癌と診断した.尿膜管癌は比較的稀な疾患であり,泌尿器科にて血尿などで発見されることが多いが,下腹部腫瘤のみで外科を来院することもあり鑑別の際,本症の存在を念頭におくことが肝要である.
  • 田中 宏明, 溝手 博義, 深堀 優, 浅桐 公男, 田中 芳明, 鶴 知光
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2029-2031
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小児の腸間膜嚢腫は比較的稀な疾患である.今回私共は,間歇的腹痛を主訴とした小児の腸間膜嚢腫(リンパ管腫)の1例を経験した.症例は5歳,男児.各種画像検査にて骨盤内に腫瘍を認め,摘出術を施行した.腫瘍はTreitz靱帯より肛門120cm,回盲部より口側340cmの部位の腸間膜に存在し,大きさは13×10×8cmであった.術後病理組織学的にlymphangiomaと診断された.
  • 名久井 実, 津久井 優, 石井 正紀, 柏木 宏之, 大谷 泰雄, 幕内 博康
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2032-2036
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは後腹膜原発が疑われた無色素性悪性黒色腫(amelanotic malignant melanoma: AMM)の1例を経験したので報告する.症例は68歳,男性. 1995年5月より左背部痛を自覚,増強してきたため近医受診.腹部超音波およびCT上,約8cm大の膵体尾部に隣接する腫瘤性病変が認められ当院紹介入院となった.入院時皮膚・眼球・消化管精査で異常所見なし.腹部CTで腹腔内には多数のリンパ節腫脹もみられたことから,膵上皮性腫瘍のほか,悪性リンパ腫や間葉系腫瘍なども疑われた.確定診断を目的として腹腔鏡下リンパ節生検を施行した.腹腔内には10mm大の小結節が散在しており,これを一部採取し病理組織診断を行った結果,メラニン顆粒がほとんど認められない無色素性悪性黒色腫の組織像であった.後腹膜原発悪性黒色腫は極めて稀であり,報告例のほとんどが副腎髄質原発である.副腎外後腹膜原発と考えられる悪性黒色腫症例としては,自験例が本邦で4例目である.
  • 菅野 雅彦, 鶴岡 優子, 松田 光弘, 坂本 一博, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2037-2040
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性. 2年前に経膣的子宮全摘術の既往がある.下腹部腫瘤を主訴として当科受診.臍下部正中に約3cm大の柔らかい腫瘤を触知し,用手的に容易に還納した.超音波検査および腹部CT検査では,下腹部正中皮下に白線腱膜の欠損部より脱出する約3cm大の大網と思われる腫瘤を認めた.以上より下部白線ヘルニアの診断で手術を施行した.ヘルニア周囲を剥離すると腹膜前脂肪とヘルニア嚢を認めた.ヘルニア嚢を切除,ヘルニア門を縫合閉鎖し根治術を施行した.術後2年経過した現在,再発を認めていない.白線ヘルニアは稀な疾患で,本邦では自験例を含めて66例の報告しかなく,その中で下腹部白線ヘルニアはわずかに7例のみである.自験例は生理的な白線の脆弱に加え,妊娠および出産による腹圧上昇と手術がヘルニア発生の誘因と考えられた.白線ヘルニアの中でも稀な下腹部白線ヘルニアの1例を経験したので本邦報告例の検討を加えて報告する.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 長谷川 聡, 名取 志保, 仲野 明, 小林 俊介
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2041-2045
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, S状結腸嵌頓をきたした小児大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.
    症例は4カ月,女児.嘔吐,血便,哺乳力の低下を主訴に小児科救急外来受診.来院時,右鼠径部に膨隆を認め,腹部造影CTで腸管の脱出によるものであることを確認した.用手還納不能のため,右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術となった.手術所見では,鼠径管を開放するも外鼠径ヘルニアは認めず.鼠径靱帯下方に大腿管を貫くヘルニア嚢を認め,大腿ヘルニアと診断した.また,これを切開し,ヘルニア内容がS状結腸であること,腸管の壊死がないことを確認し結腸を還納,ヘルニア嚢を2重結紮切離した.術翌日より経口摂取開始.術後5日目に退院となった.術後3カ月の現在,再発を認めていない.
  • 関根 進, 朝倉 武士, 牧角 良二, 今村 智, 山口 晋
    2003 年 64 巻 8 号 p. 2046-2049
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腰部には上腰三角・下腰三角と2つの解剖学的抵抗減弱部位が存在するが,特に下腰三角部にヘルニアが発症することは極めて稀である.今回われわれは,特発性下腰ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は73歳,男性.左側腹部膨隆を主訴に来院.左下腰三角に14×9cmの膨隆を認め, CTにて左側腹部に腸管と腹膜脂肪組織の脱出認め,腰ヘルニアと診断.手術はヘルニア嚢を解放せず広背筋・腹斜筋群を寄せ,その上方をメッシュにて補強した.術後,現在まで再発を認めていない.
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